得成比目何辭死(比目(ひもく)を成すを得ば何ぞ死を辭せん)
願作鴛鴦不羨仙(願わくば鴛鴦(えんのう)と作(な)りて仙を羨まず)
比目鴛鴦眞可羨(比目、鴛鴦、眞に羨やむべし)
雙去雙來君不見(雙(なら)び去り雙(なら)び來(きた)る、君見ずや)(盧照鄰・長安古意)
の、
比目、
は、
東方の海に棲むという魚。雌雄が片目ずつ持っていて、泳ぐときには双方が寄りそい、両目になって進むと言われ、仲の良い夫婦のたとえに用いられる、
とある(前野直彬注解『唐詩選』)。
鴛鴦、
と同義である。中国最古の字書『爾雅』(秦・漢初頃)に、
東方有比目魚焉、不止不行、其名謂之鰈、比翼鳥其名謂之鶼(ケン)、
とあり、朝鮮の異名ともされる、
鰈域、
は、
東海致比目之魚、西海致比翼之鳥(漢書・郊祀志)、
と、
東海に鰈魚を産するにより名づく、
とあり(字源)、朝鮮近海を、
鰈海、
という(仝上)。「鰈」(漢音呉音トウ、チョウ)は、
カレイ、
を指すが、
ヒラメ、カレイの類の総称、
でもあり、
比目魚(ひもくぎょ)、
板魚、
王餘魚、
ともいう(字源)。「王餘魚」は、爾雅の註に、
比目魚、河東呼為王餘、
とあり、
カレイの異名、
である。多く、
比目魚、
と表記する。
比目(ヒモク)、
は、
ヒボク、
とも訓ませ、文字通り、
目を並べること、
だが、上記のように、
目がおのおの一つしかなく、二匹並んで泳ぐという想像上の魚、
を指し、
夫婦または友人の仲の良いたとえ、
として使う(大辞林)。
カレイ、
は、
比目魚、
と当て、
ヒラメ、
に、
平目、
と当てたりする(大言海)。ヒラメ(鮃)は、
カレイ目カレイ亜目ヒラメ科に属し、ヒラメ科とダルマガレイ科に属する魚の総称である、
とあり、
有眼側(目のある方)が体の左側で、また口と歯が大きいのが特徴、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%A9%E3%83%A1)。
カレイ(鰈)は、
カレイ目カレイ科に分類される魚類の総称、
である(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%82%A4)。
日本では、
左ヒラメに右カレイ、
といって区別するが、例外が多く、
目の付き方、
が異なり、ヒラメは、
目が埋まったように付いており、上を見ることが得意な付き方をしています、
カレイは、
少し飛び出たように目がついており、キョロキョロと周囲を見渡すことができるようになっています、
とある(https://tsurinews.jp/45688/)。
なお、「ヒラメ」、「カレイ」については触れたことがある。
(「比」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%AF%94より)
「比」(漢音呉音ヒ、呉音ビ)は、
会意文字。人が二人くっついて並んだことを示すもの、
とあり(漢字源)、同趣旨で、
会意。人がふたり並んでいるさまにより、「ならぶ」、ひいて「くらべる」意を表す(角川新字源)、
会意文字です。「人が二人並ぶ」象形から、、「ならぶ」を意味する「比」という漢字が成り立ちました(https://okjiten.jp/kanji867.html)、
等々とあるが、この根拠となる、『説文解字』では、
人が二人並んだ形で「从」を左右反転させた文字であると解釈されているが、甲骨文字から現代に至るまで「人」字と「匕」字は一貫して形状が異なるため、この分析は誤りである、
とあり(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%AF%94)、
形声。音符「匕 /*PI/」を二つ並べた文字[字源 1]。「ならぶ」「ならべる」を意味する漢語{比 /*piʔ/}を表す字。のち仮借して「くらべる」を意味する漢語{比 /*pis/}に用いる、
とする(仝上)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
簡野道明『字源』(角川書店)
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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