2024年05月28日

浅み


浅みこそ袖はひつらめ涙川身さへ流ると聞かばたのまむ(古今和歌集)、
よるべなみ身をこそ遠くへだてつれ心は君が影となりにき(仝上)

の、前者の、

浅み、

は、

浅しの語幹に接尾語「み」がついた形で、理由を表す。相手の気持ちの浅さと涙川の浅さの両義、

後者の、

よるべなみ、

は、

「無し」の語幹に、理由を表す接尾語「み」がついた形、

とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。

若の浦に潮満ち来れば潟をなみ岸辺をさして鶴鳴きわたる(万葉集)、

の、

なみ、

も同じである。接尾語、

み、

には、

春の野の繁み飛び潜(く)くうぐひすの声だに聞かず娘子(をとめ)らが春菜摘ますと(万葉集)、

と、

形容詞の語幹に付いて体言をつくり、その状態を表す名詞を作る、

ものがあり、この場合、

浅み、

は、

深み、

と対になる(岩波古語辞典・学研全訳古語辞典)。これは、

明るみ、
高み、
繁み、

のように、

明けされば榛(はり)のさ枝に夕されば藤の繁美(しげミ)にはろばろに鳴くほととぎす(万葉集)、

と、

そのような状態をしている場所をいう場合と、今日でも使う、

真剣みが薄い、
面白みに欠ける、

のように、

その性質・状態の程度やその様子を表わす場合とがある(精選版日本国語大辞典)。また、

道の後(しり)古波陀(こはだ)をとめは争はず寝しくをしぞもうるはし美(ミ)思ふ(古事記)、

というように、形容詞の語幹に付いて、後に、動詞「思ふ」「す」を続けて、感情の内容を表現する、

ものなどがあるが、上記の、

浅み、

の、

み、

は、

若の浦に潮満ち来れば潟(かた)を無み葦辺(あしへ)をさして鶴(たづ)鳴き渡る(万葉集)、

と、

形容詞の語幹、および助動詞「べし」「ましじ」の語幹相当の部分に付いて、

(…が)…なので、
(…が)…だから、

と、

原因・理由を表す(学研全訳古語辞典)。多く、

上に「名詞+を」を伴うが、「を」がない場合もある、

とある(仝上)。この、

み、

は、従来、

接尾語、

として説かれているが、

瀬を早み、
風をいたみ、

などと使われる「み」は、その機能から見て、

接続助詞、

と考えたいとする説もある(岩波古語辞典)。

「浅」.gif


「淺」.gif

(「淺」 https://kakijun.jp/page/9FC7200.htmlより)

「浅(淺)」(セン)は、

会意兼形声。戔(セン)は、戈(ほこ)二つからなり、戈(刃物)で切って小さくすることを示し、小さく、少ない意を含む。淺は、「水+音符戔」で、水が少ないこと、

とあり(漢字源)、

会意兼形声文字です(氵(水)+戔)。「流れる水」の象形(「水」の意味)と「矛を重ねて切りこんでずたずたにする」象形(「薄く細かに切る」の意味)から、うすい水を意味し、そこから、「あさい」を意味する「浅」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji167.htmlが、

形声。「水」+音符「戔 /*TSAN/」。「あさい」を意味する漢語{淺 /*tshanʔ/}を表す字(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%B7%BA

形声。水と、音符戔(セン)とから成る。「あさい」意を表す。教育用漢字は省略形の俗字による(角川新字源)、

と、形声文字とする説もある。

参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:18| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする