2023年07月21日

鳥瑟(うしつ)


毗沙利(びしゃり)國の観音は、今は鳥瑟(うしつ)も見えじかし、入りぬらん、聖徳太子の九輪(くりん)は、光も變(かは)らで今ひをつあり(梁塵秘抄)、

の、

鳥瑟、

は、

烏瑟膩沙(うしちにしゃ)、

の略で、

梵語uṣṇīṣa、

の音訳、

うしち、
うしつ、
うすつ、
うしつにしゃ、
うちにしゃ、

ともいい、

仏頂、

とも訳し(精選版日本国語大辞典)、

肉髻(にくけい)、

つまり、

仏の三十二相の一つ。仏の頭頂にある、髻(もとどり)のように突起した肉塊、

をいい、

釈尊の三十二相(三十二相八十種好)の特徴の一つで、一般の如来形にも超人的なものの象徴として表わされる、

とある(仝上)。「三十二相」て触れたように、

肉髻(にくけい)、

は、

三十二相の三十一番目、

頂髻相(ちょうけいそう) 頭の頂の肉が隆起して髻(もとどり)の形を成している、

とある。

肉髻.bmp

(肉髻 精選版日本国語大辞典より)

肉髻(にくけい)の中にあって、誰も見ることのできない頂点、

を、

無見頂相(むけんちょうそう)、

といい、

仏の八十随形好(ずいぎょうごう)の一つ。

とされる(広辞苑)。

烏瑟膩沙(うしちにしゃ)、

は、翻譯名義集(南宋代の梵漢辞典)に、

烏瑟膩沙、此云佛頂、頂骨湧起、自然成髻、故名肉髻、

とある。

三十二相」でふれたように、

如来変化之身、具此三十二相、以表法身衆徳圓極、人天中尊、衆聖之王也(「大蔵法數(だいぞうほっす)」)、

と、

仏がそなえているという32のすぐれた姿・形、

すなわち、

手過膝(手が膝より長い)、
身金色
眉間白豪(はくごう)
頂髻(ちょうけい)相(頭頂に隆起がある)

という意味であるが、転じて、

三十二相足らひたる、いつきしき姫にてありける(御伽草子「文正草子」)、

と、

女性の容貌・風姿の一切の美相、

の意味になる(広辞苑)。

仏像.jpg

(仏像 広辞苑より)

釈迦如来の身体に具したる、異常なる表象(しるし)

は、

三十二大人(だいにん)相、
三十二大丈夫(だいじょうふ)相、
三十二大士(だいじ)相、
大人相、
四八(しはち)相、

等々ともいう(日本大百科全書)。また、

三十二相八十随形好(ずいぎょうこう)

あるいは、

三十二相八十種好(はちじっしゅごう)、

あるいは、

八十随形好(はちじゅうずいぎょうこう)、

とも言い、仏の身体に備わっている特徴として、

見てすぐに分かる三十二相と、微細な特徴である八十種好を併せたもの、

で、両者をあわせて、

相好(そうごう)

という(仝上)。

三十二相の一で、眉間の白毫(白い毛)は右旋して光明を発するという。「白毫」については触れた。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:14| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする