時代おくれについて


歳のせいか,最近自分が時代おくれになった,もう時代の流れにいないということを実感するようになった。先日のあるトークライブで, 50~60代ではなく,30~40代でなくてはだめだというニュアンスの話を聞いたせいばかりでもない。実感としては,ひどく寂しさを感じている。

まずはそこを認めるところから始めたい。

では時代おくれとはどういうことなのだろう。

河島英五の歌に「時代おくれ」というのがある。「時代おくれ」というタイトルが気になって,改めて歌詞を読んでみた。でもこれは時代おくれというよりは,つつましやかなお父さんの自恃の歌,あるいは自戒の歌ではないか,という気がする。

一日二杯の酒を飲み
さかなは特にこだわらず
マイクが来たなら 微笑んで
十八番を一つ 歌うだけ
妻には涙を見せないで
子供に愚痴をきかせずに
男の嘆きは ほろ酔いで
酒場の隅に置いて行く
目立たぬように はしゃがぬように

似合わぬことは 無理をせず
人の心を見つめつづける
時代おくれの男になりたい

不器用だけれど しらけずに
純粋だけど 野暮じゃなく
上手なお酒を飲みながら
一年一度 酔っぱらう
昔の友には やさしくて
変わらぬ友と信じ込み
あれこれ仕事もあるくせに
自分のことは後にする
ねたまぬように あせらぬように
飾った世界に流されず
好きな誰かを思いつづける
時代おくれの男になりたい

目立たぬように はしゃがぬように
似合わぬことは 無理をせず
人の心を見つめるつづける
時代おくれの男になりたい

これは僕の時代おくれのイメージではない。時代おくれとは,感傷的に,さみしさを開き直るのでも,もちろん世の中をすねることでもない。時代おくれという以上,おくれる前がなくてはならない。その時,時代と同時に走っていて,置いて行かれたというなら,単なる落伍になる。そこで開き直ったところで,見苦しいだけだ。時代おくれを矜持ととらえたり,美学ととらえたりするのは,開き直りの一種でしかなく,みっともない。

では,何が時代おくれなのか。いまも懸命に走っている。もちろん若いころのスピードはないが,気づくと,息切れしたり,妥協したり,粘りが失せて,少しずつ時代とずれ,おくれを取り始めている。だが,ここでリタイアしたり,離脱するのは,時代おくれとは言わない。それは道からのいたというだけだ。まだ時代の中で,戦い続けていなくては,時代おくれとは言えない。たとえば,周りから見れば,ドンキホーテでも,本人は恐竜と戦っているつもりでなくてはならない。たとえば,

●時代のスピードについていけない(というか,ついていけなくてもすんでしまう)
●新しい技術についていけない(というか,ついていかなくてもすましてしまう)
●新しい流行・トレンドを知らない(というか,知らなくてもすんでしまう)
●時代への批判力を失う(というか,まあいいか,とすませてしまう)
●時代と格闘しようとしない(というか,しないですむところにいる)
●過去の延長線上から離れられない(というか,それしか知らない)
●若い人とキャッチボールができない(というか,相手にされていない)
●時代への苦情や文句しか言わない(というか,ほとんど自己完結した独り言)

等々の現象が起こっていても,戦線離脱をしてはいない。あくまで,主観的かもしれないが,最前線に立ち止まって,戦場に踏みとどまっている。しかし,主観に反して,戦場の主力とはみなされず,遅れていく。そういう場合だけを「時代おくれ」と呼ぶ。でなければ意味がない。

確かに,時代の最先端を作っているのは,働き盛りの30~40代に違いはない。時代おくれどころか,最先端にいるつもりなのに,悲しいかな,仲間の足を引っ張りかねない自分に,ある時,ふっと気づく。

では,時代おくれにならない指標は何か。リストアップしてみると,こうなる。

①たえず新しいものを創り出す思考力があるか
②おのれ自身の頭と感性でアウトプットを出し続けているか
③時代の先を読み,次に何をすべきかの先手を打っているか
④過去の延長線上ではなく,フラクタルに,あるいは非線形的に,新しい未来を作り直せているか
⑤自分の旗を立て,人を引っ張って,先頭を走る力があるか
⑥新たな業を創り起こす構想力があるか
⑦まだ先達の教えを乞い学び続ける成長への意欲があるか
⑧新たなコラボレーションの場を作っていくリーダーシップがあるか
⑨新しいことへの好奇心と関心に引っ張られて探索し続ける探究心があるか
⑩最先端に立ちはだかる壁を突き破る突破力があるか
⑪あらゆる情報にアンテナを立てその意味を再構成していく判断力があるか
⑫協働する仲間を絶えず維持・強化していける魅力があるか
⑬政治へコミットメントをするパワーがあるか
⑭既成の利権や権威に対する批判力はあるか
⑮人を目利きし,育てるエネルギーはあるか
⑯時代の潮流に棹さしおのれを生かし切る行動力があるか
⑰時代の潮目を見切り大胆な方向転換する勇気はあるか
⑱長老,功労者,権威者におもねらずおのれを律するプライドはあるか
⑲作り上げたものをリセットして作り直すクリエイティブな情熱があるか
⑳妥協や中庸を拒み,あくまで尖がって走り続ける気概はあるか

丸まらず,物分りよくならず,訳知り顔にはならず,絶えず尖がって走り続け,時代の真ん中に居続ける。そういう気骨あるつもりでも,時代からずるずると,置き去りにされていく,その不安こそが,時代おくれという精神でなくてはならない。その心意気だけは失ってはならない。歎いたり,すねたり,ましてや苦情や文句だけを言うようになったらおしまいだ。老人かどうかというより,人間としておしまいだ。まして,安全なところから,人を煽るだけだったり,評論家になっていては,もう論外。

不遇時代の美空ひばりが,焦らず,怒らず,諦めず,を自戒していた。いつも,それを,こう言い換えている。腐らず,驕らず,諦めず,と。



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