2024年03月20日
虎嘯
子房未虎嘯(子房、未だ虎嘯せざりしとき)
破産不為家(産を破り家を為(おさ)めず)(李白)
の、
虎嘯(こしょう)、
は、文字通り、
虎が吠える、
意で、
虎が吠えれば、風が巻き起こると言われ、風雲に乗じて大事業に乗り出すこと、
をいう(前野直彬注解『唐詩選』)とある。
子房、
とは、
張子房、
漢の高祖の軍師であった、
張良、
字(あざな)は、
子房(しぼう)
という(仝上)。
蕭何、
韓信、
と共に、
漢の三傑、
とされる(精選版日本国語大辞典)。
虎嘯(こしょう)、
は、文字通り、
虎のほえること、
また、
虎のような声でほえたてること、
の意だが、上記李白の詩のように、
英雄、豪傑が世に出て活躍することのたとえ、
として使う(精選版日本国語大辞典)。劉安編『淮南子(えなんじ)』(紀元前139年成立)に、
虎嘯(うそぶ)いて谷風至り、擧(あ)がりて景雲屬す。麒(きりん)鬭ひて日月食し、鯨魚(げいぎよ)死して慧星(けいせい)出づ、
にもとづき、ここから、
英雄が世に現れ、風雲を巻き起こす、
意の、
虎嘯いて谷風至る、
ということわざも生まれている。
虎嘯風生、龍騰雲起、英賢出發、亦各因時(北史・張定和傳)
ともあり、また、
龍吟雲起 虎嘯風生(りゅうぎんずればくもおこり とらうそぶけばかぜしょうず)、
と、
同じ考えや心をもった者は、相手の言動に気持ちが通じ合い、互いに相応じ合うということ。また、人の歌声や笛・琴の音などが、あたかも竜やとらのさけび声が天空にとどろき渡るように響くことをいう、
意で使われる(新明解四字熟語辞典)。
なお、「虎」をめぐっては、「虎」、「虎嵎を負う(とらぐうをおう)」、「虎を養いて自ら患(うれ)ひを招く」、「虎の尾」などで触れた。
「嘯」(ショウ)は、
会意兼形声。「口+音符粛(ショウ 細い、すぼむ)」
とある(漢字源)。
参考文献;
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
簡野道明『字源』(角川書店)
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95