玉づさ

秋風に初雁が音ぞ聞こゆなる誰が玉づさをかけて来つらむ(古今和歌集)、 の、 たまづさ、 は、万葉集では、 たまづさの、 という形で、 使ひ、 にかかる枕詞であり、さらに、 使者そのもの、 の意味になったが、古今集から、 使者が携えてくる手紙、 の意となる(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)と注記がある。なお、 雁が手紙を運…

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いなおほせ鳥

わが門にいなおほせ鳥の鳴くなへにけさ吹く風に雁は来にけり(古今和歌集)、 山田も(守)る秋の仮廬(かりいほ)に置く露はいなおほせ鳥の涙なりけり(仝上)、 の、 いなおほせ鳥、 は、 ももちどり(百千鳥)、 よぶこどり(喚子鳥)、 と並ぶ、いわゆる、 古今三鳥、 の一つとされるが、 秋の田にいる鳥、 らしいものの、古来不明とされる(高田…

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あへなし

いとはやも鳴きぬる雁か白露の色どる木々ももみぢあへなくに(古今和歌集)、 の、 あふ、 は、 … しきる、 … しおおせる、 の意とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 あへなし、 は、 敢へ無し、 とあてる形容詞で、語源は、 あふ(敢ふ)の連用形(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%8…

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摺る

月草に衣はすらむ朝露にぬれてののちはうつろひぬとも (古今和歌集)、 の、 摺る、 は、 染料を塗った形木(かたぎ)を布にこすりつけて染めること、 で、 月草であなたの衣を摺(す)って染めましょう。たとえ朝露に濡れて帰った後は色うつろうとしても、 と注記がある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 する、 には、 摺る、 のほか…

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神奈備

神無月時雨もいまだ降らなくにかねてうつろふ神奈備の森(古今和歌集)、 の、 神奈備の森、 は、もともと普通名詞で、 神が降りる森、 の意で、各地にあるが、ここは、固有名詞とすれば、 竜田川に近い奈良県生駒郡斑鳩町の森、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。これは、 ちはやぶる神奈備山のもみぢ葉に思ひはかけじうつろふものを(古今和歌集)、 …

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さす

同じ枝をわきて木の葉のうつろふは西こそ秋のはじめなりけれ(古今和歌集)、 の前文に、 貞観の御時、綾綺殿(りょうきでん)の前に梅の木ありけり。西の方にさせりける枝のもみぢはじめたりけるを、上にさぶらふをのこどものよみけるついでによめる、 にある、 西の方にさせりける枝、 の、 さす、 は、 枝を伸ばす、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌…

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つゆ

雨降れど露ももらじをかさとりの山はいかでかもみぢそめけむ(古今和歌集)、 の、 露ももらじ、 とある、 露、 は、 雨露の「露」と、「少し も… ない」の意の「つゆ」を掛ける、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 つゆけし、 で触れたように、 つゆ(露)、 は、 秋の野に都由(ツユ)負へる萩を手折らずてあたら盛り…

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ちはやぶる

ちはやぶる神の斎垣(いかき)には(這)ふくず(葛)も秋にはあへずうつろひにけり(古今和歌集)、 の、 斎垣、 は、 神域の清浄を保つ垣、 の意で、 瑞垣(みづがき)、 ともいい、 いかきと清音で訓む、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)が、 いがき、 とも訓ませ、 「い」は「斎み清めた神聖な」の意の接頭語、 …

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斎垣(いかき)

神の社のあたりをまかりける時に、斎垣のうちの紅葉を見てよめる、 と前文のある、 ちはやぶる神の斎垣には(這)ふくず(葛)も秋にはあへずうつろひにけり(古今和歌集)、 の、 斎垣、 は、「ちはやぶる」でも触れたように、 神域の清浄を保つ垣、 の意で、 瑞垣(みづがき)、 ともいい、 いかきと清音で訓む、 とある(高田祐彦訳注『新…

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ははそ

秋霧は今朝はな立ちそ佐保山のははそのもみぢよにても見む(古今和歌集)、 佐保山のははその色はうすけれど秋は深くもなりにけるかな(仝上)、 の、 ははそ、 は、 柞、 と当て、 楢 のことで(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)、 黄葉する、 とあり、 ははその色はうすけれど、 は、 黄葉するので、紅葉のように色が深くならな…

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くぬぎ

荒陵(あらはか)の松林(はら)の南に当りて忽に両(ふたつ)の歴木(クヌキ)生ひたり(日本書紀)、 の、 くぬぎ、 は、 櫟、 橡、 櫪、 椚、 椢、 等々と当て(日本国語大辞典)、 ブナ科コナラ属の落葉高木、 とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%8C%E3%82%AE)。 …

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ぬさ

竜田姫たむくる神のあればこそ秋の木の葉のぬさと散るらめ(古今和歌集)、 秋の山紅葉をぬさとたむくれば住むわれさへぞ旅心地する(仝上)、 神奈備の山を過ぎゆく秋なれば竜田川にぞぬさはたむくる(仝上)、 とある、 ぬさ、 は、 幣、 と当て、 布や帛を細かく切ったもので、旅人は、道の神の前でこれを撒く、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 …

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行矣(さきくませ)

豊葦原(とよあしはら)の千五百秋(ちいほあき)の瑞穂(みずほ)の国(くに)は、是(これ)吾(あ)が子孫(うみのこ)の王(きみ)たるべき地(くに)なり。宜(よろ)しく爾(いまし)皇孫(すめみま)就(ゆ)きて治(し)らせ。行矣(さきくませ)。宝祚(あまつひつぎ)の隆(さか)えまさむこと、当(まさ)に天壌(あめつち)と窮(きはま)りなかるべし(日本書紀)、 の、 行矣(さきくませ)、 …

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しがらみ(柵)

山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり(古今和歌集)、 の、 しがらみ、 は、 柵、 笧、 と当て、 川の流れをせき止める柵、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 (しがらみ 広辞苑より) 川の流れをせきとめるため、杭(くい)を打ち渡し、竹・柴などを横にからませたもの、 である(学研古語辞典)。それをメタファ…

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きよみ

風吹けば落つるもみぢ葉水きよみ散らぬ影さへ底に見えつつ(古今和歌集)、 の、 きよみ、 の、 「きよ」は形容詞「きよし」の語幹。「み」は理由を表す接尾語、 とあり(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)、 清いので、 けがれなく美しいので、 すがすがしいので、 という意味になる(精選版日本国語大辞典)。接尾語、 み、 は、 若の浦に潮…

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さやけし

うつせみは数なき身なり山川のさやけき見つつ道を尋ねな(万葉集)、 の、 さやけし、 は、 きよらかな、 という意で、 分明、 亮、 寥、 と当てる(岩波古語辞典)とか、 明けし、 清けし、 爽けし、 と当てる(精選版日本国語大辞典)とある。類義語、 きよし、 との違いは、「きよみ」で触れたように、「きよし」は、 …

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藤衣

ほにも出でぬ山田をもると藤衣いなばの露にぬれぬ日ぞなき(古今和歌集)、 の、 藤衣、 は、 藤の繊維で織った粗末な衣、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 藤衣、 は、 ふじぎぬ(藤衣)、 ふじのころも(藤の衣)、 ともいい(広辞苑)、 藤蔓の皮の繊維にて織れる布の衣、 で、 織目が荒く、肌(はだ)ざわりが固く…

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ひつち

かれる田におふるひつちのほに出でぬは世を今さらにあきはてぬとか(古今和歌集)、 の、 ひつち、 は、 稲を刈り取ったあとの株から伸びる新芽、 とあり、 穂は出ない、 と注記がある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 ひつち、 は、 穭、 稲孫、 と当て、 ひつぢ(ひつじ)、 ひづち(ひずち)、 とも訓ませ、 …

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こく

見わたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける(古今和歌集)、 の、 こく、 は、 枝から花や葉をもぎとること、 とあり(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)、 こきまぜて、 で、 もぎとった花や実をまぜあわせること、 とある(仝上)。万葉集には、 藤波(ふぢなみ)の花なつかしみ引き攀(よ)ぢて袖(そで)にこきれつ、 というように、…

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離(か)る

山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば(古今和歌集)、 の、 かる、 は、 離る、 と当てるが、 離る、 は、 ある、 と訓ませると、 散る、 とも当て、 アラ(粗)の動詞形、 で、 廿人の人の上りて侍れば、あれて寄りまうで来ず(竹取物語)、 と、 別れる、 散り散りになる、 …

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