メタ歌

久保田淳訳注『新古今和歌集』を読む。 「斯の集の体たるや、先万葉集の中を抽き、更に七代集の外を拾ふ。深く索めて微長も遺すこと無く、広く求めて片善も必ず挙げたり。」 と、「序」で言うとおり、万葉集をはじめ、古今集から千載集までの七勅撰集のすぐれた歌1980句を選んでいる。しかも、 「和歌という形式の枠内で古典の伝統によって洗練された大和言葉の微妙な組み合わせにより、現…

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玉串

濡れて干す玉串の葉の霜露に天照る光幾代へぬらむ(摂政太政大臣)、 神風や玉串の葉を取りかざし内外(うちと)の宮に君をこそ祈れ(俊恵法師)、 の、 玉串、 は、 伊勢神宮で榊のことをいう、 とあり(久保田淳訳注『新古今和歌集』)、 榊の異称、 であるが、 五百箇(いおつ)真坂樹(まさかき)の八十玉籤(やそたまくし)を採らせ(日本書紀)、 …

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御衣木(みそぎ)

ちはやぶる香椎(かしひ)の宮のあや杉は神のみそぎに立てるなりけり(読人しらず)、 の、 みそぎ、 は、 御衣木、 と当て(久保田淳訳注『新古今和歌集』)、この、 あや杉、 は、 ちはやぶるかすひの宮のあや杉は幾代か神のみそぎなるなるらむ(桧垣嫗集) ちはやぶる香椎の宮の杉の葉をふたたびかざすわが君ぞ君(金葉集)、 と詠まれてきた杉(仝上…

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ことぐさ

山里に訪ひ来る人のことぐさはこの住まひこそうらやましけれ(前大僧正慈円) の、 ことぐさ(言種)、 は、 口癖、 言い草、 とある(久保田淳訳注『新古今和歌集』)。 ことぐさ、 は、 ことくさ、 ともいい(精選版日本国語大辞典)、 物言ひの種(くさ)はひ、 とある(大言海)。 種はひ(くさわい)、 は、 種…

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爛柯(らんか)

斧の柄の朽ちし昔は遠けれどありしにもあらぬ世をも経るかな(式子内親王) の、 斧の柄の朽ちし、 は、 述異紀などにいう爛柯(らんか)の故事、 とあり(久保田淳訳注『新古今和歌集』)、 仙境に入り込んだ木樵りの斧の柄がいつしか朽ちて、出てきたら遥か後の時代だったというように、以前とはすっかり変わってしまった世の中に永らえている、 と注釈する(仝上)。こ…

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夕占(ゆふけ)

あはなくに夕占(ゆふけ)を問へば幣(ぬさ)に散るわが衣手はつげもあへなくに(古今和歌集)、 の、 夕占、 は、 夕方におもに辻で行われる占い。自分が道行く人の話を聞いて行ったり、専門の占い師が行ったりするもの、 だが、 月夜(つくよ)には門(かど)に出(い)で立ち夕占(ゆうけ)問ひ足卜(あうら)をそせし行かまくを欲(ほ)り、 などと、万葉集に多く見ら…

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豊のあかり

美濃山に繁(しじ)に生いたる玉柏豊のあかりにあふがうれしさ(古今和歌集)、 の、 豊のあかり、 は、 新嘗祭や大嘗会の翌日の豊明の節会、 とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。 とよのあかり、 は、 豊の明かり 豊明、 等々と当て、 は、 五節の舞、 で触れたように、 豊は称辞なり、あかりは、御酒(みき)にて…

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石橋(せききょう)

持入天台路(天台の路(みち)に入らんと待つ) 看余渡石橋(余が石橋(せききょう)を渡るを看よ)(駱賓王(栄之間)・霊隠寺) の、 石橋、 は、 天台山にある、深い谷川にかけられた石橋の名、生死を超越した人でなければ、怖ろしくて渡れないという、 とある(前野直彬注解『唐詩選』)。 渡石橋、 で、 天台山の深い谷川にかけられた、幅が一尺にも満たな…

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しかすがに

風まぜに雪は降りつつしかすがに霞たなびき春は來にけり(新古今和歌集)、 の、 しかすがに、 は、 そうはいうものの、 の意(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)で、 かくしつつ暮れぬる秋と老いぬれどしかすがになほものぞかなしき(仝上)、 では、 そうではあるが、 さすがに、 の意だが、 古い語感の副詞、 とあり、この作者(能因)…

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暗投

暗投空欲報(暗投(あんとう) 空しく報ぜんと欲するも) 下調不成章(下調(かちょう) 章を成さず)(宋之問・和姚給事寓直之作) の、 下調、 は、 低く、いやしい調べ、 の意で、 自分の詩に対する謙遜の言葉、 とある(前野直彬注解『唐詩選』)。 暗投、 は、 漢の鄒陽(すうよう)が梁の孝王に送った手紙「獄中上梁王書」に、 明…

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角ぐむ

三島江や霜もまだひぬ蘆の葉に角(つの)ぐむほどの春風ぞ吹く(新古今和歌集)、 の、 角ぐむ、 は、 角のような芽を出す、 意、 蘆の芽はとがっているので錐や動物の角に喩えられる、 とある(久保田淳訳注『新古今和歌集』)。この歌の本歌は、 三島江に角ぐみわたる蘆の根のひとよのほどに春めきにけり(後拾遺・曾禰好忠)、 である(仝上)。 …

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