2013年11月16日

孤立無業


玄田有史『孤立無業』を読む。

どこかで,ひきこもり,ニート,フリーターを含めて500万人という推測数値を聞いたことがある。ここでいう,孤立無業もこの中に入る。500万かというと,一世代200万人(もっと少なくなっているが)と見積もって,二世代半に当たる。それは,その人たちが,社会保険料をきちんと払う仕事をしていないということになる。それを聞いた時,足もとで,社会保障制度は崩壊している,と感じた。

「労働力調査」によると,2012年を平均すると,15歳以上の人口は1億1098万人,そのうち就業者は6270万人,その差が,無業者で,4828万人になる。

著者は,その無業者の中で,

20~59歳で未婚の人のうち,仕事をしていないだけでなく,ふだんずっと一人でいるか,そうでなければ家族しか一緒にいる人がいない人,

を孤立無業者と呼び,それを研究してきた,という。本書は,

そんな無業者の実態をデータ(「社会生活基本調査」)に基づき,詳しく紹介している。

この,「孤立無業」とは,日本で開発された概念で,英語でSolitary Non-Employed Persons を指す。2011年の調査では,162万人,10年間で80万人近く増加しているという。

孤立無業者を,

20歳以上59歳以下の在学中を除く未婚無業者のうち,ふだんずっと一人か,一緒にいる人が家族以外にはない人々,

と定義している。2011年時点で,60歳未満の未婚無業者は255.9万人,そのうち孤立無業者が162.3人,実に60歳未満の未婚無業者の63%を占める。このうち,家族型孤立無業は,128.0万人,8割弱を占める。そして,求職活動に消極的なのが,家族型で,29.3%は,仕事をしたいと思っていない。

では,これは,ニート(not in education, employment or training)やフリーター,ひきこもりと,どういう違いがあるのか。

厚生労働省は,ニートを,

15~34歳の非労働力人口のうち,通学,家事を行っていない者,

と提示しているが,労働力調査から,2011年時点で,約60万人になる。このうち非求職型と非希望型を合計すると,43.2%,そのうちニートであり,同時に孤立無業である人は,30.0%を占める。

同じく厚生労働省は,フリーターを,

15~34歳の男性または未婚の女性(学生を除く)で,パート,アルバイトとして働く者,またはこれを希望する者,

と定義していて,やはり,2011年時点で,176万人になる。

厚生労働省は,ひきこもりを,「ひきこもりの支援・評価に関するガイドライン」で,

さまざまな要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしてもよい)

と定義している。ただ実態は把握しにくく,ガイドラインでは,ひきこもり状態の子供のいる世帯を26万世帯と試算しているが,内閣府(「若者の意識に関する調査」)は,「自室からほとんど出ない」「自室から出るが家から出ない」「近所のコンビニなどへは出かける」という狭義のひきこもりが,15歳以上39歳以下で23.6万人,「普段は家にいるが,自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」準ひきこもりが46.0万人と試算している。著者は,

(いま)無業であることが,就職しないということを意味しないが,

孤立状態にあることは,仕事に就こうとする活動やそもそも働こうという希望を抑制することにつながる,

とし,さらに,

自分ひとりで考えているだけでは,かえって悩み過ぎてしまって,袋小路に陥ることもあります。結局,考え過ぎてしまって「自分には働くことは無理」と思い込み,就職を断念する,

ことになり,ニートになる原因の一つとなっている,と著者は分析し,

さらにいえば,ニートになることが,ますます無業者の孤立に拍車をかける,

という。そして,

ニート状態にある若者も,最初から働くことをあきらめていたわけではありません。かつては一生懸命就職活動をしていた人も多くいます。その方が言うには,ニートには「就職を求める人たちの長い行列の後ろのほうに自分は並んでいる」感覚があるそうです。そして「その行列は,前のほうだけ入れ替わっている様子は感じるけれども,少しずつでも自分の順番が前に繰り上がっていく気配がない」というのです。そして「このまま並んでいても希望は見えないし,かといって他の方法が思いつくわけではない。そのまましばらく並んでいたが,どう考えても自分の番がきそうもない」。そのなかで仕事に就くことを徐々に断念し,ニートになっていく,

という。そしていったんニートになると,ますます孤立化を深めていく。

孤立無業→ニート→孤立無業→ニート…

と負のスパイラルに落ち込んでいく。孤立無業では,一度も,仕事をしたことのない人が20%を超える。しかも孤立無業のうち,一人型では,4人に一人が,受けられるなら生活保護を受けたいと考えている,のである。

これは正直,心底日本の危機と思う。希望のない社会に,未来志向は生まれない。単なるポジティブシンキングのレベルの話ではないのである。

著者は言う。

政府の手で100人のニートを自立させることは難しい。むしろ100人のニートを支援できる10人の若者を育ててほしい。政府が若者を支援するのも重要ですが,若者を支援する若者を支援することは,もっと大事なことなんです。

と。なぜなら,

孤立無業者本人が自分の力だけでは踏み出すことができない以上,他者のほうから働きかける。つまり会うとリーチによって上手に「おせっかい」することが肝要,

だからなのだ,と。

僕は,こうした若者の現状は,社会の生み出したものであり,それが家庭に反映し,それが個人に反映すると思っている。いま日本の社会は病んでいる。一朝一夕に特効薬はない。しかし,いま動きはじめないと…という著者の危機感だけは,伝わってくる。


参考文献;
玄田有史『孤立無業』(日本経済新聞出版)



今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm





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posted by Toshi at 04:58| Comment(3) | 書評 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ブログサーフィンしていたら、たどり着きました。素敵なブログですね、読ませていただきありがとうございます。
Posted by こんにちは at 2014年02月13日 19:10
こんにちは! ブログ拝見させて頂きました。とても勉強になりました。この度当方も新しいブログを立ち上げました。よろしければお時間があるときにお立ち寄りくださいませ。また訪問させていただきます。どうもありがとうございます。
Posted by 富田エンジェル福太郎 at 2014年02月16日 23:06
こんにちは。ブログの記事を拝読させていただきました。大変勉強になりました。どうもありがとうございます。また来させていただきます。お元気でいてくださいませ。おじゃましました。
Posted by 富田エンジェル福太郎 at 2014年03月12日 23:07
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