浅黄の打衣(うちぎぬ)に青黑の打狩袴(うちかりばかま)を着て、練色の衣の綿厚からなる三つばかりを着て(今昔物語)、
の、
練色(ねりいろ)、
とは、
うすい黄色、
とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。
白みを帯びた薄い黄色(精選版日本国語大辞典)、
薄黄色を帯びた白色(岩波古語辞典)、
淡黄色(大言海)、
などともある。
平安時代から使われ、
漂白する前の練糸の色で、わずかに黄色みがかった白。練糸とは生糸きいとに含まれる硬タンパク質のセリシンを除去し、白い光沢と柔らかい手触りを出した絹糸のこと、
とあり(色名がわかる辞典)、
繭(まゆ)から取れた生糸(きいと)は空気に触れると酸化して、その表面が固くなります。昔はこれを手で練って除去し精錬していました。精錬された自然のままの絹糸の色のこと、
を、
練色、
という(http://www.tokyo-colors.com/dictionary/%E7%B7%B4%E8%89%B2/)とある。現代では絹以外の布地にも色名として用いられる(色名がわかる辞典)という。
(宍色 デジタル大辞泉より)
素人目には、
肌色、
と区別がつかないが、JISの色彩規格では、肌色は、
うすい黄赤、
とし、一般に、
平均的な日本人の皮膚の色を美化したイメージの色、
をさす(仝上)。7世紀ごろは、
宍(しし)色、
と呼ばれていた。英名は、
フレッシュ(flesh)、
または、
フレッシュピンク、
で白人の肌の色をイメージしている(仝上)。
(フレッシュ https://www.color-site.com/codes/FFE6CEより)
肌色、
よりは、
フレッシュ、
に近いのかもしれない。
(「練」 説文解字・漢 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%B7%B4より)
「練」(レン)は、
会意兼形声。柬(カン・レン)は「束(たばねる)+ハ印(わける)」の会意文字で、集めたものの中から、上質のものをよりわけることを示す。練は「糸+音符柬」で、生糸を柔らかくして、よりわけ、上質にすること、
とある(漢字源)。別に、
形声。糸と、音符柬(カン→レン)とから成る。灰汁(あく)で煮てやわらかにし、光沢を出した「ねりぎぬ」、ひいて「ねる」意を表す、
とも(角川新字源)、
会意兼形声文字です(糸+東(柬))。「より糸の象形」と「たばねた袋の象形とその袋に選別して入れた物の象形」(「たばねた袋からえらぶ」の意味)から生糸などから雑物を取り除き、良いものを「選び取る」、「ねる」を意味する「練」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji431.html)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95