2024年06月20日
もがな
ありはてぬ命待つ間のほどばかりうき事繁く思はずもがな(古今和歌集)、
わがごとくわれを思はむ人もがなさてもやうきと世をこころみむ(古今和歌集)、
の、
もがな、
は、
……があれば(であれば)よい、
という願望を表す助動詞(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』、高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)とあるが、
もがな、
は、
終助詞「もが」+終助詞「な」、
で、奈良時代の、
もがも、
の転、
もがも、
は、
終助詞「もが」+終助詞「も」、
で、
終助詞モガに更にモを後に加えた語、
で(岩波古語辞典)、
(終)助詞、
とされ(仝上・広辞苑・デジタル大辞泉)。
体言、形容詞の連用形、副詞などの連用部分につき、その受ける語句が話し手の願望の対象であること、
を表し(広辞苑)、
君が行く道の長手を繰りたたね焼き亡ぼさむ天の火もがも(万葉集)、
と、
……が欲しい、
意や、
天橋(あまはし)も長くもがも高山(たかやま)も高くもがも月(つく)夜見の持てるをち(變若)水い取り来て君に奉(まつ)りてをち(變若)得てしかも(万葉集)、
と、
……でありたい、
意で使う(仝上)。この、
もがも、
が、平安時代、終助詞の、
モ、
が、
ナ、
に代えられて使われ、
末において体言・形容詞や打消および断定の助動詞の連用形・格助詞「へ」などを受け、その受ける語句が話し手の願望の対象であること、
を表わし(精選版日本国語大辞典・広辞苑)、
かくしつつとにもかくにも永らへて君が八千代にあふよしもがな(古今和歌集)、
と、
……が欲しい、
意や、
世の中にさらぬ別れのなくもがな千代(ちよ)もと祈る人の子のため(古今和歌集)、
と、
……でありたい、
意で使う(岩波古語辞典)。成立に関しては一般に、
願望を表わす「もが」に感動を表わす「な」の付いたもの、
とするが、中古、
もがな、
が、
も哉、
とも表記されたこと、また、
をがな、
の形、さらには、
がな、
の形も用いられていることなどから、当時「も‐がな」の分析意識があったと推測される(精選版日本国語大辞典)とある。
参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95