2013年08月27日

MRI


先日,第64回ブリーフセラピー研究会 定例研究会 に参加して,「MRI系ブリーフセラピーのエッセンス」(講師:狐塚貴博氏 臨床心理士,東北大学東日本大震災PTG支援機構相談員)を,2日間たっぷり学ぶ機会を得た。

http://kokucheese.com/event/index/96543/%E3%80%82

MRI(Mental Research Institute)系(講師曰く厳密なMRIではなくSFA,システムズアプローチなど他のブリーフセラピーを加味している)では,「問題」を,問題を取り巻く人々の相互作用で生起しているパラドックスと捉えている。問題を解決しようとして,対処する行動自体が,問題を維持・存続,あるいはエスカレートさせている,そのパラドックスを問題と見る。

したがって,問題を,個人ではなく,「間」ととらえ,決して個人に起因させない。個人の症状ではなく,それが周囲との間で,どのような問題となり,その問題が,どのように維持・存続しているか,そしてそれが今後どうなっていくのか,を考える。

つまり,MRIのアプローチでは,次の2つの前提をおく。

1.問題を個人や家族の深層にあるものと捉えず,いま,ここで起こる行動の連鎖により維持・存続していると捉える(円環的視点。まあ螺旋式に土壺にはまっていく…ということか)。当然原因・結果という物語で診断したりしない。

2.相互作用するシステムの一部の行動の変化は,他のメンバーの行動の変化につながる,とみなす。言ってみると,人間関係は,直線的ではない。複雑系といっていい。そこに直線的な因果関係を持つ込むこと自体が,偽解決(問題を維持・存続させる対処行動)になりかねない。

かつての家族療法では,家族というシステムが問題を作るとみなしたが,そうではなく,

問題が悪循環システム(相互作用)をつくる,

と考える。当然だろう。問題の原因を,何かに起因させないということは,個人にも,家族にも起因させない,ということでなくてはならない。

以上を前提に,MRIの捉える問題を整理し直すと,

・症状は個人。しかしその症状によって,周囲にどんな問題が起きているか。

・誰が問題と認識しているのか,誰の視点か。つまり,問題は,その人に応じて捉え方が違う。場合によっては,家族の誰かは問題と捉えていないかもしれない。

・あくまで,主訴に基づいて問題を扱う。つまり,セラピストが,勝手なラベルや仮説(「境界性人格障害」等々)を貼って,そのことで問題を作り出すことをしない(境界性人格障害問題を見つけ出す)。

・そのために,記述的な説明により,行動連鎖(相互作用)を把握する。たとえば,「不安定」ではなく,具体的に,いつの,どういう行動を指しているのか…等々具体的な行動レベルに落とす。

・偽解決(問題解決の対処行動)は問題の一部とみなす。

・問題を扱うには,誰か一人の視点ではなく,その問題に対する他の視点からも,別の問題として扱える。

この,MRIでいう問題への解決努力という規則的な相互作用(悪循環)に対して,SFA(ソリューション・フォーカスト・アプローチ)の「例外」(小さな変化)は,規則的な相互作用からの逸脱と捉えることができる。偽解決ではない,例外的にうまくいった変化(Do something different ),というわけだ。これは,悪循環を断ち切るアプローチ(介入)の(妥当かどうかの)判断基準にもなる(ダブル・ディスクリプション・モデル)。

この「間」のコミュニケーションについて,MRIは,バインド(拘束)という捉え方をしている。

・相手の反応の幅を制限する。

・相互拘束し,パターンを形成する。

この背景にあるのは,ベイトソンの考えで,ベイトソン曰く,

何かを理解するとは,パターンをつかむこと。

たとえば,こんな例が出された。

学校の先生の例。ある女子生徒,感情の起伏が激しく,暴言を吐いたり,先生とトラブルを起こす。先生は気にかけて,声を掛けたり,特別な配慮をするが,ますます不安定になり,夜中にメールのやりとりまでするようになり,先生はくたくたになる。対処行動すれば,するほど問題を維持している例だ。

他にも対処の方法があるのに,(相手の反応で)それが狭められ,(それがまた相手を縛るというように)相互に拘束しあう。この相互作用を把握するには,この関係あるいは関わり自体をメタ化して,外部から見る(俯瞰する)視点がいる。これを論理階型ともいう。

よく優れたサッカー選手はグランドを俯瞰する視点から試合を見て,自分のポジショニングを決めていくというが,それと同じで,セラピストがその視点を持つことで,他の選択肢が見える。それをクライアントに見えるようにするのが,介入であり,課題となる。

先の例でいうと,介入課題は,

メールや電話をやめて,他の生徒の前で,その生徒を構うようにすること。

偽解決とは別の関わりをすることで,問題の維持・存続サイクルが断ち切られ,生徒はまもなく落ち着いていったという。

介入課題の原則は,

・Do something different
・最小限にする
・クライアントの提案,いままでやってきたこと,考えてきたことを重視する

いままでの解決―偽解決のサイクルとは違うことを,しかし,今までやって来たことを踏まえてやってもらう。この例では,生徒を気に掛け,いろいろ関わってきたことは,閉じた二人の中ではなく,オープンに,皆の前でする。それによって他者の目が入ることで,閉じた関係の中での自縄自縛関係が崩れていく。

で,MRIの目指すのは何か。レジュメには,こうある。

終結とは,セラピストの価値体系により問題か否かを判断することでも,クライアントの問題をセラピストがひとつひとつ解決していくことでもない。クライアントやその家族が問題解決の主体であるという認識をもち,クライアントを含めた家族みずからが問題解決行動を修正し収束させていくという家族の自己組織性を促進することである。そのことを通して,クライアントやクライアントの家族自身が問題を扱うことができるようになること…

そうすることで,面接を短期に終結できる,と。

つまり,問題の解消ではなく,その問題を持ちながら,どうにか生きていけるようになること。クライアントが日常の中で,何とかそれを自分でコントロールできるようになること,これがセラピーの終結である。

そこで,MRIによるセラピーの方針は,レジュメにこうまとめてある。

・(クライアントと一緒になって)深刻になるのではなく真剣であれ
・クライアントがどうなりたいかを確認する
・セラピストが扱えることと扱えないこととを明確にする
・セラピストの影響はわずかである。実行するのはクライアント
・クライアントの自律性を尊重すること
・可能性を見出すこと―クライアントは自律的で有能な存在である

「セラピストが扱えることと扱えないこととを明確にする」というのは,例えば,不登校で,「学校へ行かせましょう」というのは,クライアントが自分で歩き出さない限り,学校へいけはしない。自分でできないことを受け合うのは,自分でパラドックスを招くことになる(そのための努力自体がたぶん学校へ行かないことを助長するというような)。それよりも,話の中で,「元気がない」というのが出てきたら,そのことならお手伝いできる,ということはできる,というように,ハードルを下げる(結果として,元気になることで,自分で不登校を解決す第一歩になるかもしれない)。

これは,ミニマムシンキング,まずはより小さなシステムから,介入からという考え方に基づく。

「可能性を見出すこと」とは,できないことではなく,できたこと(例外)ややって来たことをリフレーム(意味を換えて)やってもらうということ。

こう整理してみると,日常でも,問題解決が偽解決になって,循環させていることがある。そんなとき,

Do something different

ほんの小さな違うことをすることが,全体の悪循環を断つことに効果的なことがある。それは,発想と似ていて,煮詰まった時,部屋を出る,歩く,といったことが,いままでのサイクルをメタ化することにもなり,別の視界を開いてくれることがある。

つくづく思うが,ブラックボックスにいるときは,大概同じことをしている。

それを脱するのは,その行動自体をメタ化するような位置に移動することだ。

以上が自分なりの整理だが,スリー・ステップ・モデル(Three Steps Model)については,書ききれなかったので,次に回したい。


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http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm



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posted by Toshi at 05:16| Comment(1) | MRI | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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Posted by プラダ バッグ 値段 at 2013年11月13日 18:50
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