2012年12月28日

視点について~視点をめぐる多角的な視点


コーチングでも視点を大事にします。いわばものの見方だからです。

たとえば,CTIの基礎コースのテキストには,「視点転換のスキル」について,こうある。

「視点転換のスキル」とは,クライアントが自ら置かれている状況を別の視点からとらえることで,異なる選択肢が見つけられるようにサポートするためのスキルです。ちなみに,視点を変えるということは,コーチがクライアントから得たデータに異なる解釈を与えることを意味し,通常は否定的にそのデータを解釈している相手に対し,肯定的な解釈を提示することで,相手は新たな可能性を見出すことができるのです。たとえば,あるクライアントが,非常に激しいマーケットで権限の強いポジションの候補者になりながら一歩及ばず,そのポジションを逃したとしましょう。そのクライアントは落ち込み,自分の仕事能力に自信を失っています。この状況に視点転換を使うならば,「それほど競争の激しいマーケットで候補にあがったということは,あなたの経験と知識がそれだけ素晴らしいということなのです」となります。

しかしこの例では,視点の転換というより,ものの見方を示唆してしまっている。これは視点をクライアント自身に変えさせるための質問を使う方が効果的に思える。たとえば,「それほど競争の激しいマーケットで候補にあがったということについて,同僚や部下はどう見ているでしょう」という方が,クライアントの視点そのものを変えることになる。視点転換を,その結果えられるものではなく,転換そのもので得られるものに,力点を置くべきだと思うが,これは別の視点。閑話休題。

ところで,CTPのテキスト(自分が学んだ2004年当時のもの)では,こうあります。

コートには,クライアントが,今の状態は自分が起こしたものであり,これから望む未来も自分でつくっていくことが可能だという立場に立つよう促すスキルが求められます。そして,そのためには相手に多面的な視点を与えることが役に立ちます。

多面的という言い方は,視点そのものというより,視点から見えるものに力点を移している。しかし,視点がクライアントのものの見方を変えるのだとすれば,「選択肢」という言い方のほうが妥当な気がする。

それはともかく,続いて,そのために,

①責任を引き寄せる たとえそれが望ましくないようなものであっても,今ある状況や起こっている問題は自分が作り出したものであるということを,クライアントに自覚させることです。(コーチング大好きな人からは顰蹙を買うだろうが,あえて言えば,大きなお世話,こういう上から目線が,ときどき鼻につく。もしそれに敏感でなければ,鼻につくコーチになるはずだ。いまの多くのセラピストは,こういう言い方をしない。もう少しセンシティビティが必要だろう。)
②枠を替える クライアントは,ときに,自分の置かれている状況を,ある特定の枠組みに当てはめ,身動きができなくなってしまうことがあります。その状況を,飛躍へのチャンスという捉え方に変換できたとしたら,その後の行動は大きく変わってきます。「枠を替える」とは,クライアントがゴールに向かうことを妨げている,物事に対する見方(枠)を取り替え,相手に新しい視点を与え,行動への動機づけを行うことです。
③支柱を外す クライアントの基本的な考え方や解釈,仮説,コミュニケーション・スタイル,優先順位について,それが機能していないことを指摘し,取り除く手伝いをすることです。
④バージョンアップする クライアントの行動を決めている基本的な考え方や解釈を点検し,その幅を広げたり,新しいものに変えたりする機会とする。
⑤自分の体験を伝える コーチはすでにそれを試していることが必要です(これは変!クライアントから何が出てくるのかわからないのに,何をためすの?こういうおこがまし差が,時に鼻につく)
⑥提案する 相手に新しい視点を提案する。イエス・ノーの選択権は相手にある。CTIでは,イエス・ノー・逆提案の三択を提案する。この方が選択肢として正しい。
⑦リクエストする コーチが望んでいることをストレートに相手に伝えることです。その人がまだ試していない,その人の可能性を引き出す,その人が無意識につくっている枠の外へ連れ出す狙いがある。

さて,こう見てくると,視点そのものについては,あまり深入りしていないように思えます。それは,自分の視点について考えるよりは,「~という視点で見たらどう見えます」「それをあえて好きだと思ったら,どうなります」のように,別の視点をコーチ側から提起することで,別の視界を開かせることで,おのずと気づきを得られるようにするところに,力点があるからだと思われます。

ここでは,視点そのものについて,もう少し突っ込んで,私見をまとめてみました。

人は意識していないが,自分の見方を持っていると思っています。それは価値観であったり,生まれつきの見る位置であったり,こだわりであったり,暗黙の前提であったり,慣れであったり,なんとなく制約を考慮していたり,気づかず固定した位置でみていたりしています。それを自分でチェックすることで,変えることができます。ただし,見方だけは,意識しないと変えられない。特定の見方をとっていることを気づかない限り,変えることはできないのです。

つまり,こうです。「変える」とは,それを意識してみるという意味なのです。例えば,「価値を変える」とは,「~と見た」とき,「いま自分は,どういう価値観・感情から見たのか」と振り返ってみるということです。そのとき,善悪なのか美醜なのか喜怒なのかをチェックし,それ以外の,価値観で見たらどうなるか,無意識の見方を意識し,「では,別の見方ならどうなるか」と,改めて別の見方を取ってみる“きっかけ”にするのです。

①[みる」をみる-見る自分の対象化
視点を変えるというのは,視界(パースペクティブ)を変えるためにそうするのです。それを「見え方を変える」ということができます。見え方を変えることで,見ているものの印象が変わります。視点,たとえば具体的には,見る位置の移動することで,見え方が変わるからです。

その意味で考えると,われわれの想像力は,見る位置を動かせるのです。頭の中で,モデルを回転させたり,拡大縮小したりできますが,たとえば,現実的に,見る位置を近づければ,対象は大きくなりますし,遠ざければ小さくなるはずですし,ひっくり返せば,逆さまに見ることになります。見えているものを変えてみることで,見え方を変えることができます。見え方を変えることで,いままでの自分の見方が動くはずです。

しかしそれをするためには,対象を見ている自分の位置にいる限り,それに気づきにくいのです。なぜなら,見ているもの,対象の方に意識の焦点があっているからです。

それが可能になるのは,「見ている自分」を「見る」ことによってだけです。つまり,見る自分を突き放して,ものと自分に固着した視点を相対化することです。そうしなければ,他の視点があることには気づきにくいのです。だから,コーチングの質問で,「ほかの視点は?」と聞いたり,「○○の視点で見たらどう見えますか?」というのが効果的になるのです。

これをメタ化と呼びましょう。自分自身を含め,自分の見方,考え方,感じ方,経験,知識・スキル等々を対象化することです。それは,「『見る』を見る」ことだ,といえましょう。「見る自分」を意識しない限り,何を見ているかに意識の焦点が向かっており,どう「み(てい)る」か,どこから「み(てい)る」かは,「見る自分」自身は気づけないからです。

何かを対象化するためには,いったん立ち止まって,自分を,自分の位置を,自分のしていることを,自分のやり方を振り返らなくてはなりません。たとえば,言葉にする,言語化する,図解する,というのもその方法のひとつになるでしょう。それをするためには,対象化する必要があるからです。つまり,象徴的な言い方をすれば,「『見る』を見る」ということになる,というのはその意味です。

たとえば,「どつぼ」にはまって,トンネルビジョンに陥っているとき,視野狭窄の自分には気づけません。自分がトンネルに入り込んでいること自体を気づけない。それに気づけるのは,その自分を別の視点から,見ることができたときだけです。そのとき,初めて,止まる,前進し続ける,戻る,横へ行く等々の選択肢が見えてきます。つまり,視点を意識するとは,他の選択肢を意識できるようになる,ということなのです。なぜなら,見ているものではなく,見ている「見る」が対象になっているからです。

もう一つ,「どつぼ」を脱出する方法があります。あえて,自分の視点(視野狭窄に陥っている)を捨てて,意識的に,他人に仮託してみることです,たとえば,上司,トップ,先輩,家族等々,具体的なイメージのわく視点を想定して立ってみる。それ以外に自分の視点の狭窄に気づきにくいのです。これしかないと思いこんでいる自分の状態では,それ以外にあることには気づきにくい。だから,それを,「みる」をみると呼んでいる。「他には」の視点バージョンといってもいい。コーチングが意味が出てくるのは,ここなのです。これも,コーチングでよくやる質問です。「○○さんなら,どういうでしょう?」等々。

②「『見る』を見る」ための4原則~メタ化によってものの見方を相対化する

では,② 「『見る』を見る」ための視点として,どんなものがあるのか。4つほど例示をしてみました。

①「問い」(問題)の設定を変える-その「問い」(問題)の立て方がものを見えにくくしていないか
 ●問いの立て方を変える 問題そのものを設定し直す,別の問いはないか,問題そのものが間違っていないか,新たな疑問はないか,見逃した疑問はないか
 ●目的を変える 別の意味に変える,別の意義はないか,別の目的にする,意味づけを変える,意図を変える
 ●制約をゼロにする 時間と金を無制限にする,別の制約に変える,人の制約を無視する
 ●根拠を見直す その前提は正しいか,前提を見直す,前提を捨てる,こだわりを捨てる,価値を見直す,大切としてきたことを見直す

②視点(位置)を変える-その視点(立脚点)が見え方を制約していないか
●位置(立場)を変える 立場を変える,他人の視点・子供の視点・外国人の視点・過去からの視点・未来からの視点になってみる,機能を変える,一体になる・分離する,目のつけどころを変える,情報を変える等々
●見かけ(外観)を変える 形・大きさ・構造・性質を変える,状態・あり方を変える,動きを変える,順序・配置を変える,仕組みを変える,関係・リンクを変える,似たものに変える,現れ方・消え方を変える等々
●意味(価値)を変える まとめる(一般化する),具体化する,言い替える,対比する別,価値を逆転する,区切りを変える,連想する,喩える,感情を変える等々
●条件(状況)を変える 理由・目的を変える,目標・主題を変える,対象を変える,主体を変える,場所を変える,時(代)を変える,手順を変える,水準を変える,前提を変える,未来から見る,過去から見る等々

③枠組み(窓枠)を変える-その視界が見える世界を限定していないか
 ●全体像から見直す 全体像を変える 広がりを変える,別の世界のなかに置き直す,位置づけ直す
 ●設計変更する 出発点を変える,ゴールを変える,要員を変える,仕様を変える,組成を変える
●準拠を変える 別の準拠枠を設定してみる,よりどころを見直す,前提を変える,制約を消す(変える)
 ●リセットする すべてをやり直す,リソースを見直す,ゼロにする,チャラにする,なかったことにする

④やり方(方法)を変える-その経験とノウハウ(経験のメタ化)が方法を狭めていないか
●本当に可能性は残っていないか まだやれるというには何が必要か,何があれば可能になるか,どういうやり方ができれば可能になるか,何がわかれば可能になるか,
●まだやり残していることはないか 他にやっていないことはないか,まだ試していないことはないか,まだやって見たいことはないか,ばかげていると捨てたことはないか,限界を決めつけていないか,
●プロセスを変える まだたどりなおしていないことはないか,別の選択肢はないか,分岐点の見逃しはないか,捨てていいプロセスはないか,経過を無視する,逆にたどる,資源の再点検,見落としはないか
●手段を変える 試していないことはないか,異業種で使えるものはないか,捨てた手段に再チャレンジする


実は,初めは視点については,視点の位置をどう変えるかのみを念頭に置いていましたので,②だけしか考えていませんでした。しかしあるメーカーで,こんなことを言われたことがあります。「問題」はわかっている。しかし解き方がわからない,と。

しかし,思ったのです。もし問題がわかっていて,どうしても解き方がわからないのだとしたら,自分が「どつぼ」にはまっていると思うべきです。とすると,わかっていると思い込んでいる「問題」の設定そのものを見直す必要があるのではないか。本当にそれがもんだいなのか,と。そこから,考えを進めて,上記の4つの視点を整理してみました。ポイントは,見ることを制約すると思われるものを,少し広げて検討しようとしたところだと思います。

しかし,まだ仮説です。仮説ということは,僕自身の機能的固着(固定観念)から脱していないところがあるのではないか,ということです。絶えずそういう問題意識を持ち続ける必要があります。すべては仮説ですから,正解ではないということです。

今日のアイデア;
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posted by Toshi at 09:27| Comment(0) | 視点 | 更新情報をチェックする
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