2013年10月06日

自分


自分とは何かということを考えた時わかりやすいのは,混雑した電車で肩が触れたの,押したのといってもめている人を見た時だ。

たぶん自分でもあるが,たとえば,スマホを見ている,新聞を見ている,本を読んでいるというとき,無意識で暗黙のバリアを張っている。別に体の輪郭そのままではないが,それに近いところで,自分というものと人との境界線を引いている。それは,距離的に測れるものではないが,肌そのものでも,衣服そのものでもなく,それから何センチか何ミリかの隔たりを置いている。別に物理的にこれだけと明確ではないが,触れられたくない距離といっていい。

だから,不意に押されると,自分のテリトリーを侵略されたような感触がある。いきなりだからいけないのか,直接触れたからいけないのかはわからないが,その不快感はよくわかる。

といって,押しくらまんじゅう状態の時が不快でないのかというと,不快だが,その時は,境界線が,(あきらめてか,現状追認かは別にして)ずっと後退していて,顔がくっつかなければよしとする状態になっているので,そういう侵略されたという認識はない。

周りにかまわず化粧するのは,その境界線が,本人にとって強固で,透明の(でないかもしれないが)バリアの中で,完全に内向きの視線の中で,居座っている。この場合も,押されたり,接触したりされると,同じ反応をするはずである(怖くてやっていないと言うか,見たくないので遠ざかるが)。

この境界線は,心理学者の言う社会的距離のことではない。

エドワード・ホールが,人間の対人距離意識について,
・密接距離 (intimate distance) - 15 ~ 45 cm。愛撫,格闘,慰め,保護の意識をもつ距離。
・個人的距離 (personal space) - 45 cm ~ 1.2 m。相手の気持ちを察しながら,個人的関心や関係を話し合うことができる距離。
・社会的距離 (social distance) - 1.2 m ~ 3.6 m。秘書や応接係が客と応対する距離,あるいは,人前でも自分の仕事に集中できる距離。
・公衆距離 (public distance) - 3.6 m 以上。公演会の場合など,公衆との間にとる距離。
と分けているが,これは他人を意識している状態というか,人との距離を意識している状態で,自分が何となく自分という境界線を引いている状態とは少し違うような気がする。

人との距離というか,他者との距離と言うので思い出すのは,正確には覚えていないのだが,多田富雄さんの本で,そこで,免疫系が,自己と非自己を区別している,といったのを,読んだ気がしているが,そのときの衝撃だけを覚えている。

自分というもののイメージが根本から崩れた,という印象なのだ。

例えば,

免疫とは,ヒトや動物などが持つ,体内に入り込んだ「自分とは異なる異物」(非自己)を排除する,生体の恒常性維持機構の一つである,

とある。極端な話,不意に押された時の不快感や怒りは,免疫反応の延長線上にある自分以外の異物の排除行動なのてある。

免疫系は,外部からやってくる病原菌やウィルスに抵抗する担い手として抗体をつくる。これが自己である。非自己がなければ,自己もつくれない。

他者がいなければ自己は認識できない。あるいは,自分がどのあたりに境界線を引いているかは,意識できない。

多田さんは,こう書いている。

免疫は,病原性の微生物のみならず,あらゆる『自己でないもの』から『自己』を区別し,個体のアイデンティティを決定する。還元主義的生命科学がしばしば見失っている,個体の生命というものを理解するひとつの入り口である,

と。免疫システムを,自分の無意識の境界線と置き換える。それは,相手によって使い分けるのだろうか。そこが,社会的距離と重なるところである。

親疎は,つまり親和性と反撥性によって,自分が拡大するわけではない。

自分というのを物理的な領域だけで考えると,狭小になる。たとえば,DVや性的被害者は,その瞬間を,自分から剥離してしまうことで,事態を自分から遠ざけていく,という。

そう,人の持っている想像,空想,妄想の領域は,物理的な障壁がない。だから,電車の中で,突然奇声を発したり,独り言を言ったり,一人口論をしたりしている人は,ひょっとすると,物理的境界の埒外にいるのかもしれない。

免疫というシステムは,先見性のない細胞群をまずつくりだし,その一揃いを温存することによって,逆に,未知のいかなるものが入ってきても対処しうる広い反応性を,すなわち先見性をつくりだしている,

という。未知の者への対応は,人は,そういうイマジネーションの世界を設定し,そこへのめり込むことでやっているのか?

いやそれは,どうも違うように思う。

それは,一種の自傷行為に近い。

免疫系は,生体を重層的な防御体制で守る,という。まずは,物理的な障壁で,細菌やウイルスが生体に侵入するのを防ぐ。 病原体がこの障壁を突破して体内に侵入したとき,自然免疫(先天性免疫)がそれを感知して排除する。 病原体が自然免疫も逃れたら脊椎動物は第3階層の防御反応をする。これが獲得免疫であり,一度感染源に接触することで自然免疫によって発動される。 この機構は,病原体が排除された後も免疫記憶として残り,次いで,同一(あるいは似通った)の病原体に遭遇する度に強化される。

社会的距離は,その防御階層といってもいいのかもしれない。そして,最後は,内なる世界へ逃避して,接触をみない。

と,ここまで考えてみて,どうもこういう見方は,自分としいうものを狭くしているのではないか,という気がしてくる。

http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11189806.html

で触れたが,清水博さんが,こう言っている。

生命という活(はたら)きは自己の存在を自己表現,あるいは自己創出する活(はたら)きであるために,場に位置づけられなければ生き物は一つの決まった形(表現形)を取れないということである。そしてその表現形は,局在的生命と遍在的生命のあいだの創出的循環のために,一定の状態に留まることができない…。生命の自己表現性とは,生命は場に位置づけられた存在をその場へ表現するかたちで活(はたら)いているということである。生命はそれ自身をそれの上へ表現する「場的界面現象」(場的境界の生成現象)であるといえる。生きものは,その存在を場に表現するから場においてコミュニケーションができるのである。

場なしに,自己は存在しない。「自己の卵モデル」では,繰り返しになるが,こう説明される。

①自己は卵のように局在的性質をもつ「黄身」(局在的自己)と遍在的性質をもつ「白身」(遍在的自己)の二領域構造をもっている。黄身の働きは大脳新皮質,白身の働きは身体の活(はたら)きに相当する。
②黄身には中核があり,そこには自己表現のルールが存在している。もって生まれた性格に加えて,人生のなかで獲得した体験がルール化されている。黄身と白身は決して混ざらないが,両者の相互誘導合致によって,黄身の活(はたら)きが白身に移る。逆もあり,白身が黄身を変えることもある。
③場所における人間は「器」に割って入れられた卵に相当する。白身はできる限り空間的に広がろうとする。器に広がった白身が「場」に相当する。他方,黄身は場のどこかに適切な位置に広がらず局在しようとする。
④人間の集まりの状態は,一つの「器」に多くの卵を割って入れた状態に相当する。器の中では,黄身は互いに分かれて局在するが,白身は空間的に広がって互いに接触する。そして互いに混じり合って,一つの全体的な秩序状態(コヒーレント状態)を生成(自己組織)する。このコヒーレント状態の生成によって,複数の黄身のあいだでの場の共有(空間的な場の共有も含む)がおきる。そして集団には,多くの「我」(独立した卵)という意志器に代わって,「われわれ」(白身を共有した卵)という意識が生まれる。
⑤白身が広がった範囲が場である。したがって器は,白身の広がりである場の活(はたら)きを通して。黄身(狭義の自己=自分)に「自己全体の存在範囲」(自分が今存在している生活世界の範囲)を示す活(はたら)きをする。そして黄身は,示された生活世界に存在するための適切な位置を発見する。

ある意味,接触しあった白身を,社会的距離と捉えた瞬間,自分との隔てに変わる。そうではない,そこにこそ,自分が自分である場なのだと捉えると,それは,自分の外延に変わる。

それは,確かに,電車の中では無理かもしれないが,そう考えた瞬間,人が自己完結している限り,防御力が劣る理由が見える。人の防御力は,体内のほかにもうひとつ,自分の外に,人との接点に,接触しあった白身のつくり出す「場」があるということを,ついつい忘れてしまう。

人は社会的動物なのだ。

参考文献;
多田 富雄『免疫の意味論 』(青土社)
清水博『コペルニクスの鏡』(平凡社)
清水博『場の思想』(東京大学出版会)

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm




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posted by Toshi at 05:35| Comment(7) | 人間関係 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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