手向けにはつづりの袖もきるべきに紅葉に飽ける神や返さむ(古今和歌集)、
の、
つづり、
は、
布地を継ぎあわせて作った着物、
の意で、転じて、
粗末な着物、
僧衣、
の意とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。
つづれ(綴れ・襤褸)、
ともいう(精選版日本国語大辞典)が、この動詞、
つづる(綴)、
は、
つづら(葛)と同根、
とあり(岩波古語辞典)、「つづら」は、
綴葛(ツラツラ)の約にて、組み綴るより云ふ、
で(大言海)、「つづる」は、
蔓(繊維)を突き通して物を縫い合わせる、
意で(岩波古語辞典)、
同類のものを二つ以上つぎ合わせる、
意とある(精選版日本国語大辞典)。で、
手を以て衣を縫(ツツリ)き(「大智度論平安初期点(850頃)」)、
と、
糸などで二つ以上のものをつなぎ合わせて布地や衣服にする、また、欠けたり破れたりした所をつぎ合わせる、
意や、
障子をつづりて倹約をしめしたるは時頼の母とかや(「俳諧・類船集(1676)」)、
と、
布、紙などをつぎ合わせる、
意で使い、それを広く、
紙を糸・紐などでとじる、とじ合わせる、
意でも、それをメタファに、
コトバヲ tçuzzuru(ツヅル)(「日葡辞書(1603~04)」)、
ことばを組み合わせて文を作る、
また、
文章に書き表わす、
意や、
さるによりて、他力の本願にほこりて、いよいよ悪をつづり、首題の超過をよりどころとして仏をそしり他をなみす(談義本「艷道通鑑(1715)」)、
と、
ある行為や物事をとぎれなくつづける、
意でも使う(精選版日本国語大辞典)。この連用形の名詞形が、
つづり、
だから、
此等は外穢内浄の句なるべし。たとへば、金(こがね)をつづりに裹(つつ)みたるごとし(「ささめごと(1463~64頃)」)、
と、
布きれをつぎ合わせたもの、
をさし、そこから、
粗末な衣服、
ぼろぼろの着物、
となり、さらに、上記引用のように、
種々のきれをつぎ合わせてつくった袈裟、
または、
法衣、
をも指す。
(「綴」 説文解字・漢 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%B6%B4)
「綴」(漢音テイ・テツ、呉音タイ・テチ)は、
会意兼形声。叕(テツ)は断片をつなぎ合わせるさまを描いた象形文字。綴はそれを音符とし、糸を加えた字で、糸で綴り合せることを示す、
とある(漢字源)。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95