己いひつるやうに、今日より我が許に來らば、此の御社の御矢目負ひなむものぞ(今昔物語)、
の、
矢目負ひなむもの、
は、
神の罰として矢を受けるだろう、
の意で、
矢目、
は、
矢のささった所、
の意(佐藤謙三校注『今昔物語集』)とある。
鎧(よろひ)に立ったるやめを数へたりければ(平家物語)、
と、
矢の当たった所、
の意から、
矢を受けた跡、
の意、さらに、
矢疵(きず)、
の意でも使い(広辞苑)。その派生から、
水際を五寸ばかり下て、やめ近にひゃうど射るならば、のみを以て割る様にこそあらんずらめ(義経記)、
と、
矢を射る時の目標、
の意ともなる(広辞苑)。
「め」で触れたように、
め(目・眼)の語源は、
見(ミ)と通ず。或いは云ふ、見(ミエ)の約、
とあり(大言海)、
器官としての「目」は、「見る」という動作から来ていると思える。ただ、「憂き目」「酷い目」「嬉しい目」という用例の、
め(眼・目)、
が、
見えの約。先ず目に見て心に受くれば云ふ、
のに対し、その意味の外延を拡げた、「賽の目」「木の目」「網の目」「鋸の目」という用例の、
め(目)、
は、
「間(ま)の転」
と、両者の出自を区別している(仝上)。
矢目、
の、
め、
は、明らかに後者に当たる。
一二あるのみにはあらず五六三四さへありけり双六の采(万葉集)、
の、
め、
も、
小さい点、
の意で、後者の意味の派生に連なると見える。
「矢」(シ)は、「征矢」で触れたように、
象形。やじりのついたやの形にかたどり、武器の「や」の意を表す、
とある(角川新字源)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:矢目