食物より始めて馬鍬、辛鋤(からすき)、鎌、鍬、斧、たつきなど云ふ物に至るまで、家の具を船に取り入れて(今昔物語)、
にある、
たつき、
は、
大きい刃の広い斧、
とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。因みに、「辛鋤」は、
牛にかけて耕すのに使う、
とあり(仝上)、「犂牛(りぎゅう)」で触れた、
唐鋤、
と当てる、
柄が曲がっていて刃が広く、日本ではウシ、ウマに引かせて耕す犂(すき)、
をいい、
牛鍬(うしぐわ)、
ともいい(精選版日本国語大辞典)、古墳時代後期に、中国から朝鮮半島を経て由来したものである。
たつき、
は、
鐇、
と当て、
たつぎ、
ともいう、
木を伐採するのに用いる刃はばの広い大きな手斧(おの)、
で(デジタル大辞泉)、
木材を竪に切るもの(横に切るを、ヨキという)、
とある(大言海)。
たつげ、
はびろ、
ともいう(大言海)。和名類聚抄(平安中期)に、
鐇、多都岐、廣刃斧也、
とある。
(斧 デジタル大辞泉より)
「よき」は、
木こりは恐ろしや、荒けき姿に鎌を持ち、斧(よき)を提げ(梁塵秘抄)、
と、
斧、
と当て、
小形のおの、
つまり、
小斧(こおの)、
(岩波古語辞典)とある。和名類聚抄(平安中期)に、
斧、與岐、
字鏡(平安後期頃)に、
鉿、鋌也、與支、
とある。「たつき」は、
立削(タツゲ)の転にて、竪に我が方へ削る意かと云ふ、
とあり(大言海)、「よき」は、
横切(よこきり)の約、鐇(タツギ)に対す、
とある(仝上)。
(鉞かつぎ熊に跨る金太郎(鳥居清長/清長) https://ch.kanagawa-museum.jp/dm/ukiyoe/kanagawa/meisyo/d_meisyo17.html)
「たつき」の画像は、あまり見当たらないが、童謡の、
まさかりかついだ金太郎、熊に跨りお馬の稽古、
の、
まさかり、
は、
はびろ、
とも呼ばれた(https://dic.pixiv.net/a/%E9%89%9E)とあり、ふるくは、
鐇(たつき)、
と呼び、兵器や刑具に用いられた(https://www.hand-made-home.com/daikudougu/pageindices/index44.html#page=45)、とある。なお、出土品から見たむ斧の分類は、https://www.hand-made-home.com/daikudougu/pageindices/index44.html#page=45に詳しい。それによると、
鉞型、
は、
肩を持つ刃幅広い斧で、伐採や木材を斫はつる場合などに用いる、
とあり、
与岐型、
は、
頭部より刃の方がやや幅広く、袋部の下から撫肩で広がっている。刃は蛤刃のように外に張り出した円弧を描いている。大型、中型、小型があり、伐木、薪割など、さまざまな用途に用いる万能的な斧、
とある。
なお、「方便」とあてる「たつき」については触れた。
「鐇」(漢音ハン、呉音ボン)は、
木を削る、
ちょうな、
の意とある(漢字源)。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95