四華

釈迦の法華経説くはじめ、白毫(びゃくごう)光(ひかり)は月の如(ごと)、曼陀曼珠の華ふりて、大地も六種(むくさ)に動きけり(梁塵秘抄)、 の、 六種(むくさ)、 は、 我が果報をば天地の知れる也と。此く説給ふ時に、大地六種に震動し(今昔物語)、 とも使われ、 六種震動(ろくしゅしんどう)、 のことで、 如今此経、天雨四花、地有六種震動(「法華義…

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真如

積もれる罪は夜の霜、慈悲の光にたとへずば、行者の心をしづめつつ、実相真如を思ふべし(梁塵秘抄)、 の、 行者(ぎょうじゃ)、 は、 修行者、 行人(ぎょうにん)、 ともいい(「行人」を「こうじん」と訓むと、道を行く人の意になるが、これでも意味の範囲内にあるように思う)、 仏道を修行する人、 の意で、念仏の人を、 念仏行者、 真言を行ずる…

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空寂

大品般若は春の水、罪障氷の解けぬれば、萬法空寂(くざく)の波立ちて、真如の岸にぞ寄せかくる(梁塵秘抄)、 の、 空寂、 は、 くうじゃく、 とも訓ませ、 万物は皆実体がなく空であるということ、 の意(広辞苑)で、また、 この世のものは有形、無形のいずれにかかわらず、その実体、自性はなく、空(くう)であるということ、 をさとって、 一…

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般若

般若十六善神は、十六會(ゑ)をこそ守るなれ、もとより無漏(むろ)の法門は、中道にこそ通ふなれ(梁塵秘抄)、 の、 般若、 は、梵語、 prajñāの俗語形paññā、 の音写語(広辞苑)、 鉢羅若那、 の、 般は音、若は鉢の音便、 ともあり(大言海) 智慧・慧、 と訳し(広辞苑)、 あらゆる物事の本来のあり方を理解し、仏…

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五人比丘

一夏の間を勤めつつ、晝夜に信心怠らず、拘隣(くりむ)比丘ぞ最初には、諦理(たいり)を悟りて道成りし(梁塵秘抄)、 の、 拘隣比丘、 は、釋迦が成道後に鹿野苑(ろくやおん)で初めて行った説法を聞いて弟子となった、 五人の比丘(出家修行者)、 の一人である。その五人とは、 アージュニャータ・カウンディンニャ(梵語Ājñāta-kauṇḍinya、パーリ語Aññ…

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三草二木

花嚴経は春の花、七所八會(ゑ)の苑(その)ごとに、法界唯心色深く、三草二木法(のり)ぞ説く(梁塵秘抄)。 の、 花嚴経(けごんきょう)、 は、 華厳経、 とも当て、大乗仏教の仏典の一つ、 大方広仏華厳経(だいほうこうぶつけごんきょう)、 のことで(精選版日本国語大辞典)、梵語、 Buddhāvataṃsaka-nāma-mahāvaipulya…

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五つの須弥

眉の間の白毫は、五つの須彌(しみ)をぞ集めたる、眼(まなこ)の間の青蓮は、四大海(しだいかい)をぞ湛へたる(梁塵秘抄)、 の、 白毫(びゃくごう)、 は、既にふれたように、 仏三十二相の一で、眉間の白毫(白い毛)は右旋して光明を発する、 といい(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)、 眉間白毫相(みけんびゃくごうそう)、 と呼び(広辞苑)、 世閒眉閒…

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龍樹

南(なむ)天竺の鐵塔を、龍樹や大士の開かずば、まことの御法(みのり)を如何(いか)にして、末の世までぞ弘めまし(梁塵秘抄)、 の、 大士 は、「不軽大士(ふきょうだいじ)」で触れたように、 だいし、 だいじ、 と訓ませ、梵語、 Mahāsattva、 の訳、 摩訶薩(まかさつ)、 摩訶薩埵(まかさった)、 と音写され、 すぐれた…

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恒沙(ごうしゃ)

法華経此のたび弘めむと、佛に申せど許されず、地より出でたる菩薩たち、其の數六萬恒沙(ごうしゃ)なり(梁塵秘抄)、 の、 恒沙、 は、 ごうじゃ、 とも訓ますが、 恒河沙(ごうがしゃ)、 の略、 恒河(ガンジス川)の砂、 の意で、 無限の数量のたとえ、 として使われ、 諸仏の数は、恒河沙のごとく多い、 といわれたりし…

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十惡五逆

弥陀の誓ひたのもしき、十惡五逆の人なれど、一たび御名(みな)を称(とな)ふれば、来迎引接(らいごういんぜう)疑はず(梁塵秘抄)、 の、 十惡五逆、 は、 「業障(ごうしょう)」で触れたが、「五逆」(ごぎゃく)は、 五逆罪、 ともいい、仏教で説く、 五種の重罪、 ともいい、この五つの重罪を犯すと、もっとも恐ろしい無間地獄(むけんじごく)に落ちるの…

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浄飯王(じょうぼんのう)

釈迦牟尼佛は薩埵(さた)王子、彌勒文殊は十二の子、浄飯王(じゃうほん)王は最初の王、摩耶はむかしの夫人なり(梁塵秘抄)、 の、 浄飯王(じょうぼんおう・じょうぼんのう)、 は、梵語、 Śuddhodana(シュッドーダナ)、 の訳、 前6世紀ごろの中インドのヒマラヤ山麓にあった加毗羅衛 (かびらえ 迦毘羅かぴら) 国の城王、 で、 シャカ族の長…

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巫鳥(しとど)

常に消えぬ雪の島、螢こそ消えせぬ火はともせ、巫鳥(しとど)といへど濡れぬ鳥かな、一聲なれど千鳥とか(梁塵秘抄)、 の、 巫鳥(しとど)、 は、 鵐、 とも当て、 しととどり、 ともいい、古くは、 しとと、 と清音、 ホオジロ類の鳥、 で、 ホオジロの異称、 ともあるが、 ホオジロ・ホオアカ・アオジ・クロジなど…

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醫王

薬師醫王の浄土をば、瑠璃の浄土と名づけたり、十二の船を重ね得て、我ら衆生を渡いたまへ(梁塵秘抄)、 の、 瑠璃の浄土、 とは、「薬師如来」で触れたように、 阿弥陀如来の西方極楽浄土、 とならぶ浄土のひとつ、 薬師如来の東方浄瑠璃浄土、 で、東方にある薬師如来の浄土をいい、 大地は瑠璃、すべての建物・用具が七宝造りで、日光・月光をはじめ、無数の菩…

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郢曲(えいきょく)

今様・朗詠(うたい)、風俗・催馬楽なんど、ありがたき郢曲どもありけり(平家物語)、 とある、 郢曲(えいきょく)、 は、 客有歌於郢中者其始曰下里巴人、國中屬而和音數十人(宋玉、對楚王問)、 とある、 俗曲、 の意(字源)、 郢(エイ)、 は、 春秋時代、楚の都、淫風の盛んなりし地名、 で、今の、 湖北省江陵県の西北、 …

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甲乙(かんおつ)

其ふりつよからぬやうにして、聲のかすりなく、甲乙ただしく唱ものなり(梁塵秘抄口伝集巻11)、 の、 甲乙、 は、 こうおつ、 と訓ませると、 来十月、明年正月、四月節中、並甲乙日也(「小右記」和元年(1012)六月一六日) と、 十干の甲と乙、 つまり、 きのえときのと、 の意であったり、 是以除普明国師之外、龍湫・性海…

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平調(ひょうじょう)

急なる音を一段にめらして、一絲と立をき、平調の時はめぐりを合はせて(梁塵秘抄口伝集11巻)、 の、 めらせして、 は、 「甲乙」で触れたように、 かるめる、 の、 める、 ではないか。つまり、 音が下がる、 意で、 かるめる、 は、邦楽で、 (法華経を讀合ふ)弁慶がかうの聲、御曹司の乙の聲、人違へて、二の巻、半巻ば…

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白拍子(しらびょうし)

今様の會終夜ありて候、亂舞、猿楽、白拍子、品々しつくしき(梁塵秘抄口伝集10巻)、 とある、 白拍子(しらびょうし)、 は、 もとは雅楽の拍子の名で、笏拍子だけで等しい間隔で奏される拍の連続に当てて歌い奏する歌舞の名称、後に、白い水干に烏帽子姿で今様・短歌体歌謡等を歌いかつ舞う遊女が成立、その芸能の呼称ともなり、独自長歌謡を生む。仁和三年(1168)に平時忠らの今様の…

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示現

神社に参りて今様歌ひて、示現かぶること度々なる(梁塵秘抄口伝集第10巻)、 の、 示現(じげん)、 は、仏語、 為衆生故、示現八相、随縁在厳浄国土、転妙法輪度諸衆生(「往生要集(984~85)」)、 と、 仏菩薩が衆生救済のために、種々に身を変えてこの世に現われること、 をいい(岩波古語辞典・精選版日本国語大辞典)、 現化(げんげ)、 と…

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伽陀(かだ)

この所僧中伽陀の音ヲ別、一句ごとに畢也(梁塵秘抄口伝集11)、 の、 伽陀、 は、 偈陀、 とも表記し、梵語 gāthā、 の音写、 偈(げ)、 に同じ(広辞苑)とあり、 偈、 も、梵語、 Gāthā、 の音写、これを、 伽陀、 とも音写する(広辞苑)。漢語では、 頌(じゅ)、 あるいは、 …

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拍子をうつとて、笏のさへ舞をばなをしもつめて拍子をとり、刻笏の音にさへよと打に(梁塵秘抄口伝11)、 の、 笏(しゃく)、 は、 さく、 とも訓まし、 束帯着用の際、右手に持って威儀を整えた板片、 である(広辞苑)。唐制の、 手板(しゅはん)、 にならい、もとは、 裏に紙片を貼り、備忘のため儀式次第などを書き記した、 とある(…

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