大峯(おほみね)通るには、佛法修行する僧ゐたり、唯一人、若や子守は頭(かうべ)を撫でたまひ、八大童子は身を護る(梁塵秘抄)、
の、
八大童子、
は、
不動八大童子(ふどうはちだいどうじ)、
八大金剛童子(はちだいこんごうどうじ)、
とも呼ばれ、
不動明王に随従する8種の尊像を童子形に造形化したもの、
をいい、
不動明王の種字「唅(かん=hāṃ)」字より発生し、四智(金剛智、灌頂智、蓮華智、羯磨智)と四波羅蜜(金剛波羅蜜、宝波羅蜜、法波羅蜜、業波羅蜜)を具現化した八尊、
ともある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E5%A4%A7%E7%AB%A5%E5%AD%90)。「種子(しゅじ)」、は、密教において、、
仏尊を象徴する一音節の呪文(真言)、
で、「加持」で触れたように、普通には、
長句のものを陀羅尼、
数句からなる短いものを真言(しんごん)、
一字二字などのものを種子(しゅじ)
と区別する(日本大百科全書)。
密教では、「八大童子」を、
慧光(えこう)童子、
慧喜(えき)童子、
阿耨達(あくた・あのくた)童子、
持徳(指徳)(しとく)童子、
烏俱婆伽(うぐばか)童子、
清浄比丘(しようじようびく)、
矜羯羅(こんがら)童子、
制吒迦(せいたか)童子、
のを八人の童子いう(精選版日本国語大辞典)が、修験道では、
除魔・後世・慈悲・悪除・剣光・香精・検増・虚空、
の八童子をいう(仝上)とある。中国で撰述された偽経、
聖無動尊一字出生八大童子秘要法品、
に記された諸尊である(世界大百科事典)とある。このうち
矜羯羅(Kiṃkara 随順・奴隷と漢訳)、
制吒迦(Ceṭaka 福聚勝者と漢訳)、
の2童子が、
不動明王の両脇侍、
とされることが多い(世界大百科事典)とあり、
不動明王二童子像、
または、
不動三尊像、
と言い、三尊形式の場合、不動明王の右(向かって左)に、
制吒迦童子、
左(向かって右)に、
矜羯羅童子を配置し(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E6%98%8E%E7%8E%8B)、
矜羯羅童子、
は童顔で、合掌して一心に不動明王を見上げる姿に表されるものが多く、
制吒迦童子、
は対照的に、金剛杵(こんごうしょ)と金剛棒(いずれも武器)を手にしていたずら小僧のように表現されたものが多い(仝上)とある。
(不動明王(国宝・醍醐寺蔵) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E6%98%8E%E7%8E%8Bより)
「脇士」には、不動明王には制多迦・衿迦羅の二童子が配されるが、薬師如来では、
日光・月光二菩薩、
あるいは
薬王・薬上菩薩、
が脇侍とされ、
般若菩薩には、
梵天・帝釈の二天、
が配される。釈迦像に脇侍を付す例は、すでに、インドの、
マトゥラーの石彫像以来認められる、
という(世界大百科事典)。
(不動明王 精選版日本国語大辞典より)
不動明王、
は、ヒンドゥー教のシバ神の異名で、
アチャラナータAcalanāta、
といい、漢音で、
阿遮羅嚢他(あしゃらのうた)、
とあてる。アチャラは、
動かない、
ナータは、
守護者、
を意味し、
揺るぎなき守護者、
の意味となる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E6%98%8E%E7%8E%8B)。大日如来(だいにちにょらい)の命を受けて、
忿怒(ふんぬ)相に化身(けしん)したとされる像、
で、その姿は、
不動、如来使、持慧力羂索、頂髻垂左肩、一目而諦観、威忿怒身猛炎、安住在盤石、面門水波相、充満童子形(大日経)、
不動明王、如来使者、作童子形、右持大慧刀印、左持羂索、頂有莎髻、屈髪垂在左肩、細閉左目、以下歯噛右邊上脣、其左邊下脣稍翻外出、額有皺紋、猶如水波相、坐於石上、其身卑而充満肥盛、作奮怒之勢、極忿之形、是其密印幖幟相也(仝上)、
と、
片目あるいは両目を見開き、牙を出し、下の歯で上唇を噛む忿怒相を示し、頭の頂には七髻(けい)があり、左肩には弁髪の一端を垂らし、左手に羂索(けんさく)、右手に利剣をとり、大火炎を背負って大磐石座の上に坐す、
形である(ブリタニカ国際大百科事典)。なお、「羂索(けんさく・けんじゃく)」については「弁才天」で触れたように、仏菩薩の、衆生を救い取る働きを象徴するもので、色糸を撚り合わせた索の一端に鐶、他の一端に独鈷(どっこ)の半形をつけたものである。
不動明王は、密教では、
行者に給仕して菩提(ぼだい)心をおこさせ悪を降し、衆生(しゅじょう)を守る、
とされ(日本大百科全書)、
五大明王、
八大明王、
では中央に位置する主尊となる(仝上)。
五大明王(ごだいみょうおう)、
は、
密教特有の尊格である明王のうち、中心的役割を担う5名の明王を組み合わせたものである。本来は別個の尊格として起こった明王たちが、中心となる不動明王を元にして配置されたものである、
とあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%A4%A7%E6%98%8E%E7%8E%8B)、
不動明王を中央として、東西南北におのおの降三世(ごうざんぜ)・軍荼利(ぐんだり)・大威徳(だいいとく)・金剛夜叉(こんごうやしゃ)の四大明王を配置した一組一体からなる明王部の尊形、
である(日本大百科全書)。
五大尊、
ともいい、いずれも忿怒の形相を表わすので、
五忿怒、
ともいう(仝上・精選版日本国語大辞典)。
(五大明王 中央は大日大聖不動明王、右下から時計回りに降三世夜叉明王、軍荼利夜叉明王、大威徳夜叉明王、金剛夜叉明王 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%A4%A7%E6%98%8E%E7%8E%8Bより)
八大明王(はちだいみょうおう)、
は、八方守護をつかさどる、
八体の明王、
で、
八大菩薩の変現したもの、
をいい、
降三世(金剛手菩薩)・大威徳(妙吉祥菩薩)・大笑(虚空蔵菩薩)・大輪(慈氏菩薩)・馬頭(観自在菩薩)・無能勝(地蔵菩薩)・不動(除蓋障菩薩)・歩擲(ぶちゃく 普賢菩薩)、
の明王となる(仝上 五大明王、八大明王についてはhttp://butuzou.jpn.org/b-world/buddha/html/bmyoou.htmlに詳しい)。
不動明王、
は、
密教の根本尊である、
大日如来の化身、
と見なされ、
お不動さん、
の名で親しまれ、
大日大聖不動明王(だいにちだいしょうふどうみょうおう)、
無動明王、
無動尊、
不動尊、
などとも呼ばれる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E6%98%8E%E7%8E%8B)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95