2013年01月31日

自分を物語る意味~対話の果てに


対話ということを考えていくうちに,

http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11071791.html

http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11072771.html

と考えていくうちに,「自分の物語を語る」へと行きついた。

フランクルが,人は誰も自分の語りたい物語をもっている,と言っていたが,というのも,物語るエピソードそのものが,かけがえのないその人の人生の時間そのものだからと思えてならない。それは,その人と,それを共体験した人とでしか共有できない。

いや,一緒に体験したところで,それはその人の体験で,自分の体験ではない。所詮,人の見ている現実は,その人だけのもので,その色合いも,肌合いも,心映えも,光景も,一緒に居ても,同じではない。人は,同じものを見ていても,同じように見えているとは限らない。にもかかわらず,共体験したものでしか,思い出は共有できない。まあ,そこに,写真だの,コトバだのがあり,物語もまたその一つなのかもしれない。

人の認知形式,思考形式には,「論理・実証モード(Paradigmatic Mode)」と「ストーリーモード(Narrative Mode)」がある(ジェロム・ブルナー)があるとされている。前者はロジカル・シンキングのように,物事の是非を論証していく。後者は,出来事と出来事の意味とつながりを見ようとする。

ドナルド・A・ノーマンは,これについて,こう言っている。

「物語には,形式的な解決手段が置き去りにしてしまう要素を的確に捉えてくれる素晴らしい能力がある。論理は一般化しようとする。結論を特定の文脈から切り離したり,主観的な感情に左右されないようにしようとするのである。物語は文脈を捉え,感情を捉える。論理は一般化し,物語は特殊化する。論理を使えば,文脈に依存しない凡庸な結論を導き出すことができる。物語を使えば,個人的な視点でその結論が関係者にどんなインパクトを与えるか理解できるのである。物語が論理より優れているわけではない。また,論理が物語りより優れているわけでもない。二つは別のものなのだ。各々が別の観点を採用しているだけである。」(『人を賢くする道具』)

要は,ストーリーモードは,論理モードで一般化され,文脈を切り離してしまう思考パターンを補完し,具象で裏打ちすることになる。

エドワード・ソーンダイクは,人間が物語を記述するための抽象的ルール体系を頭の中に持っていると仮定し,それを物語文法と呼んだ。たとえば,

設定
テーマ
プロット
解決

の項目に従って,

誰が,いつ,どこで,どのような事件に巻き込まれて,どんなトライアルを行い,どういう結果が生まれたのか,

を把握しようとする。そして,実験の結果,物語の提示が,物語文法の順序と一致しているほうが,文章の記憶や理解が促進されることを発見した。この辺りは,

http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11015227.html

でやった記憶術とリンクする問題かもしれない。つまり,物語性を持たせた方が,記憶する事項のつながりが記憶にとどまりやすい。それは,もう一か月前の,ランダムな言葉を,思い出せるところからも証されている,といってもいい。

さらに,ロジャー・C・シャンクと,ロバート・P・エイベルソンは,人の会話を理解するコンピュータシステムを開発する中で,人間の知識は,ステレオタイプ化された状況とそれに伴う習慣化された行動とのセットからなる「劇の台本のような物語」として表現されているとして,それを「スクリプト」と呼んだ。

面白いことだが,ひとつの物語を記憶から引き出すと,別の物語(あるいはエピソードといった方がいいかもしれない)が,例えば,たった一つのシーンから,別のシーンにリンクして,思い出の連なりが思い起こされてくる。そうやって,自分の中にある,メインのストーリーは別に,様々なスピンアウトした物語が,紡ぎ出せる。

その意味で,自分の物語を語り直す,あるいは語ることで,自分の人生に違う光が当たり,そこから,未来に別の岐路が開く。語ることで,その道とつながる,という気がしてならない。

ナラティブセラピーで悲嘆の起因を延々とした物語で紡ぎ出し,いまの自分を貶めているドミナントストーリーに対して,別のオルタナティブストーリーを導き出すことで,自分への信頼を取り戻そうとするというのは,だから,故なきことではない。

その意味で,コーチングには,その人の過去の物語ではなく,新しい未来の物語を一緒に紡いでいくという意味で,セラピーとは違う光の当て方で,ナラティブコーチングと言うのはありうるし,現にやっていることはそういうことなのだと思う。


参考文献;
中原淳・長岡健『ダイアローグ』(ダイヤモンド社)

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm



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posted by Toshi at 06:42| Comment(2) | コーチング | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今日は よろしくお願いしますね^^すごいですね^^
Posted by レイバン サングラス at 2013年07月24日 13:58
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Posted by lunettes carrera pas cher at 2013年08月23日 10:52
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