2024年07月25日

虎溪三笑


虎溪閒月引相過(虎渓(こけい)の間月(かんげつ) 引いて相過ぎ)
帶雪松枝掛薜蘿(雪を帯ぶる松枝(しょうし) 薜蘿(へいらく)を掛く)
無限靑山行欲盡(無限の青山(せいざん) 行く盡きんとす)
白雲深處老僧多(白雲深き処 老僧多し)(釈霊一・僧院)

の、

虎溪、

は、

江西省廬山の東林寺の境内にある川、

をいい、晋の名僧慧遠(えおん)が東林寺に住み、来客があっても、俗界禁足と、川の手前までしか送らなかった。ある日、陶淵明(とうえんめい)と陸修静の二人が寺を訪れ、辞去するときに、慧遠は思わず話に身が入って、虎溪を渡ってしまった。そこで気づき、三人は顔を見合わせた、

という、

虎溪の三笑、

の故事として有名である(前野直彬注解『唐詩選』)。

廬山,.jpg


虎溪三笑(こけいさんしよう)、

は、

三笑、

ともいう(広辞苑)。出典は、宋代の、

廬山記(ろざんき)、

で、日本で元禄十年(1697)に日本版『廬山記』が刊行されたが、『〔宋版〕廬山記』に附された地図がない代わりに、

「廬山」にまつわるエピソードを描いた挿し絵が収録されています、

とあるhttps://www.archives.go.jp/exhibition/digital/rekishihouko/h27contents/27_1040.html

廬山、

は、

中国の江西省九江市の南に位置し、景勝地として有名で、宋版「廬山記」(陳舜兪)は、「廬山」の観光案内書で、南宋の紹興年間(1131~1163)に刊行された。陳舜兪は、

廬山の名所旧跡を訪れて見聞記を著し、廬山に関する資料と合わせて、全5巻の観光案内記にまとめました、

とあるhttps://www.archives.go.jp/exhibition/digital/rekishihouko/h27contents/27_1010.html

慧遠(えおん 334~416)、

は、東晋(とうしん)の仏僧。浄土宗の祖師と称され、

蘆山(ろさん)の慧遠、

といわれる。

慧遠(えおん).jpg


陶淵明(とう えんめい 365~427)、

は、六朝時代の東晋末~南朝宋初の詩人。陶淵明については、「帰去来」で触れた。

陶淵明.jpg


陸修静(りくしゅうせい 406~477)、

は、

劉宋時代の道士。字は元徳、号は簡寂先生。

虎渓三笑図屏風.jpg

(虎渓三笑図屏風(曽我蕭白) http://www.iwanami-art.jp/knowledge/trad/kokeisanshoより)

『後素説』に曰く、

戯放禅月作、遠公詠并序、遠法師居廬山下持律精苦過中不受密湯、而作詩換酒、飲陶彭沢、送客無貴賎、不過虎渓而与陸道士行、過虎渓数百歩、大笑而別、故禅月作詩云、

愛陶長官酔兀々、送陸道士、行遅置酒、過渓皆破戒、期何人期師如期故効之、邀陶淵明把酒椀、送陸修静、過虎渓、胸次九流清似鏡、人間万事酔如泥、

註云、禅月師名貫休其詩見於集中、陳舜兪廬山記曰、遠師送陶元亮陸修静不覚過虎渓、因相与大笑、今世伝三笑図蓋起於比、又云、陳舜兪廬山記曰、簡寂観宋陸先生之隠居、隠居名修静、明帝召至闕、設崇虚館通仙堂、以待之、仍会儒釈之士講道於荘厳仏寺、

とある(https://www.arc.ritsumei.ac.jp/opengadaiwiki/index.php/%E8%99%8E%E6%B8%93%E4%B8%89%E7%AC%91)

虎渓三笑、

は、

三酸吸聖、

に通じる、

仏教(慧遠)・儒教(陶淵明)・道教 (陸修静)の一致、

つまり真理はひとつということを暗示しているされ、

禅味豊かなるを以て従来画材となる、

(https://www.arc.ritsumei.ac.jp/opengadaiwiki/index.php/%E8%99%8E%E6%B8%93%E4%B8%89%E7%AC%91)ある。

虎渓三笑図(こけいさんしょうず).jpg

(虎渓三笑図(こけいさんしょうず)(啓孫 室町時代) https://ch.kanagawa-museum.jp/monthly_choice/2019_12より)

ちなみに、

三酸吸聖(さんさんきゅうさん)、

は、

三酸図、

ともいい、

三聖図(さんせいず)、
三教図、
三教聖人図、
吸酢三教図、
三聖吸酸の図(さんせいきゅうさんのず)、

等々の呼び方もある、、

儒の蘇武、道教の黄庭堅、仏教の佛印の三者が、桃花酸を共になめて眉を顰める図、

で、

三教の一致、

を諷するものとされる(広辞苑)。

孔子、老子、釈尊、

を描くこともある(仝上)。

三酸図屏風.jpg

(三酸・寒山拾得図屏風(海北友松) 六曲一双、左隻三酸図、右隻寒山拾得図である https://j-art.hix05.com/16.3.kaiho/kaiho09.sansan.htmlより)

なお、能の演目にも「三笑」というものがありhttp://www.tessen.org/dictionary/explain/sansyo、ストーリーは同じである。

参考文献;
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:48| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする