2024年12月20日

あをによし


味酒(うまざけ)三輪の山あをによし奈良の山の山の際(ま)にい隠るまで道の隈(くま)い積(つ)もるまでにつばらに見つつ行かむをしばしばも見放(みさ)けむ山を心なく雲の隠さふべしや(万葉集)

の、

あをによし、

は、

「奈良」の枕詞、

で、

あをに、

は、

青土、

で、

顔料、

とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。

あをによし、

は、

青丹よし、

と当て、

「よ」「し」は、共に間投助詞(広辞苑)、
ヨシは良い意(岩波古語辞典)、
「青丹よ」と呼びて、シを添えたるなり(麻裳(あさも)よし、眞菅よし)(大言海)、
「よし」は間投助詞(精選版日本国語大辞典)、

等々とあり、異同はあるが、

語調を強めたり、感動を表したりする役割り、

と見ていいが、

青丹よし、

は、

阿袁邇余志(アヲニヨシ)奈良を過ぎ小楯(をだて)大和を過ぎ(古事記)
青丹吉(あをによし)寧楽(なら)のみやこは咲く花の薫(にほ)ふが如く今盛りなり(万葉集)
悔(くや)しかもかく知らませば阿乎爾与斯(アヲニヨシ)国内(くぬち)ことごと見せましものを(万葉集)

などと、

奈良、国内(くぬち)にかかる枕詞、

である(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。

奈良坂のあたりから、顔料や塗料として用いる青土(あおに)を産出した、

とある(秘府万葉集抄)とか(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。ただ、事実か伝説かは不明(広辞苑)とあり、一説に、

「なら」に続けたのは、顔料にするために青丹を馴熟(なら)すによる、

ともいい(仝上)、

青土を眉にも絵にも埏(練 ねや)し熟(な)らして用ゐる、

とある(大言海)。

青丹(あをに)、

の、

に、

は、

丸邇坂(わにさ)の土(に)を、端土(はつに)は膚赤らけみ、底土(しほに)はに黒きゆゑ(古事記)、

と、

土、

の意(広辞苑・大言海)、

青、

は、

緑、

をいい(色名がわかる辞典)、

青丹、

は、

岩緑青(いはろくしゃふ)の古名、

とされ(大言海)、

青黒い土、

で、

あらゆる土は、色、青き紺(はなだ)のごとく、畫に用ゐて麗し、俗(くにひと)青丹(阿乎爾)といひ、また、かきつにといふ(常陸風土記)、

と、

染料、顔料、畫料、

とした(広辞苑・岩波古語辞典)。

「丹」.gif

(「丹」 https://kakijun.jp/page/0405200.htmlより)

「丹」(タン)は、「丹青」で触れたように、

会意文字。土中に掘った井型のわくの中から、赤い丹砂が現れ出るさまを示すもので、あかい物があらわれ出ることをあらわす。旃(セン 赤い旗)の音符となる、

とある(漢字源)が、

会意。「井」+「丶」、木枠で囲んだ穴(丹井)から赤い丹砂が掘り出される様、

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E4%B8%B9、会意文字とも、

象形。採掘坑からほりだされた丹砂(朱色の鉱物)の形にかたどる。丹砂、ひいて、あかい色や顔料の意を表す(角川新字源)、

象形文字です。「丹砂(水銀と硫黄が化合した赤色の鉱石)を採掘する井戸」の象形から、「丹砂」、「赤色の土」、「濃い赤色」を意味する「丹」という漢字が成り立ちましたhttps://okjiten.jp/kanji1213.html

象形。丹井(たんせい)に丹(に)のある形。丹は朱砂の状態で出土し、深い井戸を掘って採取する。〔説文〕五下に「巴越の赤石なり。丹井にるに象る。丶は丹の形に象る」という。〔史記、貨殖伝〕に、蜀の寡婦の清が、丹穴を得て豪富をえたことをしるしている。〔書、禹貢〕に、荊州に丹を産することがみえる。金文の〔庚贏卣(こうえいゆう)〕に「丹一木+厈(かん)」を賜うことがみえ、聖器に塗るのに用いた。甲骨文の大版のものには、その刻字の中に丹朱を加えており、今も鮮明な色が残されている。〔抱朴子、仙薬〕には、丹を仙薬とする法をしるしている。丹には腐敗を防ぐ力があり、古く葬具にも用いられ、殷墓からは、器が腐敗し、その朱色が土に残された花土の類が出土する(字通)、

は、象形文字とする。

参考文献;
伊藤博訳注『新版万葉集』(全四巻合本版)(角川ソフィア文庫)Kindle版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:05| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする