2023年08月09日

舎利


淡路はあな尊(たうと)、北には播磨の書冩をまもらへて、西には文殊師利、南え南海補陀落(ふだらく)の山(せん)に向ひたり、東(ひんがし)は難波の天王寺に、舎利(さり)まだおはします(梁塵秘抄)、

の、

舎利、

は、

しゃり、

とも訓み、

サンスクリット語シャリーラśarīra、

の音訳、原義は、

身体、

のことであるが、転じて、

遺骨、

とくに、

仏陀(ぶっだ 釈迦)の遺骨、

をさし、

仏舎利、
仏骨、

という(精選版日本国語大辞典・日本大百科全書)。骨崇拝は先史時代よりあったが、仏教で舎利崇拝がおこったのは、

仏陀がクシナガラで入滅し、その遺体が火葬に付され、遺骨と灰が仏陀ゆかりの八つの土地に分納され、塔が建立され供養されて以来のこと、

とされる(仝上)。アショカ王は、上記八つの仏塔のうち七つを開けて舎利を分け、インド各地に多数の仏塔を建てたと伝わる(仝上)。わが国でも舎利供養のための法会(ほうえ)が行われた(日本書紀)が、1898年(明治31)ネパールにおいて、仏陀の遺骨とみられるものが発掘されて仏教諸国に分与され、日本では名古屋市覚王山の日泰(にったい)寺に安置奉祀(ほうし)されている(仝上)とある。舎利を安置する塔を、

舎利塔、

舎利を納めておく堂宇を、

舎利殿、

という(仝上)。法華経に、

佛滅度後、供養舎利、

翻譯名義集(南宋代の梵漢辞典)に、

佛舎利、椎撃不破、弟子舎利、椎試即砕也、

とある。

佛舎利を衛りて百国の王帰国する図 (2).jpg

(佛舎利を衛りて百国の王帰国する図(葛飾北斎『釈迦御一代記図会』) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8F%E8%88%8E%E5%88%A9より)

和名類聚抄(平安中期)に、

舎利、法華経云、以佛舎利、起七宝塔、

類聚名義抄(11~12世紀)に、

御所遺骨分、通名舎利、

とある。

なお、

舎利、

は、

米粒、

また、

白飯、

を指して用いたりするのは、

仏舎利が米粒に似ていること、

によっており、近世から例が見え始める。ただし、仏舎利と米粒とを結び付ける例は中国唐代に既に見られ、日本でも空海撰「秘蔵記」に、

天竺呼米粒為舎利。仏舎利亦似米粒。是故曰舎利、

とあるが、これらは、梵語の、

米śāli、

と、

身体śarīra、

との混同に依るらしい(精選版日本国語大辞典)とある。

「舎」 漢字.gif

(「舎」 https://kakijun.jp/page/0812200.htmlより)

内舎人」で触れたように、「舎(舎)」(シャ)は、

会意兼形声。余の原字は、土を伸ばすスコップのさま。舎は「口(ある場所)+音符余」で、手足を伸ばす場所。つまり、休み所や宿舎のこと、

とある(漢字源)。別に、

形声。音符「余 /*LA/」+羨符「口」(他の字と区別するための記号)、

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%88%8D

象形。口(垣根の形)と、(建物の形)と、亼(しゆう)(集の古字)とから成り、「やどる」、ひいて「おく」意を表す、

とも(角川新字源)、

会意兼形声文字です(余+口)。「先の鋭い除草具」の象形(「自由に伸びる」の意味)と「ある場所を示す文字」から、心身をのびやかにして、「泊まる(やどる)」、「建物」、「ゆるす」を意味する「舎」という漢字が成り立ちました、

ともありhttps://okjiten.jp/kanji841.html、微妙に解釈が異なる。

「利」 漢字.gif

(「利」 https://kakijun.jp/page/0732200.htmlより)


「利」 甲骨文字・殷.png

(「利」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%88%A9より)

「利」(リ)は、

会意文字。「禾(いね)+刀」。稲束を鋭い刃物でさっと切ることを示す。一説に、畑をすいて水はけや通風をよくすることをあらわし、刀はここではすきを示す。すらりと通り、支障がない意を含む。転じて、刃がすらりと通る(よく切れる)、事が都合よく運ぶ意となる、

とある(漢字源)。

会意。「禾 (穀物)」+「刀」で、穀物を鋭い刃物で収穫するさまを象る。「するどい」を意味する漢語{利 /*rits/}および「もうけ」を意味する漢語{利 /*rits/}を表す字https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%88%A9

は、前者、

会意。刀と、禾(か いね)とから成り、すきで田畑を耕作する意を表す。「犂(リ すき)」の原字。ひいて、収益のあること、また、すきのするどいことから「するどい」意に用いる(角川新字源)、

会意文字です(禾+刂(刀))。「穂先がたれかかる稲」の象形と「鋭い刃物」の象形から、稲を栽培し、鋭い刃物(すき)で土を耕す事を意味し、それが転じて(派生して・新しい意味が分かれ出て)、「するどい」・農耕に「役立つ」を意味する「利」という漢字が成り立ちましたhttps://okjiten.jp/kanji592.html

は後者の説を採っている。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:舎利 仏舎利 仏骨
posted by Toshi at 03:34| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする