2013年08月07日

大きなビジョンを描く


前野隆司『思考脳力のつくり方』を読む。

日本だけではなく,世界中が,部分最適思考が蔓延し,

とにかくどこにも大きなビジョンがない。理念がない。思想がない。ぶれない基準がない。

そう著者は慨嘆し,

大きなビジョンを描き,実行し,表現するための考え方のフレームワークを整理し,明らかにすること,

それが本書の目的だと,「大見えを切らせていただく」と,言い切った。

ではそのフレームワークは,何か。4つだ。

要素還元思考

システム思考

ポスト・システム思考

システム思想

一見して明らかなように,メタ化になっていることだ。要素還元思考をメタ化し,大きなフレームで見ることで,システム思考になり,それ自体の限界をメタ化することで,ポスト・システム思考となり,最後に,その全体を俯瞰するシステム思考へと至る。

要素還元的な思考は,部分部分を深く理解しさえすれば,あとはそれらを寄せ集めることによって,ものごとの全体も理解できるという(一足す一は二の)論理に基づいている。

システム思考とは,ものごとをシステム(要素間の相互作用およびその結果全体としての性質が部分の振る舞いに影響する創発が起きる)としてみることによって,システム全体の問題を明確にしたり,解決したりする思考法。

著者は言う。

システム思考の最も重要な点は,…要素還元の視点からひとつ視点をひろげることだ。要素還元思考では,ひとつの視点から物事を捉えている。

しかしシステム思考が有効なのは,線形相互作用の場合だ。

システムの要素間が非線形相互作用をする場合,…未来を予測することは不可能なカオス(混沌)が生じうる。システムの振る舞いは,ある臨界点を超えると急激に乱雑さを増し,予測不可能になる。

いわゆるバタフライ効果の,複雑系である。

システム思考は,システムの大雑把なモデル化には役立つ。特に,非線形が小さく,カオスが生ずる可能性が小さいときには,とても有効だ。

しかし複雑系の場合,

システムをロジックツリーのような形で論理的に分解して最適な答えを求めようとする発想から抜け出す必要がある。

と著者は言う。「目的・条件・手段が多様であったり時間とともに変動したりするために,目的・条件・手段の予測確定が困難」になる。その場合,答えは多様になる。

設計空間の自由度の方が解空間の自由度よりも大きいために,創造的に拘束を設けないと解が求まらないような悪設定問題,あるいは,そもそも問題定義を明確に行えない悪定義問題,問題解決手段を明確に定義できない悪構造問題,

においては,設計はアートとサイエンスの両方にまたがる。そこでは,

最適解ではなく,設計条件を満足する複数の「満足解」

が求める解になる,と。

こういうシステム思考とポスト・システム思考の関係は,ニュートン力学とアインシュタインの相対性理論に類比できる。

そして,システム思想は,

頭で考える思想ではなく,環境と身体と脳が接続された全体システムとして感じる思想だ。

という。そしてこうも言う。

矛盾を容認しないのがシステム思考,容認するのがポスト・システム思考なら,矛盾であるかどうか,容認するかどうか,という価値判断を超越するのがシステム思想だ。

と。正直言って,システム思考のメタ化であるポスト・システム思考まではわかる。そこでは,静的なモデルでは解けない複雑系,観察者自身をも巻き込んだ対象化がなされる。その主客分離が捨てられた世界をメタ化したとき,すべてが対象化される世界を,「悟り」と言われたのでは,ちょっとついていけなくなる。

システム思想とは,いつ死んでもいい覚悟がすでにできていて,そうだからこそ,もはや当然,利己への執着などという醜いレベルは超越している境地なのだ。

おいおい,と言いたくなる。問題なのは,ものを見る視点だったはずだ。境地など持ち出されては,もはや,単なる自己完結へともどっているとしかいいようがない。

ところで,

要素還元思考

システム思考

ポスト・システム思考

システム思想

の4つの関係は,包含関係という。まあ,入れ子構造というわけだ。

で,こういう。

現実的な問題関係をどこで行うかというと,直観的に言って,要素還元思考が四十パーセント,システム思考が三十パーセント,ポスト・システム思考が二十パーセントと,システム思想が十パーセント,

とみる。

メタ化かの究極が,「悟り」というのは,ちょっと思考停止に見える。著者が得意げなだけに,少し距離をおきたなる?

研究者なら,どうせ境地というなら,その境地をもっと具体的に,システム思考で,ツリー型,マトリックス型,ネットワーク型と詳細に分析したように,境地のものの見方を,詳細に分析すべきではないのか。

たとえば,著者の挙げていた例を借りるなら,釈迦型,老子型,荘子型,禅型等々。

「悟り」などと丸めるのは,僭越ながら,学者としての学究の放棄に見える。

参考文献;
前野隆司『思考脳力のつくり方』(角川書店)

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm




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posted by Toshi at 06:12| Comment(2) | 書評 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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Posted by toru burch at 2013年09月03日 16:31
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