布帆無恙

霜落荊門江樹空(霜は荊門(けいもん)に落ちて江樹(こうじゅ)空し) 布帆無恙挂秋風(布帆(ふはん)恙無(つつがな)く 秋風に挂(か)く) 此行不爲鱸魚鱠(此の行(こう) 鱸魚(ろぎょ)の鱠(なます)の為ならず) 自愛名山入剡中(自(みずか)ら名山(めいざん)を愛して剡中(せんちゅう)に入(い)る)(李白・秋下荊門) の、 布帆無恙(ぶよう)、 の、 布帆(ふはん…

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玉箒(たまはばき)

初春(はつはる)の初子(はつね)のけふの玉箒(たまばはき)手に取るからにゆらぐ玉の緒(読人知らず)、 の、 玉箒、 は、 玉を飾りにつけた箒、 で、 玉箒、 の、 タマ、 は、「玉の緒」の「タマ」と同じく、 魂、 で、 タマを掃き寄せる道具、 の意(岩波古語辞典)、 后が養蚕をする際に用いるものとされ、初子の…

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白眼

綠樹重陰蓋四鄰(緑樹(りょくじゅ)重陰(ちょういん) 四隣(しりん)を蓋(おお)う) 青苔日厚自無塵(青苔(せいたい) 日に厚うして自(おの)ずから塵(ちり)無し) 科頭箕踞長松下(科頭(かとう)にして箕踞(ききょ)す 長松(ちょうしょう)の下(もと)) 白眼看他世上人(白眼(はくがん)もて看る 他の世上の人)(王維・与盧員外象過崔処士興宗林亭) の、 崔処士、 の、…

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小忌衣(をみごろも)

ゆふだすき千歳をかけて足引の山藍の色は変らざりけり(新古今和歌集)、 の、 ゆふだすき、 は、 木綿でつくった襷、 で、 神事をおこなうときにかける、 とある(久保田淳訳注『新古今和歌集』)。 山藍の色、 は、 神事に着る小忌衣を染める山藍の青い色、 を言い、 青摺(あをずり)、 というとある(仝上)。 青摺…

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罟師(こし)

楊柳渡頭行客稀(楊柳(ようりゅう)の渡頭(ととう) 行客(こうかく)稀なり) 罟師盪槳向臨圻(罟師(こし) 槳(かい)を盪(うご)かして臨圻(りんき)に向う) 唯有相思似春色(唯だ相思(そうし)の春色(しゅんしょく)に似たる有りて) 江南江北送君歸(江南(こうなん)江北(こうほく) 君が帰るを送る)(王維・送沈子福之江南) の、 楊柳渡頭、 は、 楊柳の渡し場の…

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轅門(えんもん)

日落轅門鼓角鳴(日落ちて轅門(えんもん) 鼓角(こかく)鳴り) 千群面縛出蕃城(千群(せんぐん)面縛(めんばく)して蕃城を出(い)ず) 洗兵魚海雲迎陣(兵を魚海に洗えば 雲 陣を迎え) 秣馬龍堆月照營(馬を竜堆(りようたい)に秣(まぐさか)えば 月 営を照らす)(岑参・封大夫破播仙凱歌二) の、 面縛、 とは、 後ろ手にしばること、 をいい、特に、 …

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大幣(おほぬさ)

大幣の引く手あまたになりぬれば思へどえこそたのまざりけれ(古今和歌集)、 の、 え、 は、 打消しの表現と呼応して、 とても……できない、 の意(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)、 大幣、 は、 国の大奴佐(おほヌサ)を取りて生剥(いきはぎ)・逆剥(さかはぎ)……牛婚(うしたはけ)・鶏婚(とりたはけ)・犬婚(いぬたはけ)の罪の類を国の大祓…

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竜鐘(りゅうしょう)

故園東望路漫漫(故園 東望(とうぼう)すれば路(みち)漫漫(まんまん)たり) 雙袖龍鍾淚不乾(双袖(そうしゅう)竜鍾(りゅうしょう)として涙乾かず) 馬上相逢無紙筆(馬上相逢(お)うて紙筆(しひつ)無し) 憑君傳語報平安(君に憑(よ)って伝語(でんご)して平安を報ぜん)(岑参・逢入京使) の、 故園、 は、 故郷のわが家、 で、 作者の郷里は河南省南…

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山かづら

すべらぎをときはかきはにもる山の山人ならし山かづらせり(新古今和歌集)、 の、 ときはかきはに、 は、 永久不変に、 の意、 山かづら、 は、 山鬘、 山蔓、 と当て、 ヒカゲノカズラで結ったカズラ、 をいい、 神事に用いた、 とある(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。ただ、 マサキノカヅラ(真拆葛)にて結ひ…

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月草

いで人は言のみぞよき月草のうつし心は色ことにして(古今和歌集)、 の、 月草、 は、 露草、 のこと(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)、 月草で染めた衣は色変わりしやすいので、「うつし心」などの枕詞となる、 とある(仝上)。 (「露草」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%83%A6%E3%…

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姑射山(こやのやま)

羨爾城頭姑射山(羨(うらや)む 爾が城頭(じょうとう)姑射(こや)の山)(李頎・寄韓鵬) の、 姑射(こや)の山、 は、 今の山西省臨汾・襄陵のあたりにそびえる山。「荘子」逍遥遊篇に、 藐姑射(はこや)の山に仙人が住むとあり、この山がそれだと言い伝えられる、 とある(前野直彬注解『唐詩選』)。 「藐姑射」で触れたことだが、 藐姑射(はこや)、 …

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蓬(ほう)

薊庭蕭瑟故人稀(薊庭(けいてい)蕭瑟(しょうしつ)として故人稀なり) 何處登高且送歸(何れの処(ところ)か高きに登りて且(しばら)く帰るを送らん) 今日暫同芳菊酒(今日(こんにち)暫(しばら)く同(とも)にす 芳菊(ほうぎく)の酒) 明朝應作斷蓬飛(明朝(みょうちょう)は応(まさ)に断蓬(だんぽう)と作(な)って飛ぶべし)(王之渙・九日送別) の、 断蓬、 の、 …

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玉鉾

玉鉾(たまほこ)の道は常にもまどはなむ人をとふともわれかと思はむ(古今和歌集)、 の、 玉鉾(たまほこ)、 は、 道にかかる枕詞、 で、一般に、 たまぼこ、 と訓まれるが、この時代は、まだ、 たまほこ、 であろう(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)とある。 たまほこ、 は、 玉鉾、 玉桙、 玉矛、 等々と当て、 …

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何せむに

逢ふまでの形見もわれは何せむに見ても心のなぐさまなくに(古今和歌集)、 の、 何せむに、 は、もともとは、 何せむに命継(つ)ぎけむ我妹子(わぎもこ)に恋ひざる先(さき)に死なましものを(万葉集)、 と、 何をするために、 の意。そこから、 何せむに命をかけて誓ひけむいかばやと思ふ折もありけり(拾遺集)、 と、 何になろうか、 何…

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寒食

春城無處不飛花(春城(しゅんじょう) 処(ところ)として花を飛ばさざるは無し) 寒食東風御柳斜(寒食(かんしょく)東風(とうふう) 御柳(ぎょりゅう)斜めなり) 日暮漢宮傳蠟燭(日暮(にちぼ) 漢宮(かんきゅう) 蠟燭を伝え) 靑煙散入五侯家(青煙(せいえん)散じて五侯(ごこう)の家に入(い)る)(韓翃・寒食) で、 寒食、 は、 春のおとずれをつげるもので、こ…

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ひさかたの

ひさかたの天つ空にも住まなくに人はよそにぞ思うべらなく(古今和歌集)、 の、 天つ空、 は、 遠く離れた場所、 の意(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)、 ひさかたの、 は、 「あめ(天)」「あま(天)」「そら(空)」にかかる枕詞、 だが、転じて、 さよふけてまなかばたけゆくひさかたの月吹きかへせ秋の山風(古今和歌集)、 ひさかたの…

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騂弓(せいきゅう)

三戍漁陽再度遼(三たび漁陽(ぎょよう)を戍(まも)って再び遼(りょう)を度(わた)る) 騂弓在臂箭橫腰(騂弓(せいきゅう)は臂(ひじ)に在り 剣(つるぎ)は腰に横たわる) 匈奴似欲知名姓(匈奴は名姓(めいせい)を知れるが若(ごと)きに似たり) 休傍陰山更射鵰(陰山(いんざん)に傍(そう)て更に鵰(ちょう)を射るを休(や)めよ)(張仲素・塞下曲一) の、 騂弓、 は、 …

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劉郎(りゅうろう)

紫陌紅塵拂面來(紫陌(しはく)の紅塵(こうじん) 面を払って来(きた)る) 無人不道看花回(人の花を看て回(かえ)ると道(い)わざるは無し) 玄都觀裏桃千樹(玄都(げんと)観裏(かんり) 桃千樹) 盡是劉郎去後栽(尽(ことごと)く是れ劉郎(りゅうろう)去って後(のち)に栽(う)えしなり)(劉禹錫(りゅう うしゃく)・元和十一年自朗州至京戯贈看花諸君子) の、 劉郎、 …

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日本的感性のモデル

前野直彬注解『唐詩選』を読む。 唐詩選は、 五言古詩14首、 七言古詩32種、 五言律詩7首、 五言背律40首、 七言律詩73首、 五言絶句74首、 七言絶句165首、 の、計465首を選んでいる。しかし、 偽書、 とされる。編者の、 李攀竜、 ではなく、彼の名を騙った真っ赤な偽物、とされる。にもかかわらず、日本では、江戸時代の、…

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琪樹

琪樹西風枕簟秋(琪樹(きじゅ)の西風(せいふう) 枕簟(ちんてん)秋なり) 楚雲湘水憶同遊(楚雲(そうん) 湘水(しょうすい) 同遊(どうゆう)を憶(おも)う) 高歌一曲掩明鏡(高歌(こうか)一曲 明鏡(めいきょう)を掩(おお)う) 昨日少年今白頭(昨日(さくじつ)の少年 今は白頭(はくとう))(許渾・秋思) の、 枕簟(ちんてん)、 は、 簟(てん)は竹を編ん…

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