めどに削り花

花の木にあらざらめども咲きにけりふりにしこのみなるときもがな(古今和歌集)、 の、前文に、 めどに削り花させりけるをよませたまひける、 とある、 めど、 は、 萩の一種、 削り花は、 木を削って造った造花、 をいい、 めどに削り花、 とは、古今伝授の、 三木(さんぼく)、 のひとつ、 めどに造化を挿す、 …

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かはな草

うばたまの夢になにかはなぐさまむうつつにだにもあかぬ心を(古今和歌集) で、 なにかはなぐさまむ、 に、 かはなぐさ、 を詠みこんでいる。その、 かはなぐさ、 は、 川菜草、 と当て、 古くから、水苔をかはなと訓む。川にはえる藻類であろう、 とあり、 古今伝授の三木のひとつ、 とされる(高田祐彦訳注『新版古今和歌集…

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うばたまの

うばたまの我が黒髪を引きぬらし乱れてなほも恋ひ渡るかも(万葉集)、 うばたまの夢になにかはなぐさまんうつつにだにもあかぬ心を(古今和歌集)、 の、 うばたまの、 は、「夢」にかかる枕詞(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)とある。この、 うばたまの、 は、 奴婆多麻能(ヌバタマノ)黒き御衣(みけし)をま具(つぶさ)に取り装(よそ)ひ(古事記・歌謡) 和妙(…

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きりぎりす

秋はきぬ今や籬(まがき)のきりぎりす夜な夜な鳴かむ風の寒さに(古今和歌集) とある、 きりぎりす、 は、 こおろぎの古称、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 きりぎりす、 は、 蟋蟀、 螽斯、 と当て、 コオロギの古称、 であるが、 こおろぎ(こほろぎ)、 は、 蟋蟀、 と当て、 暮月…

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くたに

散りぬればのちは芥(あくた)になる花を思ひ知らずもまどふてふかな(古今和歌集) は、 芥(あくた)になる花、 に、 くたに を詠みこんでいる(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 くたに、 は、 苦丹、 と当て、 竜胆 や 牡丹 とされる(仝上)。 卯の花の垣根ことさらにしわたして、昔おぼゆる花橘、撫子(なでしこ)、薔…

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ささがに

白露を玉にぬくとやささがにの花にも葉にも糸をみな綜(へ)し(古今和歌集) の、 ささがにの、 は、 蜘蛛にかかる枕詞、 で、平安時代は、 ささがに、 は、 蜘蛛そのもの、 をいう(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)とある。 ささがにの、 は、奈良時代の、 わが背子が來べき宵なりささがねの蜘蛛のおこなひ今宵著(しる)しも(日…

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綜(ふ)

白露を玉にぬくとやささがにの花にも葉にも糸をみな綜(へ)し(古今和歌集) の、 糸をみな綜(へ)し、 に、 をみなへし、 を詠みこんでいる(仝上)が、 へ(綜)、 は、終止形、 綜(ふ)、 で、 縦糸を機(はた)にかけて、織れるようにすること、 とある(仝上)。和名類聚抄(931~38年)には、 綜、和名閉(へ)、機縷持…

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ふりはへて

ふりはへていざ故里(ふるさと)の花見むと來しをにほひぞうつろひにける(古今和歌集) の、 ふりはへて、 は、 振り延へて、 とあて、 ふりはえ(振り延え)、 と同じで、 わざわざ、 ことさら、 という意になる(広辞苑)。これは、動詞、 ふりはふ(振延)、 を、 ふりはへて、 の形で、副詞的に用いるもの(精選版日本…

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やまし

ほととぎす峰の雲にやまじりにしあれど聞けど見るよしもなき(古今和歌集) の、 雲にやまじり、 で、 やまし、 を詠みこんでいる(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 やまし、 は、 ユリ科の多年草、 で、 「知母」「花菅」の異称、 とある(仝上)。 やまし、 は、 やまじ、 ともいい、 ハナスゲの別…

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からはぎ

うつせみのからは木ごとにとどむれど魂(たま)のゆくへを見ぬぞかなしき(古今和歌集) は、 からはきごとに、 で、 からはぎ、 を詠みこんでいる(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 からはぎ、 は、 唐萩、 と当てるが、 どんな植物か不明、 とある(仝上)。 からはぎ、 は、 「はぎ(萩)」の異名か、萩の一種な…

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さがりごけ

花の色はただひとさかり濃けれども返す返すぞ露は染めける(古今和歌集) は、 ひとさかり濃けれども、 で、 さがりごけ、 を詠みこんでいる(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 さがりごけ、 は、 松蘿、 と当て、 さるおがせ、 ともいい、 山の木の枝から垂れ下がる地衣類、 とある(仝上)。「をがたまの木」で触れたよう…

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にがたけ

命とて露をたのむにかたければものわびしらに鳴く野辺の虫(古今和歌集) と、 たのむにかたければ、 で、 にがたけ、 を詠みこんでいる(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。当時、 はかもなき夏の草葉に命と頼む虫のはかなさ(寛平御時后宮歌合)、 と、 虫は命の糧として露を吸うと考えられていた、 とある(仝上)。 にがたけ、 は、 …

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かはたけ

さよふけてなかばたけゆくひさかたの月吹きかへせ秋の山風(古今和歌集) に、 なかばたけゆく、 で、 かはたけ、 を詠みこんでいる(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 かはたけ、 は、 川竹か、 とし、 あはれなるもの……夕暮れ暁に、川竹の風に吹かれたる、目さまして聞きたる(枕草子) を引くが、また、一説に、 皮茸、 …

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ものから

あぢきなし嘆なつめそ憂きことにあひくる身をば捨てぬものから(古今和歌集) では、 あぢきなし、 で、 なし、 なつめそ、 で、 なつめ(棗)、 あひくる身、 で、 くるみ(胡桃)、 を詠みこむ(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 ものから、 は、 今は來じと思ふものから忘れつつ待たるることのまだもやまぬか(古…

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月の桂

秋来れど月の桂の実やはなる光を花と散らすばかりを(古今和歌集) の、 月の桂、 は、 月に生えている伝説上の木、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 桂は、 桂を折る(文章生(もんじょうしょう)、試験、対策に応)、 桂男(かつらおとこ・かつらを 月で巨大な桂を永遠に切り続けている男の伝説)、 桂の眉(かつらのまゆ 三日月のように細く美しい…

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百和香

花ごとにあかず散らしし風なればいくそばくわか憂しとかは思ふ(古今和歌集)、 の、 いくそばくわか憂し、 の、 いくそばく、 は、 どれほど多く、 の意、 いくそばくわか憂し、 に、 百和香、 を(かなり無理して)詠みこむ(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)とあり、 はくわこう(百和香)、 は、 神仙世界にあると…

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行矣

自當逢雨露(自ずから当(まさ)に雨露に遭うべし) 行矣愼風波(行(ゆ)けや 風波を慎め)(高適・送鄭侍御謫) の、 行矣(コウイ)、 は、 旅立つ人におくる言葉。さようなら、お大事にという意味、 とある(前野直彬注解『唐詩選』)。 「行矣(さきくませ)」で触れたように、 宜(よろ)しく爾(いまし)皇孫(すめみま)就(ゆ)きて治(し)らせ。行矣(さき…

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墨流し

春霞中し通ひ路なかりせば秋來る雁は帰らざらまし(古今和歌集)、 の、 春霞中し、 に、 詠みこんだのが、 墨流し、 で、 墨を水面に浮かべてできた模様を、髪に移し染める染色法、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。かつて担当した書物のカバーに墨流しの模様を使った記憶がよみがえる。 (墨流染 精選版日本国語大辞典) 墨流し、 …

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虎嘯

子房未虎嘯(子房、未だ虎嘯せざりしとき) 破産不為家(産を破り家を為(おさ)めず)(李白) の、 虎嘯(こしょう)、 は、文字通り、 虎が吠える、 意で、 虎が吠えれば、風が巻き起こると言われ、風雲に乗じて大事業に乗り出すこと、 をいう(前野直彬注解『唐詩選』)とある。 子房、 とは、 張子房、 漢の高祖の軍師であった、 …

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