2024年05月25日

思ひ寝


君をのみ思ひ寝に寝し夢なればわが心から見つるなりけり(古今和歌集)、

の、

思ひ寝、

は、

人を思いながら寝ること、

で、ここは、

「思ひ」に、「君をのみ思ひ」と「思ひ寝」とが重なる、

とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。

思ひ寝、

は、確かに、文字通り、

思い続けながら寝ること(学研全訳古語辞典)、
物を思いながら寝ること(精選版日本国語大辞典)、
人を思ひつつ寝ること(大言海)、

ではあるが、上記の、

君をのみ思ひ寝に寝し夢なればわが心から見つるなりけり(古今和歌集)、

や、

思ひ寝の夜な夜な夢に逢ふ事をただ片時のうつつともがな(後撰和歌集)、

というように、多く、

恋しい人のことを思いながら眠る場合に用いられる、

ので、

人を恋しく思いながら寝ること、

というのが正確のようだ(岩波古語辞典・精選版日本国語大辞典)。

似た歌に、新古今和歌集の、

物をのみ思ねざめの枕には涙かからぬあかつきぞなき(源信明)、

があり、

「物をのみ思ひ」から「思ひ寝」(あることを思いつめながら寝ること)へ、さらに「寝覚め」へと言葉を連鎖させる、

と注釈されている(久保田淳訳注『新古今和歌集』)。この、

思寝覚(おもいねざめ)、

は、

思ひ寝、

から覚めることをいう。

なお、「通ひ路」については触れた。

「寢」.gif


「寝(寢)」(シン)は、「寝(い)を寝(ぬ)」で触れたように、

会意兼形声。侵は、次第に奥深く入る意を含む。寝は、それに宀(いえ)を加えた字の略体を音符とし、爿(しんだい)を加えた字で、寝床で奥深い眠りに入ること、

とある。同趣旨で、

会意兼形声文字です(宀+爿+侵の省略形)。「屋根・家屋」の象形と「寝台を立てて横にした」象形と「ほうき」の象形(「侵」の略字で、人がほうきを手にして、次第にはき進む事から、「入り込む」の意味)から、家の奥にあるベッドのある部屋を意味し、そこから、「部屋でねる」を意味する「寝」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji1262.htmlが、別に、

形声。意符㝱(ぼう、む)(〈夢〉の本字。ゆめ。は省略形)と、音符𡩠(シム)(𠬶は省略形)とから成る。清浄な神殿・神室の意を表したが、古代には貴人の病者は神室に寝たことから、ねやの意に転じた。常用漢字は省略形による、

ともある(角川新字源)。

参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 03:07| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする