此の法師の供なる二人の童は、識神(しきじん)の仕へて來たるなり(今昔物語)、
の、
識神(しきじん)、
は、
式神、
とも当て、
陰陽師の使う精霊のような神、
とあり、
しきがみ、
とも訓ませ(佐藤謙三校注『今昔物語集』)、
職神、
とも当て(広辞苑)、
式の神、
とも(岩波古語辞典)、
式鬼(しき)、
式鬼神、
ともいい(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%8F%E7%A5%9E)、
陰陽師の命令で自在に動く霊的存在のこと(占い用語集)、
陰陽道(おんようどう)で、陰陽師が使役するという鬼神(デジタル大辞泉)、
陰陽道(おんようどう)で、陰陽師の命令に従って、変幻自在、不思議なわざをなすという精霊(広辞苑)、
陰陽師(おんようじ)の命令に従って、呪詛(じゆそ)・妖術などの不思議な業をするという鬼神(大辞林)、
陰陽師(おんやうじ)の命令に従って不思議なわざを行うという鬼神(学研古語辞典)、
陰陽道で、陰陽師が使役するという鬼神(日本国語大辞典)、
陰陽師(おんやうじ)が術を用いて駆使する神(岩波古語辞典)、
陰陽道にて行ふ、呪詛の妖術(大言海)、
等々とあり、
神、
鬼神、
精霊、
と、分かれるが、いずれにしろ、陰陽師が、
和紙で出来た札、
に術をかけると、
自在に姿を変えた自在に姿を変える、
といい(占い用語集)、
人の善悪を監視する(デジタル大辞泉)、
人心から起こる悪行や善行を見定める役を務めるもの(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%8F%E7%A5%9E)、
とされ、
多くは童形、
ともある(学研古語辞典)が、
思業式神、
擬人式神、
悪行罰示式神、
の三種類の式神が言い伝えで残っている(https://www.famille-kazokusou.com/magazine/manner/180)とある。
思業式神、
は、思念によって陰陽師が作った式神を指し、
姿は自由に変化させられ、術者の力の具現化ともいえる式神で、投影する意識や実力次第でその力は大きく異なる、
とある(仝上・https://dic.pixiv.net/a/%E5%BC%8F%E7%A5%9E)。
擬人式神、
は、人型に切った和紙や藁人形などを依り代として術者が霊力を込めることで生み出す式神で、一般的にイメージされる式神はこれで、
これらの呪物に霊力や念を込めることで、術者の意図した能力や姿をして現れ、場合によっては悪霊・怨霊などによる呪いや祟りの身代わりとして用いられる、
こともある(仝上)。
悪行罰示(あくぎょうばっし)式神、
は、悪行を働いた過去のある式神をしいい、陰陽師によって倒され、従属した結果として式神になったもので、
最も強力な式神である一方、術者の能力が不足していると逆に取り込まれてしまう恐れもある危険な式神、
でもある(仝上)。安倍晴明が使役したとされる十二天(神)将はこの悪行罰示に該当するとされている(仝上)。
陰陽師・安倍晴明が使役したという、
十二神将(十二天将)、
は、六壬(りくじん)の、
青龍・朱雀・白虎・玄武・勾陳(こうちん)・六合(りくごう)・騰蛇(とうだ)・天后(てんこう)・貴人・大陰・大裳(たいじょう)・天空、
に由来(占い用語集)し、
悪行罰示、
とされている(仝上)。
十二天将は、
基本的に、6人の吉将と6人の凶将に分けられる、
のがの特徴で(https://www.famille-kazokusou.com/magazine/manner/180)、吉将は、
六合・貴人・青竜・天后・大陰・大裳、
凶将は、
騰虵 ・勾陳・朱雀・玄武・天空・白虎、
とあり(仝上)、中国の伝説に登場する神獣であることが多い(仝上)という。
十二神将、
は、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E4%BA%8C%E5%A4%A9%E5%B0%86に詳しい。
(「式神」(『不動利益縁起絵巻(部分)』) 祭壇を構えて2匹の式神(右下)を従えた陰陽師・安倍晴明(右中央)が、姿を現した物の怪ども(左上)と対峙しつつ病身身代わりの祈祷を行っている場面 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%8F%E7%A5%9Eより)
「六壬」は、
六壬神課(りくじんしんか)、
といい、約2000年前の中国で成立した占術で、
質問を受けた瞬間の時刻、
で(仝上)、
月将とよぶ太陽の黄道上の位置の指標と時刻の十二支から、天地盤と呼ぶ天文についての情報を取り出し、これと干支術を組み合わせて占う、
という(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AD%E5%A3%AC%E7%A5%9E%E8%AA%B2)。飛鳥時代には既に日本で受容されていたが、602年の百済僧観勒による招来が記録に残る最初の招来である(仝上)。安倍晴明は『占事略决』という六壬の解説書を子孫のために残したとされる(仝上)。
安倍晴明は式神を使うのに長けており、
屋敷内の雑用から掃除、儀式など様々なことをさせていました。しかし晴明公の奥様がその存在を怖がられたため、一条戻橋のたもとに式神を隠し、用がある時に呼び出していた、
とある(https://www.seimeijinja.jp/?p=8969)。このことは、「一条戻り橋」で触れたように、
戻橋(もどりばし)は一条通堀川の上にあり。安倍晴明十二神将をこの橋下に鎮め事を行なふ時は喚んでこれを使ふ。世の人、吉凶をこの橋にて占ふ時は神将かならず人に託して告ぐるとなん、
とある(都名所図会)。
なお、
陰陽師、
は、律令時代、
中国大陸から伝わった技術を基に、天文の観測、暦の作成、占いの一種である卜占(ぼくせん)などをおこなうために朝廷が作った、
陰陽寮、
に所属した官職の1つである(https://www.famille-kazokusou.com/magazine/manner/180)。
なお、陰陽道の十二天将と、仏教の、
十二神将、
は別で、十二神将は、
十二薬叉大将(じゅうにやくしゃだいしょう)、
十二神王、
ともいい、
天界にいる12人の武将、
を指し、
薬師如来および薬師経を信仰する者を守護する12の願いを基に、12の月や12の時間、12の方角を守護する十二尊の仏尊、
である(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E4%BA%8C%E7%A5%9E%E5%B0%86)。
なお、「式神」の「式」とは、
「用いる」意味であり、使役することをあらわす、
とあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%8F%E7%A5%9E)、
「方程式」「算式」などの「式」=即ち法則性、
であり、この「式」をよく理解したうえである一定の手順を踏むと一定の反応を示す神のこと、
とある(https://dic.pixiv.net/a/%E5%BC%8F%E7%A5%9E)。だから、所謂使い魔とは根本的に違い、扱い方さえ理解すれば本来は誰にでも使いこなせる(仝上)、と。
「式」(漢音ショク、呉音シキ)は、
会意兼形声。弋(ヨク)は、先端の割れた杙(くい)を描いた象形文字。この棒を工作や耕作・狩りなどに用いた。式は「工(仕事)+音符弋」で、道具でもって工作することを示す。のち道具の使い方や行事の仕方の意となる、
とある(漢字源)。
「手本」を意味する漢語、
ともあり(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%BC%8F)、
形声。工と、音符弋(ヨク→シヨク)とから成る。工作をする際の決まり、ひいて「のり」の意を表す、
とも(角川新字源)、
会意兼形声文字です(弋+工)。「枝のある木とそれを支える為の支柱(くい)」の象形と「工具(のみ・さしがね)」の象形から、「工具のように規則的で安定した支柱(くい)」を意味し、それが転じて(派生して・新しい意味が分かれ出て)、「手本とすべきもの・しき」を意味する「式」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji492.html)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95