2023年05月05日
かたぬぐ
されば皆紐解き袒(かたぬ)ぎて舞ひ戯(たはむ)るる間夜も漸くふけて皆人いたく酔ひにたり(今昔物語)、
の、
袒ぐ、
は、
肩脱ぐ、
とも当て、
上衣(ウハギ)をなかば脱いで、下衣(シタギ)の肩をあらわす、
意で、さらに転じて、
袒ぎて背(せなか)を見しむ(今昔物語)、
と、
はだ脱ぎになる、
意でも使う(岩波古語辞典)。
「袒」(漢音タン、呉音ダン・デン)は、
会意兼形声。旦は、地平線上に太陽が姿をあらわした形、袒は「衣+音符旦」で、着物がほぐれて、中が外にあらわれること。綻と同じく外にあらわれ出るの意を含む、
とある(漢字源)。
裼(漢音セキ・テイ、呉音シャク・タイ)、
と同義、
袒裼(タンセキ)、
で、
かたぬぎ、
の意である(仝上・大言海)。
江南律範、端嚴第一、衲衣袒肩、跣足行乞(李華文)、
と、
袒肩(タンケン)、
ともいい、
司射適堂西、袒決遂(儀礼)、
と、
古えの礼法の一つ、
で、
左の肩を脱ぐ、
意があり、
吉凶ともに行う(刑を受くるには右の肩をぬぐ)、
とあり、また、
罪を謝するために行うを、
肉袒(ニクタン)、
という(字源)とある。で、
肉袒、
には、
はだ脱ぎ、
の意もある(大言海・字源)。また、
太尉周勃入軍門、行令軍中、曰、為呂氏右袒、為劉氏左袒、軍中皆左袒(史記)、
の、
左袒(サタン)、
あるいは、
偏袒(ヘンタン 偏は一方のみを擁護する意)、
は、
肩はだぬいで、加勢する、
肩を持つ、
意である(漢字源・字源)。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95