2023年12月25日

布袋


物ほしや袋のうちの月と花(芭蕉)、

の、

袋、

は、

布袋の袋、

を指し、画賛句のようで、

布袋様の袋には月や花もあるはずで、何やら物ほしい気持ちになる、

と、注釈がある(松尾芭蕉(雲英末雄・佐藤勝明訳註)『芭蕉全句集』)。

布袋(葛飾北斎 ).jpg

(布袋(葛飾北斎) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%83%E8%A2%8Bより)

布袋(ほてい)、

は、

唐末・後梁の禅僧、名は契此(かいし、または釈を付けて釈契此(しゃくかいし)とも)、号は長汀子(ちょうていし)、

で(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%83%E8%A2%8B・広辞苑・大辞林)、

明州奉化県の岳林寺に名籍をもつだけで、嗣法を明かさず、居所を定めず、

といい(世界大百科事典)

容貌は福々しく、肥えた腹を露出し、日常生活用具を入れた袋を背負い杖を持って喜捨を求め市中を歩き、人の運命や天候を予知した、

という(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%83%E8%A2%8B・広辞苑・大辞林)。

布袋図( 歌川国芳 ).jpg

(『布袋図』(歌川国芳)  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%83%E8%A2%8Bより)

人々が与えるものは何でも布袋(ぬのぶくろ)に放り込んだことから、

布袋、

の名を得た(世界大百科事典)といい、後梁の貞明二年(916)に没したと伝えられる(精選版日本国語大辞典)。中国禅宗の諸祖における一種の異称の字典『禅林口実混名集』に、

布袋和尚、釋契此者、不詳氏族、形裁畏(腲脮(わいたい 肥えている)、蹙頞(しゅくあつ 顔をしかめる)皤腹(はふく 腹がふくれている)、常以杖荷布嚢入鄽、時號長汀子、布袋和尚、江浙閒畫其像焉、

とある。生前から、

神異の行跡が多く、分身の奇あり、一鉢千家の飯、孤身幾度の秋云々、その他、謎のような偈頌(げじゆ)が知られ、

て(世界大百科事典)、

弥勒の化身、

といわれ、鎌倉時代の説話集『十訓抄』に、

布袋和尚の十無益をかき給へる中に、文武不備、心高無益とあり、和尚は彌勒の化作なり、

とある。北宋代の禅宗灯史(伝承の歴史)『景徳伝灯録』(けいとくでんとうろく)に、布袋は死の間際に、

彌勒真彌勒 分身千百億(弥勒は真の弥勒にして分身千百億なり)
時時示時分 時人自不識(時時に時分を示すも時人は自ら識らず)

という名文を残したhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%83%E8%A2%8Bことも、弥勒菩薩の化身なのだという伝説を広める一因となったが広まったという(仝上)。

その円満の相は好画材として多く描かれ、日本では、室町時代後期には、

七福神

の一人として信仰されるようになり(広辞苑・大辞林)、真言三宝宗大本山清荒神清澄寺では三宝荒神の眷属とされるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%83%E8%A2%8B。ただ、七福神が確定するのは、

江戸後期、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%83%E8%A2%8B、仙厓の『七福神画賛』には布袋が描かれているが福禄寿ではなく稲荷神が描かれている(仝上)、とある。

『日本七福神伝』の凡例によると、

國俗、以吉祥、辨才、多聞、大国四天、布袋和尚、南極老人、及吾国蛭子神、称七福神祭之、

となっており、『狂言七福神』では、

恵比須(蛭子)・大黒天・毘沙門天・弁財天・布袋・福祿寿・寿老人、

『七福神考』では、

えびす(夷、恵比須)、大黒天、毘沙門天(びしやもんてん)、布袋、福禄寿、寿老人、弁財天、

としているらしいhttp://koshigayahistory.org/274.pdfが、今日は、

えびす(夷、恵比須)、大黒天、毘沙門天、布袋(ほてい)、福禄寿、寿老人、弁財天、

で、近世には、

福禄寿と寿老人が同一神とされ、吉祥天もしくは猩々(しようじよう)が加えられていたこともある、

とある(世界大百科事典)。因みに、

南極老人(なんきょくろうじん)、

は、

南極老人星(カノープス りゅうこつ座α星)を神格化した道教の神、

で、

南極仙翁、
寿星、

ともいい、『西遊記』『封神演義』『白蛇伝』など小説や戯曲に神仙として登場することも多く、日本では七福神の福禄寿と寿老人のモデルだと言われるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E6%A5%B5%E8%80%81%E4%BA%BAとある。

七福神.jpg

(七福神 日本大百科全書より)

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:56| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする