2024年02月05日

ももちどり(百千鳥)


我(わ)が門(かど)の榎(え)の実(み)もり食(は)む百千鳥(ももちとり)千鳥(ちとり)は来(く)れど君ぞ来(き)まさぬ(万葉集)、

の、

ももちどり、

は、

百千鳥(岩波古語辞典・広辞苑)、

あるいは、

百箇鳥(大言海)、

と当てる。

ももち、

は、

百箇(岩波古語辞典)、
百(大言海)、

と当て(「ももち」は百箇の義(大言海)とある)、

チは個数をあらわす語、

で、類聚名義抄(11~12世紀)に、

百・佰、モモ・モモチ、

とあり、

百個、

の意だが、

時雨こそももちの人の袖濡らしければ(平安後期「月詣和歌集」)

と、

数の多い、

意でも使う(岩波古語辞典)。そこから考えると、

ももちどり、

も、文字通り、

数多くの小鳥、

あるいは、また、

いろいろな鳥、

の意で、

百鳥(ももとり)、

という意味になりそうである。しかし、これを鳥の固有名詞として、

友をなみ川瀬にのみぞ立ちゐけるももちとりとは誰かいひけん(和泉式部集)、

と、

ちどり(千鳥)の異名、

としたり、

ももちとりこ伝ふ竹のよの程もともにふみ見しふしぞうれしき(「拾遺愚草(1216~33頃)」)、

うぐいす(鶯)の異名、

とし、「稲負鳥(いなおほせどり)」で触れたように、

ももちどり、

を、

呼子鳥(よぶこどり)、
稲負鳥(いなおほせどり)、

とともに、

「古今伝授」の「三鳥」の一つ、

としたりする(岩波古語辞典・精選版日本国語大辞典。さらには、書言字考節用集(1717)では、

もず(百舌)、

としたりしている(仝上)とか。

ちどり」で触れたように、

千鳥、

も、その字の通り、

朝狩(あさかり)に五百(いほ)つ鳥立て夕狩に千鳥踏み立て許すことなく追ふごとに(万葉集)、

と、

多くの鳥、

の意である(岩波古語辞典・広辞苑)が、この場合、「千」は、

郡飛する意、

となる(大言海)。

「千鳥」の由来は、

数多く群れを成して飛ぶからか、また、鳴き声から(広辞苑)、
交鳥(チガエドリ)の義、飛ぶ状より云ふ、或いは云ふ、鳴く声を名とす。鵆は鴴の異体なり、但し(中国南北朝期(439~589)の漢字字典)『玉篇』には、「鵆、荒鳥」とあり、チドリは國訓(大言海)、
鳴き声から(日本語源=賀茂百樹・音幻論=幸田露伴)、
チ(擬声、チョチョ・チンチン)+鳥。チチと鳴く鳥の意(日本語源広辞典)、

と、鳴き声とする説が多い。他に、

チヂドリ(千々鳥)の義(日本語原学=林甕臣)、
チガヘドリ(交鳥・差鳥)の義(名言通)、

もある。「チガヘ」というのは、「千鳥足」で触れたように、

路を行くに、右へ片寄り、又、左へ片寄りて歩むこと。又、歩むに両脚を左右に打ちちがへて行く、

こと(大言海)からきているが、

鳴き声をチと聞いて、

しほ山のさしでの磯に住む千鳥君がみ代をばやちよとぞ鳴く(古今集)、

のように、祝賀の意を持たせることがある。後世には、

ちりちり(虎明本狂言「千鳥」)、
チンチン(松の葉・ちんちんぶし)、

と聞きなす、

とある(日本語源大辞典)。「千鳥」の由来は、鳴き声でいいようであるが、今日、僕には、さえずりは、

チ、チ、チ、

と聞こえ。地鳴きは、

ピウ ピウ、

と聞こえるhttps://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1523.html。どうも、これからみると、

ももちどり、

は、

ちどり、

ではないようだし、

誤りて、鶯の称、

とある(大言海)ので、

ウグイス

でもないようである。

百千、

の表記から、多くの鳥、さまざまな鳥と解釈したほうが自然である、

コチドリ.jpg


参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:59| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする