2024年02月22日
とよむ
來べきほど時すぎぬれや待ちわびて鳴くなる人をとよむる(古今和歌集)、
の、
とよむ、
は、
音や声を鳴り響かせる、
意とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。
「どよむ(響)」で触れたように、今日の「どよむ」は、色葉字類抄(平安末期)に、
動、とよむ、
とあり、平安時代までは、
とよむ、
と清音で、
「どよむ」に変わったのは、平安中期以後
とされ(日本語源大辞典)、
響む、
動む、
響動む、
等々と当てる(広辞苑・岩波古語辞典・日本語源大辞典・大言海)。
「とよむ」の「とよ」は、
擬声語(広辞苑)、
擬音語(岩波古語辞典)、
音の鳴り響く義(大言海)、
の、
動詞化、
とあり(広辞苑)、古くは、
雷神(なるかみ)の少しとよみて降らずとも我はとまらむ妹しとどめば(万葉集)、
と、
鳴り響く、響き渡る、
意や、
さ野つ鳥雉(きぎし)は登与牟(トヨム)(古事記・歌謡)、
と、
鳥獣の鳴き声が鳴り響く、
意のように、
人の聲よりはむしろ、鳥や獣の声や、波や地震の鳴動など自然現象が中心であったのに対して、濁音化してからは、主として人の声の騒がしく鳴り響くのに用いられるようになった、
とある(日本語源大辞典)。
とよむ、
には、上述の、
雷神なるかみの少しとよみて降らずとも我はとまらむ妹しとどめば(万葉集)、
と、
鳴なり響ひびく、
大声おおごえをあげ騒さわぐ、
意の、自動詞で、マ行四段活用の、
語幹(とよ)未然形(ま)連用形(み)終止形(む)連体形(む)已然形(め)命令形(め)
と、
恋ひ死なば恋ひも死ねとやほととぎす物思もふ時に来鳴きとよむる(万葉集)、
と、
鳴り響かせる、
とよもす、
どよむ、
意の、他動詞、マ行下二段活用の、
語幹(とよ)未然形(め)連用形(め)終止形(む)連体形(むる)已然形(むれ)命令形(めよ)
とがある(大言海・https://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%A8%E3%82%88%E3%82%80・広辞苑)。
「響」(漢音キョウ、呉音コウ)は、「どよむ(響)」で触れたように、
会意兼形声。卿(郷 ケイ)は「人の向き合った姿+皀(ごちそう)」で、向き合って会食するさま。饗(キョウ)の原字。郷は「邑(むらざと)+音符卿の略体」の会意兼形声文字で、向き合ったむらざと、視線や方向が空間をとおって先方に伝わる意を含む。響は「音+音符卿」で、音が空気に乗って向こうに伝わること、
とある(漢字源)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95