2013年08月26日
ゼロ戦
ぼくは、ゼロ戦の設計思想が嫌いである。というより,その思想が,いまも脈々と受け継がれていることを恥ずかしいと思う。別に飛行機マニアではないので,正確ではないかもしれないが,ゼロ戦の話を聞くたびに、ずいぶん昔,フォード車にのっていた友人が、言っていたエピソードを思い出す。
曰く、追突した国産車のほうが、大破した、
と。お手軽で,軽量化した車は,ある意味で命を使い捨てにする思想だ。
ずいぶん昔読んだものの記憶で書くので間違っているかもしれないが,ゼロ戦は,ボルトやねじなど細部に至るまで徹底した軽量化を追求した,当時究極の軽量化飛行機だ。だから,
格闘性能,
航続力,
速度・高高度性能
高速時の運動性,
等々に優れている。しかし,一方で,部品点数の多さ,軽量化のための特殊加工等々から生産性が悪く,大量生産に向かない,いわば手作り飛行機という欠点もあるが,最大の問題は,軽量化と機動性を確保するために,防御部分がカットされていることだ。
防弾燃料タンク
防弾板
防弾ガラス
自動消火装置
等々が搭載されておらず,当然被弾するとあっという間に火を噴く。しかも,回避をパイロットの技能に依存している。たとえば,
運動性能と視界の良さを生かして、攻撃を受ける前に避けるという方法で防御力の弱さをカバーするパイロットも多かった,
とされるが,それでは熟達パイロットの名人芸に依存しているということで,基本的に飛行機としての性能の大事なものが欠けているということの裏返しだ。いわば,人命軽視そのものだ。
ゼロ戦の操縦は,かつて製本屋で働く何人かに一人,必ずむ指先が断裁機で切断されていたのを思い出させる。フェイルセーフの発想などない昔の断裁機で,いかにに名人芸を発揮するか,を彼らが競うのに似ている。
ゼロ戦に対抗して設計製作されたというアメリカの,F6F (Grumman F6F Hellcat)は,真逆の設計思想だ。
頑丈であること,
単純化されて生産性が高いこと,
防弾フロントガラス,
コクピットを張り巡らした部厚い装甲,
装甲されたエンジンとタンク,
等々パイロットを守るために,ゼロ戦相手とわかっていても,機動性すら犠牲にしている。それは,人命尊重というより,ベテランパイロットの操縦を前提にしない,徴兵された普通の兵士が操縦することを前提にした設計思想だ。
まさに,フールプルーフ,といってもいい。
一方は,パイロットの命を消耗品と見る,
他方は,パイロットを代替可能な戦力と見る,
違いは微妙だが,それが設計思想になったとき,雲泥の差が出る。
フォード車と国産車のアナロジーをそのまま象徴する。いまや軽量化が重量派を駆逐してしまったが,それが人命軽視の思想の蔓延でないことを祈る。
日本では,戦後も,基本通底するのは,自国民の命を軽視するという(暗黙の)意志だ。それよりも守るべきものがいつもあるらしい。体制(国体)であったり,誰ぞの体面であったり,何某の既得権であったりする。
年間三万の自殺者がいるのが,そのまま有効な手も打たない,という(暗黙の)意思がある,
毎日人身事故と称して鉄道事故が起きているのに,安全柵設定を遅々として進めない,という(暗黙の)意思がある,
原発事故が起きても,人命に対する手立てを迅速に打たず,放置し続ける,という(暗黙の)意思がある,
等々挙げればきりがないほど,そう考えなくては理解できないような,人の命を守るのに迅速さが欠けていて,逆に言えば人の命を使い捨てにする思想が脈々と生きているとしか言いようがない。
テロに拉致された女性を自己責任と称して,見捨てた国だ,同時期のイタリア政府の救済のために打った対応と比較すると,その人命軽視は目を覆いたくなる。
知覧で特攻の写真を見て,涙した首相がいたが,冗談ではない,てめえら政治(家)の失敗(政)で,あたら若い人を無駄死にさせたのではないのか,それを英霊などと呼んだところで,死んだ者は帰ってこない。そのことを政治家として一言の弁もなく,普通の人と同じ目線で涙するなど,政治家失格というより,政治家としての自覚も意志もないとしか思えない。その同じ首相が,拉致監禁された女性に自己責任と言ったのだ。
こんな政治家どもが,国民の命に思いを致すとは思えない。靖国参拝などのパフォーマンスより前に,政治家として為すべきことは何か,を考えよと言っても,きっと馬の面にションベンだろう。
いまだ,この程度の政治家しか生み出せない,ということは,そのまま天に唾していることになる,おのれら国民ひとりひとりの責任が問われている。それは,結果として,
我々自身が人の命を軽視している,
ということだ。それもまた,おのれに返ってくる。
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
#ゼロ戦
#F6F
#特攻
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