米買に雪の袋や投頭巾(芭蕉)、
の、
投頭巾(なげずきん)、
は、
四角の袋に縫った頭巾の上端を扁平のまま後ろに折りかけてかぶる、
もので(広辞苑・精選版日本国語大辞典)、
黒船頭巾、
ともいい、
近世、踊りに使われ、また傀儡師(かいらいし)・飴売り・小児などが用いた(広辞苑)とある。
(投頭巾 広辞苑より)
おさな名やしらぬ翁の丸頭巾(芭蕉)、
の、
丸頭巾、
は、
焙烙頭巾(ほうろくずきん)、
ともいう(広辞苑)、
焙烙の形をした頭巾、
で、
僧侶・老人が用い、
大黒頭巾、
法楽頭巾、
法禄頭巾、
耄碌(もうろく)頭巾、
などともいう(仝上)。
(焙烙頭巾 精選版日本国語大辞典より)
焙烙、
は、
炮烙、
炮碌、
とも当てる、
素焼きの、平たい土鍋、
をいい(「伝法焼」で触れた)、
茶や豆、塩などを煎るのに用いる(背精選版日本国語大辞典)ので、
炒鍋(いりなべ)、
ともいい(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%99%E7%83%99)、
胡麻ごまや茶をいる専用の器として、縁が内側にめくれて、柄のついた小型のもの、
もある(精選版日本国語大辞典)。
ただ、厳密には、丸形は、
丸頭巾、
といわれ、円形の布をひだをとって袋状とし、頭の大きさに合わせてへりをとる、この丸い袋を大きくしたものが、
焙烙(ほうらく)頭巾、
とある(世界大百科事典)。
頭巾、
は、漢語で、
佩巾、本以拭物、後人著於頭、
とあり(梁代字書『玉篇(543年)』)、宋代の『事物起源』には、
古以皂等裏頭、號頭巾、
とある。「衣冠束帯」で触れたように、
衣服令では、朝服では、
頭巾、
を、
ときん、
と訓ませ、唐風の服装の、
幞頭(ぼくとう)、
の流れをくみ、
一品以下。五位以上。並羅頭巾。衣色同礼服、
と(「令義解(718)」)、
皂羅頭巾、皂縵頭巾、、
などとあり、
礼服の冠は、冠と書し、朝服の冠は頭巾と書す、
とある(大言海)が、
頭巾(ずきん)、
とは関係ない(日本大百科全書)とある。
和名類聚抄(平安中期)に、
頭巾、世尊新剃頭髪、以衣覆頭、頭巾之縁也、
とあり、
僧の被り物、
として、
衣にて製し、頭を包む、
ものを指した(仝上)。宋代の仏教に関する名目、故実の解説書『釋氏要覧』(1019年)には、
僧の頭巾は、褐布にて、背後長さ二尺五寸、前長二尺八寸、
とあり(仝上)、室町時代、
僧侶(そうりょ)の被り物、
として発達しはじめ、中世までは、冠や烏帽子をかぶっていたが、江戸時代初期になると露頂の風習となり、
防寒や防塵のため、
として普及し、
御高祖(おこそ)頭巾・宗匠頭巾・苧屑(ほくそ)頭巾・角(すみ)頭巾・錣(しころ)頭巾・宗十郎頭巾・山岡頭巾、
様々の種類がうまれた。
なお、山伏の頭に被るものに、
兜巾(ときん)、
というのがある。
頭巾、
頭襟、
とも当てるが、中国の唐の、前述の。
幞頭(ぼくとう)、
を模し、
柔らかい皁羅(そうら)(黒の薄物)で袋状に縫った被(かぶ)り物で、このへりにつけた紐(ひも)をあごの下で結んで用いる(日本大百科全書)。山伏などの被るものには、
山中を遍歴する際に、山の悪気にあうのを防ぐ、
ため、十二因縁を表す12襞(ひだ)がある(仝上)。
(ときん(頭巾・兜巾・頭襟) 広辞苑より)
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95