2023年12月21日

帷子雪


霰まじる帷子雪はこもんかな(芭蕉)、

の、

帷子雪(かたびらゆき)、

は、

薄くふりつもった雪、

をいう(広辞苑)が、一説に、

一片が薄くて大きな雪、

にもいう(大辞林・デジタル大辞泉)。

極々霰.jpg

(極々霰(ごくごくあられ) https://www.kimononobi.co.jp/SHOP/1200017.htmlより)

こもん、

は、

霰小紋、

のことで、

霰小紋(あられこもん・あられごもん)、

は、霰のような大小の白い斑の、

あられの模様の小紋、

のことで、

霰形の細かい文様を一面に染め出した、

染め物の模様の名称をいい(広辞苑)、近世では、

鮫(さめ)小紋などの規則正しく配列したものをいい、裃(かみしも)などに多く用いた、

とある(精選版日本国語大辞典)。

小紋、

は、古くは、

今宮、こもんの白き綾の御衣小紋かさね奉りて(宇津保物語)、

と、

錦、綾などで細かい模様を織り出したもの、

だが(仝上)、一説に、

種々の文様を、布帛の地一面に、細かく染め出したるものなるべし、

とあり(仝上・大言海)、後世、

布帛の地の種々の色に、星、或は、霰、其外の模様を、極めて細密に、白く染めだすもの、皆型染(カタゾメ)なり、

とある(仝上)。江戸後期の三都(京都・大阪・江戸)の風俗、事物を説明した類書(百科事典)『守貞謾稿』には、

小紋は、形染也、極細密のものにて、三都ともに、男子は、裃、必ず用之、夏の単衣織地、絽、絹、龍文(りゅうもん 太い糸で平織りにした絹織物。織り目は斜めで地は厚い。江戸時代には袴(はかま)や帯地などに用いた)の類、用之、

とある。

帷子(帷)」は、

几帳、帳(とばり)など懸けて隔てとした布、

の意もあるが、

裏をつけない衣服、

つまり、

ひとえもの、

の意でもあり、

袷(あわせ)でなく裂(きれ)の片方を意味し、帳(ちよう)の帷(い)や湯帷子(ゆかたびら)はその原義を示している、

とある(世界大百科事典)。

単衣(帷子).jpg

(単(ひとえ) 近世の単の図であり、横繁菱の文様が、表裏違っているように見えるが、これは表の文様は浮いており、裏が沈んでいるため4個のように見える。『有職故実図典』より)


「帷」 漢字.gif



「帷」(イ)は、

形声。「巾+音符淮(ワイ)の略体で、周囲に垂らす布。まるく取巻く意を含む。中国最古の字書『説文解字』(後漢・許慎)に、「旁(かたわら)にあるを帷という」とあり、わきを取り巻く意と解する、

とある(漢字源)。別に、

形声文字です(忄(心)+隹)。「心臓」の象形(「心」の意味)と「尾の短いずんぐりした小鳥」の象形(「小鳥」の意味だが、ここでは、「維(イ)」に通じ(「維」と同じ意味を持つようなって)、「つなぐ」の意味)から、「1つの事に心を繋ぎ止めて思う」、「よく考える」を意味する「惟」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji2278.html

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:03| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする