2024年12月02日
思草(おもひぐさ)
野辺見れば尾花がもとの思ひ草枯れゆく冬になりぞしにける(新古今和歌集)、
の、
思草、
は、
リンドウ、露草など諸説ある。すすきの根元にはえるという点を重視すれば、なんばんぎせるが最もふさわしい、
とある(久保田淳訳注『新古今和歌集』)。
道辺の尾花が下の思草(おもひぐさ)今さらになに物か思はむ(万葉集)、
と、
尾花が下の思草、
と詠われるところから、ススキなどの根に寄生する、
南蛮煙管(なんばんぎせる)、
と推定されている(精選版日本国語大辞典)が、他に、
リンドウの別称、
シオンの別称、
ススキの別名、
等々ともされ(動植物名よみかた辞典・岩波古語辞典)、
女郎花おなじ野べなるおもひ草いま手枕にひき結びてむ(「行宗集(1140頃)」)、
と、
おみなえし(女郎花)」の異名、
とも、
煙管にくゆる火も、……吹きて乱るる薄煙、空に消えては是もまた、行方も知らぬ相おもひぐさ(浄瑠璃「曾根崎心中(1703)」)、
と、
タバコの異称、
としても使われる(精選版日本国語大辞典)。
下向きに花をつける形、
が、
思案する人の姿、
を連想させることによるものか、恋の歌に多く使われ、
思ふ、
を導いたり、
思ひ種、
にかけたりして用いられ(仝上)、
思種、
とも当てる(岩波古語辞典・精選版日本国語大辞典)。
ナンバンギセル(南蛮煙管)、
は、
イネ科の単子葉植物(イネ、ススキ、サトウキビなど)の根に寄生する。葉緑素が無く、寄主の根から吸収した栄養分に依存して生育するため、寄主の生長は阻害され、死に至ることもある。全長は15~50cm。葉は披卵形、長さ5~10mm、幅3-4mm。花期は7-8月、赤紫色の花を1個つける。花冠は筒型で、唇形になる。花冠裂片の縁は全縁。雄蕊は黄色の毛が密生している。蒴果は球状で、種子の大きさは0.04mm、
とあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%82%BB%E3%83%AB)、
長い花柄の先に筒形の大きな紅紫色の花をつけ、それがパイプに似るのでこの名がある。茎はごく短く、ほとんど地上にでず、黄色から赤褐色で、狭三角形の鱗片状の小さな葉をまばらにつける、
とある(世界大百科事典)。
参考文献;
久保田淳訳注『新古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95