提案について


CTPのテキスト(僕の受けた2004年当時)には,提案について,

提案とは,新しい視点を提起要することです。提案と,「指示・命令」は違います。「提案」は,あくまで彼ら(クライアントを指す)が自分の責任で行動を選択することを促します。言い換えれば,「YESかNO」の選択権は常に相手にあるという立場に立って伝えるのが,「提案」です。

とある。CTI流だと,「YES,NO,逆提案」となる。逆提案が入っている分だけ,対等という感覚が強まると言ってもいい。

提案というのは,指示命令とは違う,という。しかし,望まれていないアドバイスは,命令に聞こえる。「俺の言うことをきけ」と。だから,提案も同じだ。望まれていない「提案」は,YESと言えというふうにしか聞こえないかもしれない。

人は,自分が選択したと思えなければ,強制されたと感じる。ではどうすれば,強制と感じないで,自分の選択と感じられるのか。

第一は,その選択肢の選定プロセスに,相手も一緒に加わり,そのどちらかに選ぶのがベストと感じることができている場合だ。つまり,一緒に提案の中身を,つくりかあげていくプロセスがあることだ。

第二は,選択できる,ということだ。提案が,ひとつではなく,いくつかあり,その中から,自分が自主的に選んだと感じられることだ。

その場合,二者択一では選択と言わない。「YESかNO」を迫っているのと変わらない。選択できる,という意識が持てるのは,最低限3つがいる。あまり多くなると,選べなくなる,ということをよく言うが,せめて3つの中から選べるのがいい。

その理由は,

①当然第一に述べたように,これっきゃないところから,諾否のみを求められるのは,押し付けられているという感覚が強い。特に,心理的に上位と感じている人からのそれは,強制のニュアンスがどうしても出る。コーチングではそれはないと思われるかもしれないが,そう思っているコーチは思い上がっている。クライアントには,潜在的に,「コーチに嫌われたくない」「コーチによく思われたい」という心理があり,それが強迫性をもつ。

②二つだと,二者択一,つまりあれかこれか,から選ぶことになる。これだと実際やってみるとわかるが,心理状態は諾否に近い。

③三つの良いところは,二つある。少なくとも選んだ感はある。いま一つは,人は上中下とあった場合,大概真ん中を選ぶ傾向がある。従って,相手に選んでほしいものがある時,本命をそこに置くと,割と選ぶ傾向が高まる。

その意味で,提案者にとっても,選択者にとっても,3つの選択肢は,好感度が高い。できるなら,提案する以上,相手に選んでほしいし,また相手に選んだと思ってもらいたい。

ソリューション・フォーカスト・アプローチでは,クライアントに提案(Suggestion)を行う。その場合,
行動提案(クライアントに何かするように求める)

観察提案(生活の中で解決作りに役立ちそうな部分に注意を払うように求める)
とがある。いずれを出すかは,面接中に集められた情報を基にするが,その場合注目すべきは,

「初回面接の終了時までに,ほとんど例外なく,臨床家とクライアントは共同作業によって,クライアントの望みを明確にできる。…提案を決めるために最も重要なことは,クライアントが何か違いを求めているかどうかに注目することである。」

とし,解決したい問題があり,自分が何とかしなくてはいけないと考えている状況では行動提案,問題に気づきながらも自分を解決の一部であると考えていない場合は,観察提案,といった選択基準を提起している

どうやら,提案は,協働作業として,おのずとそれをすることが自分にとって不可欠と思える状況というか,文脈をつくって,一緒にそこへたどり着くのがいいのではないか,と思えてくる。

ただ,さらに付け加えると,僕は提案は,受ける,受けない,逆提案という選択肢の中で,ただ並べるのではなく,クライアントの想定外の提案がいいと思っている。しかもそれがコーチとクライアントの協働関係の中で,必然的に飛躍が起こりうる,というようなものでなくてはならない。

ただ価値に合うとか,大きな主題に合うというコーチの理屈ではなく,それをやってみることが,いまの自分にとって必要なんだと思わせるものだ。

僕はその流れは忘れたが,絶対やりたくないものを列挙し,その中から,何かにチャレンジするという提案を,コーチから受けた記憶があるが,それは自分が変化とかチャレンジということを言ってきた文脈から出た提案であった。その文脈に納得し,その文脈に乗って,コーチとともに,やりたくないことを列挙し,その中から,選択していく。それも自分でも想定外のことを選び,チャレンジする。

それを断ったら,チャレンジという自分のやろうとすること自体が口先三寸になる。そういう文脈であった。

そう,だから,提案は,それだけが突出しても,提案ではなく,指示命令にしかクライアントには聞こえない。一連のコーチングという協働関係の中から,コーチもクライアントも,ともにそういうことだよな,と納得できる提案が,ぽろりと落ちる,しかも想定外に,そういうものなのだと思う。

参考文献;
インスー・キム・バーグ他『解決のための面接技法【第三版】』(金剛出版)

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

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