アーサー・C・クラークは言っている。
権威ある科学者が何かが可能と言うとき,それはほとんど正しい。しかし,何かが不可能と言うとき,それは多分間違っている。
不可能だと人からいえるほどとんがる,そういう気概がいる。
ただしい間違いに気を取られると,自分のとんがりを忘れてしまう。
最近の芸術の世界を見た時,日本は老成化しているとつくづく感じる。特に文学だ。尖(とん)がった人が出てこない。出てくるのは,新しいジャンルだ。芥川賞や直木賞は,本来新人の登竜門のはずだ。しかしいつの間にか,変質してしまい,目標に変わってしまった。
そこからは若い世代を熱狂させる,尖がった作品は全くでなくなった。古いが,村上龍以来,尖がったものはない。素材や内容が尖がっていても,文学として尖がっているとは言えない。文学としての冒険がなくてはならない。それはからっきしない。
だいたい石原慎太郎のような,何を勘違いしているのか,『太陽の季節』以外小説らしい小説を書いていない老人が,選考委員を,つい最近までしていたこと自体,間違っている。老人に文学の尖がりを見る目があるはずはない。そういって選考委員を早々に辞めた文学者(小説家ではない。小説家は小説というジャンルにのっとって書く,文学者は新たな小説の枠組みを作り出す。今日,中上健次以降の世代に,小説家はいるが,文学者はいない)がいたが,おのれを知っているというべきだろう。
最近,ある展覧会で,若い作家と話をさせてもらった。そのとき,
テーマ(表現しようとする主題,貫いているものと個々の作品のそれの両方がある)
モチーフ(自分を駆り立てている動機となる考え方,発想・着想,着眼点)
問題意識(テーマやモチーフを目指すものとして,それと現状との間で意識しているギャップないし問題)
を,ちょっと区別して聞いてみた。ほとんど変わらないと言えば言えるが,テーマも,モチーフも,問題意識も,自分自身の絵を描く姿勢全体に貫かれる部分と,各作品毎に個々に持つ場合とがあるが,僕は,一つの画期というものがあると感じていて,いくつか問題意識をもって描くうちに,一つの到達点に達する。その瞬間に,自分に見える世界が変わる。
勝手ながら,それらしいものを見た気がした例がある。そこへ到達しないと,それは見えない。それも,その瞬間気づくとは限らない。
モチーフは尖がっていても,それをテーマにするとありきたりになる,
問題意識はクリアだが,それを表現する技術がともなわない,
技術的な問題意識ははっきりしているが,その先のテーマにたどりつけない,
そのとき,自分のとんがりを大事にしたい。ひととちがう,尖端の,どんがった部分。それを見つけなくては,人真似か,二番煎じに終わる。
何ごともぴんときりはある。
しかし,小さくてもピンでなくては,意味がない。そこに自分がある。
僕は欧米(だけではないが,そういう人が多い)の思想のお先棒を担ぐ人を基本信じない。そんなものは,あなたではない,それは人真似でしかない。一生人真似の思想を担ぐ人は,人真似の人生を送っている。それで金持ちになろうと,著名になろうと,そんなものは屁みたいなものだ。所詮,人真似は人真似。
自分でとことん考え詰めて,自分の尖がりが発見できなかった人だ。
とことん考え詰めて,自分(の考え)に到達することのできなかった人は,考えるということをしなかった人と同じだと感じる。その人が何を旗印として掲げているかにそれは現れている。何某の弟子,何某というひと様の思想,考えを掲げている人は,遂にその人の奴隷でしかない人だ。
横井小楠は言っている。
学ぶとは,書物や講学の上だけで修行することではない。書物の上ばかりで物事を会得しょうとしていては,その奴隷になるだけだ。日用の事物の上で心を活用し,どう工夫すれば実現できるのかを考える,(私の話を)そのまま書きとめるのではなく(それでは私の奴隷になることだ),おのれの中で,なるほどこのことか,と合点するよう心がけるが肝要だ。合点が得られたときは,世間窮通得失栄辱などの外欲の一切を度外視し,舜何人か,小楠何人かの思いが脱然としておこる,
と。それが尖がるということだ。誰かの奴隷になるのではなく,おのれをおのれとして突き出す。この世の中に押し出す。それを気概という。とんがるという。
日々自分の頭を考えている人は,誰かの思想のお先棒担ぎをしている暇はない。
「守破離」の「守」は戦いである。学ぶ相手との戦いである。自分をとがらせるための踏み台としなければならない。その結果として,「破」が来る。尖りで蹴破るといっていい。「破」はすでにして「離」ではない。尖っていても,おのれの行く先が見えていなければ,師の近接領域に,巣立ちの出来ぬ雛のようにうろうろすることになる。それは「接」に過ぎぬ。「離」とは,遠心力でなくてはならない。相当の脚力がなければ「離」にはならない。
今日のアイデア;
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