2023年07月26日

如来


十万佛神集まりて、寶塔扉(とぼそ)を押し開き、如来滅後の末の世に、法華を説きおき給ひしぞ(梁塵秘抄)、

の、

如来、

は、

梵語tathāgata(多陀阿伽陀)、

の訳、

かくの如く行ける人、

すなわち、

修行を完成し、悟りを開いた人、

の意。のちに、

かくの如く来れる人、

すなわち、

真理の世界から衆生(しゅじょう)救済のために迷界に来た人、

と解し、

如来、

と訳す(広辞苑)。

梵語 Tathāgata、

の語構成を、

tathā(「如」と訳され、真理・ありのままを表す)



āgata(「来る」の意のアーガムāgamの過去完了「来た」)

の合成と解して、

如来、

と訳されたが、

Tathā



gata(「行く」の意のガムgamの過去完了「去った」)、

の合成とも解され、その際には、

如去(にょきょ)、

の訳となる(チベット訳はこのほうをとっている)ということのようである(日本大百科全書・精選版日本国語大辞典)。で、

如去(にょこ)、

ともいう、

仏の尊称、

である、

仏十号(ぶつじゅうごう)、

の一つである(仝上)。釈迦には、仏陀であることを意味する、

阿羅漢、
辟支仏、
如来、

等正覚などいくつもの尊称があるが、そのうちとくに、

十号(じゅうごう、 epithets for the Buddha)、

という、10の名号がよく知られている、つまり、

如来 tathāgata 真実に達した者、人格完成者、
応供(おうぐ) arhat 尊敬を受けるに値する者、阿羅漢。
正遍知(しょうへんち) samyaksambuddha 正しく悟った者、
明行足(みょうぎょうそく) vidyācaraṇasaṃpanna 知恵と行いの完成者、
善逝(ぜんぜい) sugata よく到達した者、しあわせな人、
世間解(せけんげ) lokavid 世間を知る者、
無上士(むじょうし) anuttara このうえなき者、
調御丈夫(じょうごじょうぶ) puruṣadamyasārathi 教化すべき人を教化する御者、
天人師(てんにんし) śāstā devamanuṣyānāṃ 天や人に対する教師、
仏世尊(ぶつせそん) buddho bhagavān 真理を悟った者、尊き人、

で、「仏世尊」を「仏」と「世尊」に分ければ十一号となる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E5%8F%B7・ブリタニカ国際大百科事典)。

真如(真理)から来て衆生(しゅじょう)を導く、

意の「如来」は、

修行完成者、

の意で一般諸宗教を通じての呼称であったが、後に、

仏陀、

の呼称となり、更に大乗仏教では、

薬師如来、
大日如来、
阿弥陀如来、

のように諸仏の称ともなった(仝上)。

仏陀(ぶっだ)、

は、梵語、

ブッダBuddha、

の音写。

Buddha、

は、

budh(目覚める)を語源とし、

目覚めた人、
覚者、

すなわち

真理、本質、実相を悟った人、

を表し、もとは普通名詞であり、インドでは諸宗教を通じて使われたことばだが、ゴータマ・シッダールタはその一人で、それが仏教を創始した、

釈迦(しゃか)、

である。釈尊ゴータマもみずから悟ったので仏陀といいのちゴータマ・ブッダとなり、ゴータマの教えの最重要点が悟りであったこともあり、特に彼が仏陀の名を専有できたのであろう(ブリタニカ国際大百科事典)とある。

だから、当初は、

教祖の人格、

を表わすものであったが、入滅後は法としての精神が語り継がれ、彼の神格化が行われた。またのちには慈悲の面が特に強調されたこともあり、特に、

釈迦如来、

をさすことが多い(日本大百科全書・精選版日本国語大辞典・ブリタニカ国際大百科事典)。

なお、中国では、

浮図(ふと)、

などと音写し、それが日本に「ふと」として伝わり、これに「け」を加えて、やがて、

ほとけ、

となった(仝上)とある。

仏、

は、

仏陀の略、

ではなく、伝来の過程でBuddhaがBudとなったものらしい。唐以降は仏陀の音写が広まったとある(仝上)。

ブッダ像.jpg

(ブッダ像(サールナート考古博物館) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%88%E8%BF%A6より)

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:31| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする