2024年04月01日
桑田碧海
節風風光不相待(節風風光、相待たず)
桑田碧海須臾改(桑田碧海、須臾にして改まる)(盧照鄰。長安古意)
の、
桑田碧海(そうでんへきかい)、
は、
麻姑という仙女が王方平という仙人と宴会をしたとき、「この前お会いしてから、東の海が桑畑に変わり、また海になったのを三度みました」と語ったという故事にもとづく。人の世の変転のはげしいことにたとえる、
とある(前野直彬注解『唐詩選』)。
桑田碧海、
は、
桑田変成碧海、
つまり、
桑田変じて碧海となる、
意で、
已見松柏摧為薪、更聞桑田変成海(劉廷芝)、
獨往不可羣、滄海成桑田(儲光義)、
等々漢詩でしばしば見かけ、
滄桑之変(そうそうのへん)、
滄海桑田(そうかいそうでん)、
桑海之変(そうかいのへん)、
桑田滄海(そうでんそうかい)、
陵谷遷易(りょうこくせんえき)、
陵谷之変(りょうせんのへん)、
等々とも言い(字源)、
陵谷遷易(りょうこくせんえき)、
の、
遷易、
は、
天道有遷易、人理無常全(陸機)、
と、
移り変わる、
意で、
陵谷易處、
というと、
陵谷易處、列星失行(漢書)、
と、
高下其の位をかえ、尊卑その順序を失う、
義になる(仝上)。
また、すこし時間のスケールが小さくなるが、
古墓鋤為田、松柏摧為薪、白楊多悲風、蕭蕭愁殺人(文選)、
の、
古墓鋤かれて田と為り松柏摧かれて薪(たきぎ)となる、
というのも同じ意味になる(故事ことわざの辞典)。
桑田碧海、
の元は、晋代の「神仙伝」にあり、
漢の桓帝の時代、神仙の王遠とともに麻姑が蔡経の家に降臨し、そこで宴会を開き神仙世界のことを語った、
という記事が見え、麻姑(まこ)の言葉の中で、
以前お会いしてから、すでに東の海が干上がって桑畑になり、また海に戻るのを三度見ました、
とある(四字熟語を知る辞典)のによる。
麻姑(まこ)、
は、
その容姿は歳の頃18、19の若く美しい娘で、鳥のように長い爪をしている、
という(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%BB%E5%A7%91)。蔡経は、その爪をみて、
長爪の仙女。「まごの手」は麻姑の手。〔太平広記、六十、麻姑〕姑は鳥爪なり。經之れを見て、心中に念言す。背の大いに癢(かゆ)き時、此の爪を得て以て背を爬(か)かば、當(まさ)に佳なるべし、
と(字通)思う。この結果、王遠に背を鞭で打たれることになるのだが、この、
麻姑の手、
が、転じて、
孫の手、
となったとされる(世界大百科事典・精選版日本国語大辞典)所以である。
「碧」(漢音ヘキ、呉音ヒャク)は、
会意兼形声。「玉+石+音符白(ほのじろい)」。石英のようなほの白さが奥にひそむあお色。サファイア色、
とある(漢字源)。別に、
形声文字、音符「珀」+ 「石」(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%A2%A7)、
形声。石と、玉(王は省略形。たま)と、音符白(ハク)→(ヘキ)とから成る(角川新字源)、
会意兼形声文字です(王(玉)+白+石)。「3つの玉を縦の紐で貫き通した」象形(「玉」の意味)と「頭の白い骨又は、日光又は、どんぐりの実」の象形(「白い、輝く」の意味)と「崖の下に落ちている石」の象形(「石」の意味)から、「輝きのある玉のような石」を意味する「碧」という漢字が成り立ちました(https://okjiten.jp/kanji2357.html)、
等々ともある。
参考文献;
簡野道明『字源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95