構ふ

醫師もこれを聞きて泣きぬ。さて云ひやう、此の事を聞くに、實にあさまし、己構へむと云ひて(今昔物語)、 の、 構ふ、 は、 方法を考える、 と注記がある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。 構ふ、 については、 カム(噛)アフ(合)の約、かみあわせる意(岩波古語辞典)、 カは構くの語根、マフは、設け成す意(見まふ、為(しまふ)、立ちまふ)(大言海)…

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賓頭盧(びんづる)

それが賓頭盧(びんづる)こそ、いみじく験(げん)はおはしますなれとて(今昔物語)、 にある、 賓頭盧、 は、 十六羅漢の一つで、参詣すれば病をいやすといわれている、 とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。 賓頭盧、 は、 Piṇḍola-bharadvāja(ピンドーラ・バーラドヴァージャ)の音写、 で、 名がピンドーラ、姓をバーラ…

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あやにくだつ

これが腹立ちて解かぬをも、あやにくだつやうにて、ただ解きに解かせつ(今昔物語)、 さこそあやにくだちつれども、いとほしかりければ、装束を取りて急ぎ着て、馬に乗りて(仝上)、 とある、 あやにくだつ、 は、 いじわるくする、 意とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。「あやにくだつ」は、 生憎だつ、 と当て、 人をいらだたせ、困らせるような態度を…

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御許

隠れて見候つれば、内より御許(おもと)だちたる女出で来て、男の候つると語らひて(今昔物語)、 とある、 御許、 は、 宮廷の女房などを呼ぶときの敬称。相当の身分の女性の意味、 とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。 御許、 は、 みもと、 と訓ませると、 仏世尊の所(ミモト)(「地蔵十輪経元慶七年点(883)」)、 と、 …

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放免

鉾(ほこ)を取りたる放免(はうめん)の、蔵の戸の許に近く立ちたるを、蔵の戸のはざまより、盗人、此の放免を招き寄す(今昔物語)、 の、 放免、 は、 はうべん、 ともいい(「べん」は「免」の漢音)、 平安・鎌倉時代、検非違使庁の下で犯人捜査などに従事した下部(しもべ)、刑期終了後に放免された罪人をこれに使用した、 のでいう(岩波古語辞典)。 犯罪…

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矢庭

走りで逃げて去にけり。然れば、四人は矢庭に射殺したりけり。今一人は四五町ばかり逃げ去りて(今昔物語)、 とある、 矢庭、 は、 矢を射る場所。矢のとどく距離、近い所。時間では、即座に、ただちにの意となる。この場合は原義に近い使い方ではないか。「四五町ばかり」は、もはや矢庭ではない、 と注記がある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。 矢庭、 は、 矢…

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落蹲(らくそん)

髪をば後(うしろ)ざまに結ひて、烏帽子もせぬ者の、落蹲(らくそん)と云ふ麻衣のうにてあれば(今昔物語)、 の、 落蹲、 は、 高麗樂のひとつ、 で、 納蘇利(なそり)ともいう、 とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。「納蘇利」は、 納曾利、 とも当て、正確には、 《納曾利》通常為雙人舞、單人獨舞時又稱為《落蹲》、 とあり(ht…

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弦打ち

此れより蓼中(たでなか)の御門に行きて、忍びやかに弦打(つるう)ちをせよ(今昔物語)、 の、 弦打ち、 とは、 弓のつるを引いてならす、一つの合図。悪魔祓いにもした、 とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。 弦打ち、 は、 矢をつがえずに、張った弦を手で強く引き鳴らすこと、 をいい(岩波古語辞典・日本大百科全書)、 空弾弓弦(カラユ…

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半蔀(はじとみ)

半蔀(はじとみ)のありけるより、鼠鳴(ねずな)きを出して手をさし出でて招きければ、男寄りて(今昔物語)、 とある、 半蔀、 は、 上半分を外へ揚げるようにし、下ははめこみになった蔀、 をいい(広辞苑)、 こじとみ(小蔀)、 ともいう。「蔀(しとみ)」は、「妻戸」で触れたように、 柱の間に入れる建具の一つ、 で、 板の両面あるいは一面…

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さし縄

旅籠(はたご)に多く人のさし縄(なは)ども取り集めて結び継ぎて、それそれと下しつ。縄の尻もなく下したる程に(今昔物語)、 の、 さし縄、 は、 差縄、 指縄、 と当て、 さしづな(差綱)、 小口縄(こぐちなわ)、 ともいい、 馬をつなぐ縄、 とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。 乗馬の口につけて曳く縄、 とあり(大言海)…

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綾藺笠(あやゐがさ)

顔少し面長にて、色白くて、形つきづきしく、綾藺笠(あやゐがさ)をも着せながらあるに(今昔物語)、 の、 綾藺笠、 とは、 藺草(いぐさ)を綾の組織にならって編み、裏に絹をはった笠。中央に突出部がある。武士の狩装束で、遠行または流鏑馬やぶさめ用、 とあり(広辞苑・日本国語大辞典)、 あやがさ、 藺笠、 ともいう(仝上・大言海)。「狩衣」については「水…

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