2024年08月24日

みあれ


いにしへのあふひと人は咎むともなほそのかみのけふぞ忘れぬ(実方朝臣)、

の、詞書に、

はやう物申しける女に、枯れたる葵をみあれの日つかはしける、

とある、

葵、

は、

賀茂葵、

を指し、

みあれの日、

は、

賀茂祭(陰暦四月中の酉の日)の前に神招(お)ぎの神事が行われる中の午の日、

とある(久保田淳訳注『新古今和歌集』)。

賀茂神社、

は、

山城国の一宮、

の、

賀茂別雷神社(上賀茂社)と賀茂御祖神社(下賀茂社)、

の総称としていう(仝上)。賀茂祭については、「齋院」、「返さの日」で触れた。

みあれ、

は、

御生、
御阿礼、

と当て、一般には、

神または貴人が誕生・降臨する、

意だが、

御生、

は、

賀茂の御生(みあれ)、
御阿礼祭、

ともいい、

上賀茂神社で、葵祭の前三日、すなわち四月の中の午の日(現在は五月十二日)の夜に、行われる祭、

で、

阿礼と称する榊に神移しの神事をいとなむ、

とある(広辞苑)。

中の午の日、

とは、

中、

は、

2回目の申の日、

の意で、ひと月に午の日は2~3回あり、

1回目が「初」、2回目が「中」、3回目が「晩」、

とよぶhttps://www.city.minamisoma.lg.jp/portal/sections/61/6150/61503/study/1/nomaoi/25431.html

上賀茂御生祭.jpg

(上賀茂御生祭(都年中行事画帖) https://lapis.nichibun.ac.jp/gyouji/gyouji_52.htmlより)

この、旧暦4月の中の午の日に、賀茂別雷(かもわけいかずち 上賀茂)神社で行われる、

御阿礼神事(みあれしんじ)、

は、古来の、

御阿礼木に祭神別雷神を移す、

という(岩波古語辞典)、

神迎えの神事、

で、

神社の北西約880mの御生野(みあれの)という所に祭場を設け、ここで割幣をつけた榊に神を移す神事を行い、これを本社に迎える祭り、

であり、

祭場には、720cm四方を松、檜、賢木(さかき)などの常緑樹で囲んだ、特殊の神籬(ひもろぎ)を設け、その前には円錐形の立砂一対を盛る。この神籬前庭では修祓(しゆばつ)ののち奉幣行事を行い、葵桂を挿頭(かざし)にし、饗饌の儀(献の式)をして、手水をつかい、灯火を消し、矢刀禰(やとね 神職)5員がそれぞれ榊をもって立砂を3周し、神移しを行う。これを本社に捧持する。本社では、開扉して葵桂を献じ、祝詞を奏して閉扉する、

と、

神の出現・再現を感受しようとする神事、

であるが、賀茂御祖(かもみおや 下賀茂)神社では、

御蔭祭(みかげまつり)、

と称する神迎えの神事がある(世界大百科事典)。

御蔭祭(みかげまつり)、

は、

比叡山麓の御蔭神社から神霊を本社に移す神事、

で、

下賀茂神社で、葵祭の三日前、四月の午の日の昼(現在は五月十二日)に、神職・氏子などが神輿に供奉して摂社御蔭神社に参向し、神体を迎えて本社に還る祭儀、

で(広辞苑・精選版日本国語大辞典)、

下鴨神社境内の「糺(ただす)の森」で、神に捧げる舞楽「東游(あずまあそび)」を奉納、

するhttps://www.asahi.com/articles/ASR5D764QR5DPLZB005.html

上賀茂神社(賀茂別雷神社).jpg

(通称「上賀茂神社」(賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)・楼門)  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B3%80%E8%8C%82%E5%88%A5%E9%9B%B7%E7%A5%9E%E7%A4%BEより)

みあれ、

の、

ミは接頭語、アレは出現の意、祭神の出現・降誕の縁となる物、

の意から転じて、

奉幣、

の意とある(岩波古語辞典)。

御生、

と当てるのは、

祭神、別雷神(ワケイカヅチ)命の生(ア)れましし日の義なりと云ふ、

という説もあるが、

據る所なし、

とか(大言海)。

斎宮(齋院)、

の異称を、

阿礼少女(あれをとめ)、

という(大言海)が、

あれをとめ、

は、

あれつくをとめの中略、

で、

奉仕女、

の意とする(仝上)。

あれつく、

は、

在得附(ありえつ)くの約(かかりあふ、かからふ)、ありつくの意なるべし、

とあり、

居つく、住みつく、落ち着く、

の意とする(仝上)。

なお、

賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)、

は、京都市北区上賀茂本山にある神社。通称は上賀茂神社(かみがもじんじゃ)。式内社(名神大社)、山城国一宮、二十二社(上七社)の一社。この地を支配していた古代氏族である賀茂氏の氏神を祀る神社として、賀茂御祖神社(下鴨神社)とともに賀茂神社(賀茂社)と総称される、

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B3%80%E8%8C%82%E5%88%A5%E9%9B%B7%E7%A5%9E%E7%A4%BE)

参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:44| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする