ごを焼て手拭あぶる寒さ哉(芭蕉)、
の、
ご、
は、
松枯葉、
などと当てたりする(大言海)、
美濃・尾張・三河などで松の枯れ落葉をいい、燃料に用いる、
とある(松尾芭蕉(雲英末雄・佐藤勝明訳註)『芭蕉全句集』)が、
枯れ落ちた松葉を、かき集めて燃料にする時に多く言う、
とあり(日本語源大辞典)、
近世には美濃・尾張・三河地方の方言となる、
とある(仝上)。ただ、古くの用例の、
紅葉折りしきて、松のご、果(くだもの)盛りて、菌(くさびら)などして、尾花色の強飯(こはいひ)など、まゐるほどに(宇津保物語)、
は、
松の小菓子、
とし、
松の葉または実の形を模した菓子、
とする説もある(精選版日本国語大辞典)。「ご」は、
こくば、
ともいう(大言海・精選版日本国語大辞典)。和訓栞に、
四国にて、落葉を称す、コゲハの称にや、サラヒをコクバガキと云ふ(サラヒは、竹杷まなり)、
とあり、
播磨の熊野邊にては、松の落葉に就きて、
こく葉(ば)、
こくばがき、
といい、
甲斐國にては、すべての木の枯落葉を、ゴカと云ひ、ゴカガキニ行クなどと云ふ、
とある(大言海)。江戸中期の国語辞典『俚言集覧』には、
ごくも、甲斐にて、松の落ち葉を云ふ、
とある。
松の枯葉(コエフ)を下略して、松のことを云ひしを、更に上略したる語なるべし、
とある(大言海)が、
三河では、松平を意味する松という語を憚り、松葉をゴ(御)と称していたところからか。散りたるゴ(後)という意味からか(江戸後期の随筆『袂草』)、
とする説もある。ただ、「松平」を憚るのは、江戸時代、三河だけではあるまい。
今では松の落ち葉を燃料にすることもほとんどなくなって、専用の名前自体不要になってしまったために、共通語では単語そのものが存在しなくなった、
ようである(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13115686703)。
「松」(漢音ショウ、呉音シュ)は、
会意兼形声。「木+音符公(つつぬけ)」。葉が細くて、葉の間がすけて通るまつ、
という(漢字源)。別に、
会意兼形声文字です(木+公)。「大地を覆う木」の象形と「通路の象形と場所を示す文字」(みなが共にする広場のさまから「おおやけ」の意味)から、人の長寿、繁栄などの象徴の木「まつ」を意味する「松」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji576.html)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:ご