ただ独り寺のもとに歩み出て、あななひどもを結びたる中に立ち廻りて見給ひける程に(今昔物語)、
の、
あななひ、
は、動詞、
あななふ、
の名詞形で、
麻柱、
と当て(大言海)、
支柱(すけ)の義、
とあり、
古、工人、支柱に縁(ふちど)りて、高きに登りしに起こると云ふ、麻柱は、庪柱の誤りならむかと云ふ説あり、即ち、枝柱、支柱なり、
とある(大言海)。
あぐら、
足代(アシシロ)、
足場、
閒架(カンカ 「間」は梁(はり)と梁の間、「架」は桁(けた)と桁の間、結構の意)、
ともいい(仝上・精選版日本国語大辞典)、特に、
高い所に上がるための足がかり、
とある(仝上)。天治字鏡(平安中期)に、
麻柱、阿奈奈比須、
和名類聚抄(平安中期)に、
麻柱、阿奈奈比、
とある。「支柱(すけ)」は、
島ツ鳥、鵜飼が徒(とも)、今須気(すけ)に來ね(古事記)、
と、
助ける、
意の、
助(すけ)、
の義で(仝上)、
家の、傾き倒れむとするを、助け支ふる柱、
の意で、
つっぱり、
かひぼう、
の意である(仝上)。動詞、
あななふ、
は、
扶、
翼、
と当て(仝上)、
まめなる男(をのこ)ども廿人ばかりつかはして、あななひにあげ据ゑられたり(竹取物語)、
と、
助けること。支えること、
の意である。
アは発語、ア擔(ニナ)ふの転にもあるべきか(あさにけに、あさなけに)、
とある(仝上)。
(「足」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%B6%B3より)
「足」(漢音ショク、呉音ソク、漢音シュ、呉音ス)は、
象形。ひざからあし先までを描いたもので、関節がぐっと縮んで弾力を生み出すあし、
とある(漢字源)。別に、
指事文字です(口+止)。「人の胴体」の象形と「立ち止まる足」の象形から、「あし(人や動物のあし)」を意味する「足」という漢字が成り立ちました。また、本体にそなえるの意味から、「たす(添える、増す)」の意味も表すようになりました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji14.html)。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95