2024年02月21日

つづり


手向けにはつづりの袖もきるべきに紅葉に飽ける神や返さむ(古今和歌集)、

の、

つづり、

は、

布地を継ぎあわせて作った着物、

の意で、転じて、

粗末な着物、
僧衣、

の意とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。

つづれ(綴れ・襤褸)、

ともいう(精選版日本国語大辞典)が、この動詞、

つづる(綴)、

は、

つづら(葛)と同根、

とあり(岩波古語辞典)、「つづら」は、

綴葛(ツラツラ)の約にて、組み綴るより云ふ、

で(大言海)、「つづる」は、

蔓(繊維)を突き通して物を縫い合わせる、

意で(岩波古語辞典)、

同類のものを二つ以上つぎ合わせる、

意とある(精選版日本国語大辞典)。で、

手を以て衣を縫(ツツリ)き(「大智度論平安初期点(850頃)」)、

と、

糸などで二つ以上のものをつなぎ合わせて布地や衣服にする、また、欠けたり破れたりした所をつぎ合わせる、

意や、

障子をつづりて倹約をしめしたるは時頼の母とかや(「俳諧・類船集(1676)」)、

と、

布、紙などをつぎ合わせる、

意で使い、それを広く、

紙を糸・紐などでとじる、とじ合わせる、

意でも、それをメタファに、

コトバヲ tçuzzuru(ツヅル)(「日葡辞書(1603~04)」)、

ことばを組み合わせて文を作る、
また、
文章に書き表わす、

意や、

さるによりて、他力の本願にほこりて、いよいよ悪をつづり、首題の超過をよりどころとして仏をそしり他をなみす(談義本「艷道通鑑(1715)」)、

と、

ある行為や物事をとぎれなくつづける、

意でも使う(精選版日本国語大辞典)。この連用形の名詞形が、

つづり、

だから、

此等は外穢内浄の句なるべし。たとへば、金(こがね)をつづりに裹(つつ)みたるごとし(「ささめごと(1463~64頃)」)、

と、

布きれをつぎ合わせたもの、

をさし、そこから、

粗末な衣服、
ぼろぼろの着物、

となり、さらに、上記引用のように、

種々のきれをつぎ合わせてつくった袈裟、

または、

法衣、

をも指す。

「綴」.gif



「綴」 説文解字・漢.png

(「綴」 説文解字・漢 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%B6%B4

「綴」(漢音テイ・テツ、呉音タイ・テチ)は、

会意兼形声。叕(テツ)は断片をつなぎ合わせるさまを描いた象形文字。綴はそれを音符とし、糸を加えた字で、糸で綴り合せることを示す、

とある(漢字源)。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:43| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする