2013年05月27日

練り込み



「女流漫画家渡邊治四先生から学ぶ,キャリアアップのために必要なこと」に参加した。

http://www.facebook.com/home.php#!/events/432001350222436/

今回は,前回に続いて,「想像力→創造力」が深堀されたが,三つに分けられるようだ。

ひとつは,想像力のところで,

想像をかきたて,ひらめかせるための素材集めの部分

第二は,想像力のところで,

集めた素材の相互作用というか,化学変化の部分。いわゆるここが,発想とかひらめきと言われる部分。

第三は,「→」の部分で,具体的にまとめていく作業。いわゆる,編集というのはこの部分。

最後の「創造力」の部分は,いわばカタチにまとめ上げていく部分で,今回はあまり焦点が当たらなかったが,作業というか,練り込みというか,書き込んでいく部分になる。どう書くかという表現の仕方になる。これはまた別の話になる。

これを刺激に,自分が過去の経験ではどうしていたのか,一つ一つ振り返る羽目になった。そんなことを,手前味噌で,長々書き出してしまった。ご容赦,ご容赦。

第一の,素材集めという場合,その人のリソースやルーツというものが大きく作用するようだが,僕はそれを捨てるべきだと考えている。かつて,雑誌の取材やケースライティングの業務をしていた時,自分なりに,事実集めの心得としていたのは,

①事実集めのフィルターを決めない テーマや問題意識であらかじめ事実を想定し,取材側のフィルターを限定しない。想定外の事実は,こちらの問題意識が現実をつかみ損ねていた証拠かもしれない。課長が対象だからといって,課長クラスの中に必要な事実があるとは限らない。
②質にこだわるな ブレインストーミングと同じで,質とは先入観である。まず事実を集めること。
③事実を自分の頭で整理するな 事実を自分流儀で整理すると,ニュアンスが消える。事実とはニュアンスである。そのまま,Aが~と言った,Sが~をした等々。
④どの視点から見た事実かを確かめよ 事実は当事者から見たものか,目撃者から,第三者の伝聞か。
⑤事実の奥行きを確かめよ ピンポイントの事実だけでなく,その背景,後日譚も拾っておく。
⑥その事実への評価も確認しておく それをどう見ているかは,現場の見解として,それ自体がまた事実となる。
⑦出来事のピラミッドをつくる その出来事の相関図,位置関係を描けるようにしておく。

で,事実の取捨選択に当たっては,次の様に心がけていた。

①状態や行動レベルでとらえること 言葉や概念でまとめたもの,説明や評価は使えない。それを再度具体的な事実におき直さなくてはならない。「臆病だ」はどういうときにどういうことをするのかが大事になる。「頭が悪い」ではなく,どういうときにどういうことがわからないのかが重要。
②エピソードこそが命 当該出来事,人物の特性は,些細なエピソードの中に現れる。「まいったなあ」というのが口癖,「ついてない」ということを連発する等々。
③人と人の関係(行為,会話)でつかむ 相互の言葉遣いで,表面的とは違う関係,公式な指示命令関係とは違う関係が見える。
④出来事の時制をはっきりさせる いつ起こり,いつ終わったのか。いつ気づいたのか等々。
⑤出来事が誰の立場で表現されているかの明確化(確認) 「S君をA主任がしかっていた」という事実に,誰(と誰)がそれを見ていて(伝え聞いて),誰に報告し,誰と誰が知っているのか,それを誰がどう評価しているのか等々。
「S君をA主任がしかっていた」という事実に,5W2Hで,なぜ,どこで,何について,どういうしかられ方をしたのか,その原因,遠因,背景の具体化。それにまつわる周辺情報,それまでの両者の関係,その後の経過。S君は,どうしたのか。A主任はそれについて何か言ったのか,それを目撃した人,その評価。噂話。どこまでそれか伝わったか等々。
⑥ひとつの出来事の連鎖性をはっきりさせる 出来事が一過性のものか,非連続的なものか,ずっと潜在していたものが突然現在化したのか,間欠的なものなのか等々。

いまは取材することはないのだか,何年か前までインシデントプロセスやインバスケットのケースをつくるときも,たぶんこういうことをやっていたように思う。

で次に,想像力というか,ひらめきという場合,脳内では,広範囲が活性化する。わずか0.1秒のことだ。その瞬間起きているのは,自分の中にもっているいろんなものが一瞬にしてつながる,という状態である。これは,二つのパターンがある。

ひとつは,素材そのもののなかでリンクすることで,何かがまとまっていくイメージ

と,いま一つは,

仮説したイメージの中に,いろんな要素がひとまとまりになる

場合がある。どちらがどちらということはないが,発想は,どういうまとまり方もするように思う。それが,「どうしたら伝わるか」「読み手がどう興味を持つか」の切り口なのだろう。僕は,それを単純に「目的」と考えていたが,そこは,アートとビジネスユースでつくっているところとの微妙な差かもしれない。

第三の,編集作業だが,編集は創造力にあたるのでまず,創造性の定義を振り返ると,その代表的な定義は,E・ヴァン・ファンジェの,

①創造者とは,既存の要素から,彼にとっては新しい組み合わせを達成する人である,
②創造とは,この新しい組み合わせである,
③創造するとは,既存の要素を新しく組み合わせることにすぎない,

である。要するに,既存の要素(見慣れたもの)から新しい組み合わせ(見慣れないもの)を創り出すことである(『創造性の開発』)。

このことを,川喜田二郎は,わかりやすく,
「本来ばらばらで異質なものを意味あるようにむすびつけ,秩序づける(新しい意味があるように組み合わせる)」
ことである,と定義している。

いずれも,言い換えれば,異質な組み合わせによって,知っているもの(見慣れたもの)を知らないもの(見慣れぬもの)にすることである。あるいは,新しい意味づけを見つけることである。

つまり,創造性は,編集そのものなので,いくら既知の要素を組み合わせるからといっても,組み合わせさえすれば創造的なものが生み出せるわけではない。

この「組み合わせ」方を,アーサー・ケストラーは,次のように言う(『創造活動の理論』)。

相互に矛盾する二つの見地(モノの見方)に,常識的にはとうてい均衡がとれそうもないないところで「不安定な平衡状態」を見つけることだ,

と。「組み合わせ」は,単なる寄せ集めではなく,常識的には接合点の見つけられない「異質」なものに「交錯点」を見つけ出すのである。そこにつながりを見つけることなのである。

では,それはどうやったら可能なのか?

映画のモンタージュ手法を例にとってみる。「一秒間に二四コマ」の映画フィルムは,それ自体は静止している一コマ毎の画像に,人間や物体が分解されたものである。この一コマ一コマのフィルムの断片群には,クローズアップ(大写し),ロングショット(遠写),バスト(半身),フル(全身)等々,ショットもサイズも異にした画像が写されている。それぞれの画像は,一眼レフのネガフィルムと同様,部分的・非連続的である。ひとつひとつの画像は,その対象をどう分析しどうとらえようとしたかという,監督のものの見方を表している。それらを構成し直す(モンタージュ)のが映画の編集である。つなぎ変え,並べ換えることによって,画像が新しい見え方をもたらすことになる(瓜生忠夫『新版モンタージュ考』)。

たとえば,男女の会話の場面で,男の怒鳴っているカットにつなげて,女性のうなだれているカットを接続すると,一カットずつの意味とは別に男に怒鳴られている女性というシーンになる。しかし,この両者のつなぎ方を変え,仏壇のカットを間に入れると,怒鳴っている男は想い出のシーンに変わり,それを思い出しているのが女性というシーンに変わってしまう。あるいはアップした男の怒った表情に,しおたれた花のカットを挿入すれば,うなだれている女性をそう受け止めている男の心象というふうに変わる。その後に薄ら笑いを浮かべた女性のアップをつなげれば,男の思い込みとは食い違った現実を際立たせることになる。

ケースライティングでやっていたのは,集めた事実群を,どうつなげていくのか,である。つなげるというのは,

①事実群の間で,序列をつける
②目的からの取捨選択
③事実群の順序(起きた順,発見された順など)

だが,ポイントは,第一に,誰の視点からかの,パースペクティブを決め,第二に,ウエイトづけをすることにつきると考えていた。アートではなく,事実の整理という視点が強いせいだ。

ウエイトづけには,

事実の求心化 事実をテーマで括って,順次,当初テーマへと集約していく

事実の遠心化 事実を因果関係で,中心問題から同心円で拡大していく

の2つがあるので,それを念頭に,事実の整序には,次のようなカタチがある。

①事実を括りながら,テーマのブレイクダウンに対応させながら,テーマへと集約していく
②時系列に従い,単純に生起した順に並べる
③因果関係に従い,並べていく
④各事実を空間的に整序し,場所的な関連性をつける
⑤出来事の新規性,面白さを中心において,配列してみる

この作業は,ある意味で,事実の作り出す空間をイメージする作業となる。このままでも,ケースとしてのまとまりができてしまう場合もあるが,ケースとしての“結構”にまとめるには,もうひと工夫必要となる。

ひとつのケースに,“結構”をまとめるとは,各事実をケースという全体の地図の中に,どう役割づけ,どう位置づけて,布置していくかということです。まとめ方の要件は,

①時間の整序,空間(場所)の設定が明確であること
②全体の事実関係,因果関係が一貫していること
③全体を制御する視点(語り口)が整合性をもっていること

となる。最も重要なのは,③。問題のパースペクティブを描くためには,その要となる目撃者(当事者でもいいが)が不可欠。事実とは,誰かに目撃されない限り,存在しない。

したがって,その事実が,誰の目から,どれだけの距離をもって(当事者,相手,関係者,第三者,無関係な目撃者等々),どう見られているか,である。ケース分析のために作るので,「問題の構造化」を誘うに足る事実が必要,ということになる。

この「誰」を,便宜的に,語り手と読んでおくと,たとえば,「G課長が,S子を注意した」という事実を,どう取り上げるか,という問題に関わる。「S子は,G課長に注意された」とするか,「G課長は,S子を注意した」とするかで,視点の位置は変わる。その出来事を,誰が,誰の立場で,報告するかという問題でもある。

完成品を,どういうパースペクティブに統一するかが,最後の書き込みの要になる。

R・バルトはこう言っていたと思う。

文学の描写はすべて一つの眺めである。あたかも記述者が描写する前に窓際に立つのは,よくみるためではなく,みるものを窓枠そのものによって作り上げるためであるようだ。窓が景色を作るのだ。 (『S/Z』)

パースペクティブ,窓をどうとるかで,眺めが変わる。語り手で取るか,視点で取るか,どっちにしても,その統一感で,風景が変わる。

でもここまで振り返って思うのは,僕のやっていたのは,アートではないので,素材そのままでもケーススタディのケースになる。それをあえて読み物に変えるための変換作業をしていただけだ。まあ,報告文章に近いのかもしれない。
その意味で,今回の趣旨とは少しずれたかもしれない。

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posted by Toshi at 05:40| Comment(6) | 取材 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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