2024年04月28日
吹毛
烏孫腰間佩两刀(烏孫(うそん) 腰間に两刀を佩(お)ぶ)
刃可吹毛錦為帯(刃(やいば)は毛を吹く可く錦を帯と為す)(李頎・崔五丈図屏風各賦一物得烏孫佩刀)
の、
吹毛、
は、
刃の上に毛をふきつけると、毛が二つに切れて落ちる、刃の鋭いことをいう。吹毛の剣という名の名刀もある、
と注記がある(前野直彬注解『唐詩選』)。
吹毛(すいもう)、
は、文字通り、
毛を吹くこと、
で、
きわめてたやすいことのたとえ、
にいい(精選版日本国語大辞典)、
吹毛の咎、
で触れたように、
をりふしにつけては、吹毛の咎を争うて、讒を構ふること休む時なし(太平記)、
関白為汝猶有不快御気色。毎事似可有吹毛。能々可用心云々(「春記」(参議兼春宮権大夫藤原資房(1007~57)の日記)長暦二年(1038)一二月一二日)、
などと、
毛を吹いて隠れた疵(きず)を探す、
意から、
無理に欠点をさがすこと、
また、
他人の弱点をあばいて、かえって自分の欠点をさらけだすこと、
の意で使い、これは、
毛を吹いて疵を求める、
とか、
毛を吹いて過怠の疵を求む、
などという諺の、
毛を吹いて隠れた疵を求める、
つまり、
好んで人の欠点を指摘する、
あるいは、
他人の弱点を暴いて、かえって自分の欠点をさらけ出す、
意から来ていて(故事ことわざの辞典)、
吹毛求疵(すいもうきゅうし)、
吹毛之求(すいもうのもとめ)、
洗垢索瘢(せんこうさくはん)、
披毛求瑕(ひもうきゅうか)、
等々という四文字熟語ともなっている(新明解四字熟語辞典)。出典は、
不吹毛而求小疵、不洗垢而察難知(韓非子)、
とある(故事ことわざの辞典)。この意味の、
吹毛(すいもう)、
は、だから、
あらさがし、
の意である(広辞苑)。しかし、
吹毛、
は、
吹毛の剣、
の略ともされ、
吹きかけた小さな毛をも切る剣、
の意から、
吹毛の剣を提示し、虚空を載断す(太平記)、
と、
非常に鋭利な剣、
よく切れる剣、
利剣、
の意でもあり、略して、
吹毛、
ともいう(精選版日本国語大辞典・岩波古語辞典・広辞苑)。
「吹」(スイ)は、「吹毛の咎」で触れたように、
会意。「口+欠(人の体をかがめた形)」。人が体を曲げて口から息を押し出すこと、
とある(漢字源)。別に、
「口」と「欠(あくび)」から構成され、口から息を吐くことを表す(説文)、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%90%B9)、
口と、欠(けん)(大きく口を開けたさま)とから成り、大きく息をはく意を表す、
ともある(角川新字源)。
「毛」(慣用モ、漢音ボウ、呉音モウ)は、
象形。細かいけを描いたもので、細く小さい意を含む、
とある(漢字源)。
参考文献;
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95