2013年05月07日

いいこと


口癖のように,「特に,何もいいことはない」と言う。そこをコーチに見とがめられて,

「いいことって何?」

と,自分にとっていいことを掘り下げる羽目になった。

例えば,「いい(良い,善い,好い)」とつくものを考えると,気持ちいいこと,心地いいこと,居心地いい,過ごしよい,暮らしよい,とある。

とっさに浮かんだのは,淡々と流れる,日々のイメージ。日々是好日。どうでもいい些事に振り回されないこと。まあ,縁側で,ぽかぽかと日差しの指す縁側で終日ぼんやりとする,あるいは日がな一日,のんびり温泉三昧…。しかしすぐ退屈してしまうだろう。

では,いい時というのは,何が起きているのか?

例えば仕事に熱中して,時間を忘れている。あるいははフロー状態。しかしこの瞬間は,僕にとっていいことではない。その最中は,楽しいとか,いい時ではなく,ある意味しんどく,苦しい時間だ。むしろその前,その熱中の準備作業のプロセスの方が大事だ。思いついたアイデアや考え,仮説をメモに取る。そのプロセスでいいアイデアを思いついたり,考えてきた問題意識が,点から線,線から面につながり,一つの構想にまとまっていく。その最中が楽しくて,わくわくする。

あるいは好きな人のことを考えていて,相手を思うときの切ないような,定まらない不安定な気持ちの揺れ。そのプロセスが,いい。

あるいは自分の表現したもの,ブログでも,あるいはなんかの発言でも,それについて手ごたえがあったとき。

そう思うと,いい時とは,楽しい,うれしい,面白い,わくわくする,ドキドキする,感動するといった,そういう気持ちになれるとき,そういう気持ちにさせてくれるとき,なのかもしれない。

ただ普通の感動では,いいときとは言えない。こちらの想定を超えた,

普通であわないようなことに出会う,
新しいことに出会う,
見たこともないものを見る,
こちらが想像する枠を超えて,出現する何かと遭遇するとき

等々のような気がする。そんなことを言っているうちに,入院中,七階だったが,窓から鳶の後姿が見えた。それも,すぐ眼下に,茶色の首筋と背中の羽根が見えた。一旦ファインダーに捉えたのに,ちょっと中心からずれていると,シャッターを押しそびれた間に,飛び去って,撮る機会は潰えた。しかし,『ロード・オブ・ザリング』のラスト,あれは大鷲だったが,あの大きな背中に乗っているのと同じくらいの間近で,鳶の背と首筋を見た。

一瞬,挨拶に来たのだと,(退院間近だったので)思ったが, その一瞬を撮り損ねた悔いの方が,強かった。その後もしばらく窓辺で機会をうかがったが,二度と鳶はやってこなかった。しかし,たぶん,そういうもの,

誰も見ていないものを見た,
誰も考えつかないアイデアを思いついた
誰も考えていないことを発想した
誰も想像もしないスキルを考えついた
誰も書かなかったことを書いた
誰もまとめなかった構想を描いた

等々という,誰もしていない,誰もやっていない,誰も想像していないことを,自分がやるということに,興奮し,わくわくし,テンションが上がる,ということに気づいた。

人真似や誰かのお先棒担ぎはしたくない。誰かの考えを自分の考えのように言い触らすのも好きではない。外国の誰それの説を自分の説のように吹聴するのも大嫌いだ。それは他人の人生に相乗りしているようなものだ。

子曰く,道を聴きて塗(みち)に説くは,徳これを棄つなり。

是非は置くが,アメリカのセラピー理論を見ると,わずかの差を言い立てて,「~」セラピーという旗印をすぐ掲げる。しかしこのマインドは好きだ。人の後塵を拝するばかりか,そのお先棒担ぎに成り下がっているのを見ると,他人事ながら,情けない。鶏口となるも牛後となる勿れ,とはその意だろう。あるいは鯛の尾より鰯の頭,とも。

もちろん勝手な思い込みかもしれない。あるいは,あるにしても,ほんの些細なことかもしれない,わずかな差異を,オリジナリティと言い募っているだけかもしれない。しかしそのくらいでいい。

ベイトソン曰く,「情報とは差異である」。

ドラッカー曰く,「情報とは,データに意味と目的を加えたものである」。

つまりは自分なりに意味と目的を加えることで,同じ情報も装いを変える。リフレーミングとはこれである。そこに,オリジナリティがある。その大小,多寡を言うのは意味がない。わずかな差異を見つけたものにのみ,アドバンテージがある。

僕にとって,いいこととは,

自分にとって新しいことを創り出すこと,

新しい何かを発見しカタチにすること,

つまりは,人とは違うことをしているそのプロセスこそが,いいときであり,いいことであり,いい瞬間なのだ,と気づいた。それが僕のエネルギー源であり,動機づけらしいのだ。だから,家元や大家から,

自分勝手なことをしている,

というのは最大のほめ言葉なのだ。アーサー・C・クラークは言っている。

権威ある科学者が何かが可能というとき,それはほとんど正しい。しかし,何かが不可能というとき,それはたぶん間違っている。

既知ではない未知にしかオリジナリティはない。しかしそれはほんのわずかな差異しかない。そのわずかな違い,差異を見つけ出し,カタチにすることに,おのれのオリジナリティを賭ける。そこに,“いいとき”,“いいこと”がある。

http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm



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posted by Toshi at 04:58| Comment(1) | 個性 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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Posted by アメリカ 腕時計 at 2013年10月22日 04:48
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