2023年07月01日
陵ず
ただ貧しげなる牛飼童(うしかひわらは)の奴獨(ひと)りに身を任せて、かく陵ぜられては何の益(やく)のあるべきぞ(今昔物語)、
の、
陵ぜられて、
は、
悩まされて、
とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。
りょうず、
は、
凌ず、
陵ず、
と当て(広辞苑)、
掕ず、
とも当てる(学研全訳古語辞典)。
この君、人しもこそあれ、くちなはりょうじ給ひて(大鏡)、
恐ろしげなる鬼どもの、我身をとりどりに打ちりょうじつるに(宇治拾遺物語)、
などと、
ひどい目にあわせる、
いじめる、
乱暴する、
拷問する、
という意(広辞苑・日本国語大辞典)や、
責めさいなむ、
とか(大辞泉)、
せっかんする、
といった意(学研全訳古語辞典)で使う。
この語の仮名づかいは、
れうず、
と書かれることも多いが、
虐げるの意の「凌」をサ変化した語と考えられる、
とあり(仝上)、
りょうず、
と表記されることが多い。
会意兼形声。「陵」(リョウ)は、夌(リュウ)は「陸の略体+夂(あし)」の会意文字で、足の筋肉にすじめを入れるほど力んで丘を登ること。陵はそれを音符とし、阜(おか)を加えた字で、山の背のすじめ、つまり稜線のこと、
とある(漢字源)。「丘陵」の、「おか」とか、「陵墓」「御陵」「みささぎ」の意だが、「陵駕(リョウガ)」「陵辱」など「うちひしぐ」「しのぐ」「あなどる」などの意もある(仝上)。別に、
会意形声。「阜」+音符「夌」、「夌」は「坴(盛り土)」の略体+「夂(あし)」で力を入れて山に登ることであり、「陵」はそのような地形、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%99%B5)、
会意形声。阜と、(リヨウ)(しのぐ)とから成る。大きなおかの意を表す、
とも(角川新字源)、
会意兼形声文字です(阝+夌)。「段のついた土山」の象形(「丘」の意味)と「片足を上げた人の象形と下向きの足の象形」(「足をあげて高い地を越える」の意味)から、「越えていかなければいかない丘」を意味する「陵」という漢字が成り立ちました
ともある(https://okjiten.jp/kanji1487.html)。
「凌」(リョウ)は、
会意兼形声。夌(リュウ)は「陸(おか)+夂(あし)」の会意文字で、力をこめて丘の稜線をこえること。力むの力と同系で、その語尾が伸びた語。筋骨を筋ばらせてがんばる意を含む。凌はそれを音符として、冫(こおり)を加えた字。氷の筋目の意、
とある(漢字源)。「凌辱」「凌駕」と、しのぐ、力を込めて無理に相手の上に出る、ちからずくでもおかすという意や、こえる意(陵と同義)がある。別に、
会意兼形声文字です(冫+夌)。「氷の結晶」の象形(「凍る、寒い」の意味)と「片足を上げた人の象形と下向きの足の象形」(「高い地をこえる、丘に登る」の意味)から「(氷が丘のように盛り上がって)凍る」、「氷」、「しのぐ」を意味する「凌」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji2324.html)。
「掕」(リョウ)は、あまり辞書に載らず、
止める、
動けなくする、
馬を止める、
意とのみある(https://kanji.jitenon.jp/kanjiw/11391.html)。
参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95