2024年08月07日
はつか
跡をだに草のはつかに見てしかな結ぶばかりのほどならずとも(新古今和歌集)、
の、
はつか、
は、
僅か、
と当て、
わずか、
いささか、
の意とある(広辞苑)。
はつか、
の、
はつ、
は、
ハツ(初)と同根(岩波古語辞典)、
「はつはつ」と同語源で、「か」は接尾語(精選版日本国語大辞典)、
とあるが、
はつはつ、
は、
ハツ(初)と同根、
とあり(岩波古語辞典)、同じことを言っているようである。
はつはつ、
は、
波都波都(ハツハツ)に人を相見ていかにあらむいづれの日にかまたよそに見む(万葉集)、
と、
あることが、かすかに現われるさま、
ちょっと行なわれるさま、
の意で、副詞的にも用い、
ほんのちらっと、
の意で、
はつか、
と同義(精選版日本国語大辞典)とある。
はつか、
は、
春日野の雪間をわけて生ひいでくる草のはつかに見えし君はも(古今和歌集)、
と、
物事のはじめの部分がちらりと現われるさま、
瞬間的なさま、
かすか、
ほのか、
の意で、特に、
視覚や聴覚に感じられる度合の少ないさまを表わす、
とある(仝上・岩波古語辞典)。それが、時間的な表現にシフトして、
今宵の遊びは長くはあらで、はつかなるほどにと思ひつるを(源氏物語)、
と、少しの時間であるさまの、
しばらくの間、
ちょっと、
の意で使い(仝上)、その、
少し、
を、
わずか(僅か)、
と混同して、量的にシフトさせ、
其勢はつかに十七騎(平家物語)、
と、分量の少ないさまの、
ほんの少し、
わずか、
の意で用いるに至る(仝上)。
ハツ、
は、事物の周縁部を意味する語ハタ(端)と母音交替の関係にあるものか。上代にはハツカの例は見出せないが、ハツカと共通の形態素を持ち、意味的にも関連性が認められるハツハツが視覚に関して使用されることが多いという傾向が認められるので、ハツカの原義は、物事の末端を視覚的にとらえたさまを表わすところにあったと推測される。この点で、物事の分量的な少なさを表わすワヅカとの意味上の差異は明確であるが、後世には両語を混同して用いることも多くなる、
とある(精選版日本国語大辞典)。
「僅」(漢音キン、呉音ゴン)は、
会意兼形声。堇(キン)は、火の上で動物の皮革をかわかすさまを示す会意文字。もと乾(カン)・艱(カン ひでり)と同系で、かわいて水分がとぼしくなることから、ほとんどないの意に転じ、わずかの意となる。僅はそれを音符とし、人をそえた字で、ほとんどない、わずかの意を含む、
とある(漢字源)が、
形声。「人」+音符「堇 /*KƏN/」。「わずか」を意味する漢語{僅 /*ɡrəns/}を表す字、
も(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%83%85)、
形声。人と、音符堇(キン)とから成る。才能がおとっている意を表す。転じて「わずか」の意に用いる、
も(角川新字源)、
形声文字です(人+菫)。「横から見た人」の象形と「腰に玉を帯びた人の象形(「黄色」の意味)と土地の神を祭る為に、柱状に固めた土の象形」(「黄色のねば土」の意味だが、ここでは、「斤(キン)・巾(キン)」に通じ、「小さい」の意味)から、才能の劣る人の意味を表し、そこから、「わずか」、「少し」を意味する「僅」という漢字が成り立ちました、
も(https://okjiten.jp/kanji2094.html)、形声文字とする。
参考文献;
久保田淳訳注『新古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95