2023年08月11日

八大童子


大峯(おほみね)通るには、佛法修行する僧ゐたり、唯一人、若や子守は頭(かうべ)を撫でたまひ、八大童子は身を護る(梁塵秘抄)、

の、

八大童子、

は、

不動八大童子(ふどうはちだいどうじ)、
八大金剛童子(はちだいこんごうどうじ)、

とも呼ばれ、

不動明王に随従する8種の尊像を童子形に造形化したもの、

をいい、

不動明王の種字「唅(かん=hāṃ)」字より発生し、四智(金剛智、灌頂智、蓮華智、羯磨智)と四波羅蜜(金剛波羅蜜、宝波羅蜜、法波羅蜜、業波羅蜜)を具現化した八尊、

ともあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E5%A4%A7%E7%AB%A5%E5%AD%90。「種子(しゅじ)」、は、密教において、、

仏尊を象徴する一音節の呪文(真言)、

で、「加持」で触れたように、普通には、

長句のものを陀羅尼、
数句からなる短いものを真言(しんごん)、
一字二字などのものを種子(しゅじ)

と区別する(日本大百科全書)。

密教では、「八大童子」を、

慧光(えこう)童子、
慧喜(えき)童子、
阿耨達(あくた・あのくた)童子、
持徳(指徳)(しとく)童子、
烏俱婆伽(うぐばか)童子、
清浄比丘(しようじようびく)、
矜羯羅(こんがら)童子、
制吒迦(せいたか)童子、

のを八人の童子いう(精選版日本国語大辞典)が、修験道では、

除魔・後世・慈悲・悪除・剣光・香精・検増・虚空、

の八童子をいう(仝上)とある。中国で撰述された偽経、

聖無動尊一字出生八大童子秘要法品、

に記された諸尊である(世界大百科事典)とある。このうち

矜羯羅(Kiṃkara 随順・奴隷と漢訳)、
制吒迦(Ceṭaka 福聚勝者と漢訳)、

の2童子が、

不動明王の両脇侍、

とされることが多い(世界大百科事典)とあり、

不動明王二童子像、

または、

不動三尊像、

と言い、三尊形式の場合、不動明王の右(向かって左)に、

制吒迦童子、

左(向かって右)に、

矜羯羅童子を配置しhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E6%98%8E%E7%8E%8B

矜羯羅童子、

は童顔で、合掌して一心に不動明王を見上げる姿に表されるものが多く、

制吒迦童子、

は対照的に、金剛杵(こんごうしょ)と金剛棒(いずれも武器)を手にしていたずら小僧のように表現されたものが多い(仝上)とある。

不動明王.jpg

(不動明王(国宝・醍醐寺蔵) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E6%98%8E%E7%8E%8Bより)

脇士」には、不動明王には制多迦・衿迦羅の二童子が配されるが、薬師如来では、

日光・月光二菩薩、

あるいは

薬王・薬上菩薩、

が脇侍とされ、

般若菩薩には、

梵天・帝釈の二天、

が配される。釈迦像に脇侍を付す例は、すでに、インドの、

マトゥラーの石彫像以来認められる、

という(世界大百科事典)。

不動明王②.bmp

(不動明王 精選版日本国語大辞典より)

不動明王、

は、ヒンドゥー教のシバ神の異名で、

アチャラナータAcalanāta、

といい、漢音で、

阿遮羅嚢他(あしゃらのうた)、

とあてる。アチャラは、

動かない、

ナータは、

守護者、

を意味し、

揺るぎなき守護者、

の意味となるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E6%98%8E%E7%8E%8B。大日如来(だいにちにょらい)の命を受けて、

忿怒(ふんぬ)相に化身(けしん)したとされる像、

で、その姿は、

不動、如来使、持慧力羂索、頂髻垂左肩、一目而諦観、威忿怒身猛炎、安住在盤石、面門水波相、充満童子形(大日経)、

不動明王、如来使者、作童子形、右持大慧刀印、左持羂索、頂有莎髻、屈髪垂在左肩、細閉左目、以下歯噛右邊上脣、其左邊下脣稍翻外出、額有皺紋、猶如水波相、坐於石上、其身卑而充満肥盛、作奮怒之勢、極忿之形、是其密印幖幟相也(仝上)、

と、

片目あるいは両目を見開き、牙を出し、下の歯で上唇を噛む忿怒相を示し、頭の頂には七髻(けい)があり、左肩には弁髪の一端を垂らし、左手に羂索(けんさく)、右手に利剣をとり、大火炎を背負って大磐石座の上に坐す、

形である(ブリタニカ国際大百科事典)。なお、「羂索(けんさく・けんじゃく)」については「弁才天」で触れたように、仏菩薩の、衆生を救い取る働きを象徴するもので、色糸を撚り合わせた索の一端に鐶、他の一端に独鈷(どっこ)の半形をつけたものである。

不動明王は、密教では、

行者に給仕して菩提(ぼだい)心をおこさせ悪を降し、衆生(しゅじょう)を守る、

とされ(日本大百科全書)、

五大明王、
八大明王、

では中央に位置する主尊となる(仝上)。

五大明王(ごだいみょうおう)、

は、

密教特有の尊格である明王のうち、中心的役割を担う5名の明王を組み合わせたものである。本来は別個の尊格として起こった明王たちが、中心となる不動明王を元にして配置されたものである、

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%A4%A7%E6%98%8E%E7%8E%8B

不動明王を中央として、東西南北におのおの降三世(ごうざんぜ)・軍荼利(ぐんだり)・大威徳(だいいとく)・金剛夜叉(こんごうやしゃ)の四大明王を配置した一組一体からなる明王部の尊形、

である(日本大百科全書)。

五大尊、

ともいい、いずれも忿怒の形相を表わすので、

五忿怒、

ともいう(仝上・精選版日本国語大辞典)。

五大明王.jpg

(五大明王 中央は大日大聖不動明王、右下から時計回りに降三世夜叉明王、軍荼利夜叉明王、大威徳夜叉明王、金剛夜叉明王 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%A4%A7%E6%98%8E%E7%8E%8Bより)

八大明王(はちだいみょうおう)、

は、八方守護をつかさどる、

八体の明王、

で、

八大菩薩の変現したもの、

をいい、

降三世(金剛手菩薩)・大威徳(妙吉祥菩薩)・大笑(虚空蔵菩薩)・大輪(慈氏菩薩)・馬頭(観自在菩薩)・無能勝(地蔵菩薩)・不動(除蓋障菩薩)・歩擲(ぶちゃく 普賢菩薩)、

の明王となる(仝上 五大明王、八大明王についてはhttp://butuzou.jpn.org/b-world/buddha/html/bmyoou.htmlに詳しい)。

不動明王、

は、

密教の根本尊である、

大日如来の化身、

と見なされ、

お不動さん、

の名で親しまれ、

大日大聖不動明王(だいにちだいしょうふどうみょうおう)、
無動明王、
無動尊、
不動尊、

などとも呼ばれるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E6%98%8E%E7%8E%8B

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:46| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする