おらが一茶句集

小林 一茶(玉城司訳注)『一茶句集』を読む。 一茶の発句総数、 約二万、 と言われている。その中から、 千句、 を選んだ編者は、 「紀行や日記類に書き残された夥しい一茶句も、実に面白い。等類・類 想・同意・同巣の句が多いが、それもまた楽しい。そこで、恣意的な選択だと非難されても致し方ないと腹をくくって千句にしぼった。」 という(解説)。で、 …

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若王子(にゃくおうじ)

熊野へ参らむと思へども、徒歩(かち)より参れば道遠し、すぐれて山きびし、馬(むま)にて参れば苦(く)行にならず、空より参らむ羽(はね)たべ若王子(梁塵秘抄)、 の、 若王子(にゃくおうじ)、 は、 熊野の十二所権現の一つ。十一面観音の垂迹(すいじゃく)といわれる、 とある(日本国語大辞典)。『長秋記』長承三年(1134)の記事で、 若宮(わかみや)、 …

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常楽我浄

近江の湖(みずうみ)は海ならず、天台薬師の池ぞかし、何ぞの海、常楽我浄の風吹けば、七宝蓮華の波ぞ立つ(梁塵秘抄)、 常楽我浄(じょうらくがじょう)、 は、大乗仏教において、 涅槃(ねはん)や如来に備わる四つの徳、 をいい(涅槃経)、すなわち、 永遠であり(常)、安楽であり(楽)、絶対であり(我)、清浄である(浄)こと、 を言う(広辞苑)。 四徳(しと…

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山王十禪師

神の家の小公達(こきんだち)は、八幡(やわた)の若宮熊野の若王子子守御前(こもりおまえ)、比叡(ひえ)には山王十禅師、賀茂には片岡貴船の大明神(梁塵秘抄)、 の、 山王十禅師(じゅうぜんじ)、 は、 日吉山王(ひえさんのう)七社権現の一つ、 であり、 国常立尊(くにとこたちのみこと)を権現と見ていう称、 とあり、 瓊々杵尊(ににぎのみこと)から…

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来迎引接(らいごういんじょう)

彌陀の誓(ちかひ)ぞ頼もしき、十惡五逆の人なれど、一たび御名(みな)を唱ふれば、来迎引接(らいがういむぜう)疑はず(梁塵秘抄)、 の、 来迎引接(らいごういんじょう)、 は、 引接(摂)、 迎接(ごうしょう)、 ともいい(精選版日本国語大辞典)、四字熟語にもなっていて、 南無阿弥陀仏を唱えている人が死ぬときには、阿弥陀仏が菩薩を引き連れて迎えに来て、極楽…

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摩訶迦葉

三会の暁を待つ人は、所を占めてぞおはします、雞足山(けいそくさん)には摩訶迦葉(まかかせう)や、高野の山には大師とか(梁塵秘抄)、 の、 雞足山、 は、梵語、 Kukkuṭapādagiri、 の訳、 鶏足山(けいそくざん、グルパ・ギリ)、 とも当て、 ククタパダ山、 狼跡山、 尊足山、 ともいい、 古代インドのマガダ国の山。伽…

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三身仏性

仏も昔は人なりき、我等も終(つゐ)には仏なり、三身仏性具せる身と、知らざりけるこそあはれなれ(梁塵秘抄)、 の、 三身仏性(さんじんぶっしょう)、 の、 三身(さんしん・さんじん)、 は、色葉字類抄(平安末期)に、 三身、法身、報身、応身、 とあり、大乗仏教で、 真如そのものである法身(ホツシン)、 修行をして成仏した報身(ホウジン)、 人…

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閻浮(えんぶ)

夜ふけて長夜に至る程、洲鶴(しうかく)眠(ねぶ)りて春の水、娑婆の故(ふる)き郷(さと)に同じ、塞鴻(さいこう)なきては秋の風、閻浮(えんぶ)の昔の日に似たり(梁塵秘抄)、 の、 閻浮、 は、 「えんぶ(閻浮)」の撥音「ん」の無表記形、 で、 えぶ、 とも訓ますが、 閻浮樹(えんぶじゅ)の略、 もしくは、 閻浮提(えんぶだい)」の略…

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崑崙山

崑崙山(こんろんさん)に石も無し、玉してこそは鳥は抵(う)て、玉に馴れたる鳥なれば、驚くけしきぞ更になき(梁塵秘抄)、 の、 崑崙山、 は、 こんろんざん、 とも訓ませ、 中国古代の伝説上の山、 で、「崑崙」は、 昆侖、 とも書き、 霊魂の山、 の意で、 崑崙山(こんろんさん、クンルンシャン)、 崑崙丘(きゅう)、 …

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四句の偈

摩耶の胎(なか)から生(むま)れ出て、寶の蓮(はちす)足をうけ、十方七度(ななたび)歩みつつ、四句の偈(げ)をぞ説(と)いたまふ(梁塵秘抄)、 十方(じっぽう) とは、 東・西・南・北の四方、 と、 艮(うしとら=北東)、巽(たつみ=東南)、坤(ひつじさる=南西)、乾(いぬい=西北)の四隅(四維(しゆい・しい)とも)、 と、さらに、 上・下を合わせた…

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浄名居士

毘舎離(びさり)城に住(おう)せりし、淨名居士(こじ)の御室(みむろ)には、三萬二千の床立てて、それにぞや、十方の佛は居たまひし(梁塵秘抄)、 十方(じっぽう)、 は、「四句の偈」で触れたように、 東・西・南・北の四方、 と、 艮(うしとら=北東)、巽(たつみ=東南)、坤(ひつじさる=南西)、乾(いぬい=西北)の四隅(四維(しゆい・しい)とも)、 と、さら…

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四向四果(しこうしか)

鷲のおこなふ深山(みやま)より、聖徳太子ぞ出(い)でたまふ、鹿(かせぎ)が苑(その)なる岩屋より、四果の聖(ひじり)ぞ出でたまふ(梁塵秘抄)、 の、 四果、 とは、 四向四果(しこうしか)、 の 四果、 だと思われる。 四向四果、 は、 四双八輩(しそうはっぱい)、 四向四得、 ともいい、 「向」は修行の目標、「果」は…

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耆闍崛山(ぎじゃくっせん)

浄飯王帚を持ち、耆(き)闍崛山(せん)には聖者(そうじゃ)居りとかやな、五臺山の深きより、一乗となつて出でたまふ(梁塵秘抄)、 の、 耆闍崛山、 は、 きじゃくっせん、 とも訓ませ、 サンスクリット語 Gṛdhrakūṭa、 の音写 祇闍崛山、 とも移されるが、 霊鷲山(りょうじゅせん)、 鷲峰山(じゅほうせん・じゅぶせん)、 …

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有漏・無漏

有漏(うろ)の此の身を捨てうでて、無漏(むろ)の身にこそならむずれ、阿彌陀佛(ほとけ)の誓(ちかい)あれば、彌陀に近づきぬるぞかし(梁塵秘抄)、 の、 有漏、 の、 漏、 は煩悩の意、 で、 有漏(うろ、梵語sāsrava)、 は、 煩悩のある状態、 無漏(むろ、梵語anāsrava)、 は、 迷いを離れていること、 …

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摩訶止観

天台宗の畏(かしこ)さは、般若や華厳摩訶止(まかし)観、玄義や釋籤倶視舎頌疏(ずんぞ)、法華経八巻(やまき)が其の論義(梁塵秘抄)、 の、 摩訶止観、 は、 天台摩訶止観、 天台止観、 止観、 ともいい、 法華三大部の一、 で、594年、隋の智顗(ちぎ 561~632)述、灌頂(かんじよう)筆録の、 天台宗の根本的な修行である止観、すなわち…

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犍陟駒(こんでいこま)

太子の御幸(みゆき)には、犍陟駒(こんでいこま)に乘りたまひ、車匿(しゃのく)舎人に口とらせ、檀特山(だんとくせん)にぞ入りたまふ、 の、 犍陟駒、 とは、 Kaṇṭhaka、 の音訳、 金泥駒、 とも当て、 悉達太子(しったたいし)が王宮を去って出家した時に乗った馬の名(精選版日本国語大辞典・デジタル大辞泉)、 とある。 悉達、 …

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健児(こんでい)

今聞く、大日本国(おおやまとのくに)の救将(すくいのきみ)廬原君臣(いおはらのきみおみ)、健児(こんでい)万余(よろづあまり)を率(い)て、正に海を越えて至らむ(日本書紀)、 の、 健児、 は、 けんじ、 と訓むと、 快馬健児、不如老嫗吹篪(洛陽伽藍記)、 と、 壮士、 と同義で、 血気盛んな若者、 の意であり、さらに、漢語で…

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喜見の城

忉利(たうり)は尊き處なり、善法堂には未申(ひつじさる)、圓生樹より丑寅(うしとら)に、中には喜見(きげん)の城(じやう)立てり(梁塵秘抄)、 の、 喜見城(きけんじょう)、 は、梵語、 Sudarśana、 の訳語、 帝釈天(たいしゃくてん)の居城、 とされ、 須弥山(しゅみせん)の頂上にある忉利天(とうりてん)の中央に位置し、七宝で飾られ、…

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帝釈天

「梵天」で触れたように、 帝釈天は梵天と並んで諸天の最高位を占め、仏法の守護神とされる(広辞苑)。 密教では十二天の一つとされるが、「大梵天」で触れたように、 十二天、 は、 仏教の護法善神である「天部」の諸尊12種の総称、 で、十二天のうち、特に八方、 東西南北の四方と東北・東南・西北・西南、 を護る諸尊を、 八方天、 あるいは、…

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僧伽

摩犂山(まれいさん)のこねにこそ、かうふてゐる蒔き直し、僧伽(そうぎや)の種(たね)に生(お)いにけり、やうれ香(かう)とぞ匂ふなる(梁塵秘抄)、 の、 僧伽、 は、 そうが、 とも訓ませ、梵語、 saṃgha(サンガ)、 の音訳、 集団・会合。 の意(デジタル大辞泉)で、 和合衆、 衆、 と訳し(広辞苑・大辞林)、 …

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