2013年12月18日

視野



おのれの視界は,自分ではその広さ,狭さには,気づかない。自分の視点も,自分では気づけない。視点に気づくには,メタポジションがなければ,気づけない。視覚は,見えているものについては気づけても,それが,上からなのか,横からなのかという視点には,気づけない。気づいているとすると,おのれのイマジネーションによって,無意識にメタ化しているにすぎない,と思う。あるいは経験から,推測しているにすぎない。

意識していないが,人は特有の自分の見方を持っている。それは価値観であったり,生まれつきの見る位置であったり,こだわりであったり,暗黙の前提であったり,慣れであったり,なんとなく制約を考慮していたり,気づかず固定した位置でみている。しかし,その自分の癖というか,特性については,メタ化しなければ気づけない。

メタ化して,それを自分でチェックすることで,それに気づけるし,逆にいえば,それを意識できれば,変えることもできる。見方だけは,意識しないと変えられない。特定の見方をとっていることを気づかない限り,変えることはできない。

上から見ていると,気づいて初めて,それ以外の視点があることに気づける。

いってみれば,見方を「変える」ためには,それを意識してみる必要がある。

例えば,「価値を変える」には,「~と見た」とき,「いま自分は,どういう価値観・感情から見たのか」と振り返ってみることでしか気づけない。

そのときの,善悪なのか美醜なのか喜怒なのかを意識して初めて,それ以外の価値観で見たらどうなるか,に意識が向く。無意識でしていた見方を意識し,「では,別の見方ならどうなるか」と,改めて別の見方を取ることができる。

見え方を変えるのは,ある意味,見る位置の移動である。

大きくなるとは見る位置を近づけること,
小さくなるとは遠ざけること,
逆にするとはひっくり返すこと,あるいは自分が逆立ちすること,

等々に違いない。

我々のイマジネーションは,(頭の中で)位置を自在に回転できる。位置を動かせるわれわれの想像力を駆使して,見えているものを変えてみることで,見え方を変えられる。

見え方を変えることで,いままでの自分の見方が動くはずである。

見えているものが動かせるなら,その動いた見え方によって,こちらの見方が影響を受ける。だから,みえているものを,分解したり,くっつけたり,束ねたり,回転させたり,によって,見方を動かすることができる。

しかしそれをするためには,(モニターで3D画面を操作するのでないかぎり)対象を見ている自分の位置を動かさない限り,気づきにくい,というかたぶん気づけない。それが可能にするのは,メタ化という言い方をしたが,言い換えると,

「見ている自分を見る」こと

によってである。

それは,見る自分を突き放して,ものと自分の間で固着した視点を相対化することだ。そうすることで,他の視点があることには気づける。それは,自分自身を含め,自分の見方,考え方,感じ方,経験,知識・スキル等々をも対象化することも含まれる。

それを,僕は,

「見る」を見る

と呼んでいる。「見る」を意識しない限り,何を見ているかはわかるが,どう「見(てい)る」か,どこから「見(てい)る」か,見る自分自身は気づけないからだ。見ているものと,見ている自分,を見る自分を対象化することで,全体が見える。

ちょうど,コーチングでいう,

レベル1(自分に矢印)
レベル2(相手に矢印)
レベル3(両者に矢印)

という意識の向け方と同じことだ。

対象化するためには,いったん立ち止まって,自分を,自分の位置を,自分のしていることを,自分のやり方を振り返らなくてはならない。たとえば,

言葉にする,

図解する,

録音する,

録画する,

というのもその方法のひとつになる。

たとえば,どつぼにはまって,トンネルビジョンに陥っているとき,その真っ最中は,視野狭窄の自分には気づけない。自分がトンネルに入り込んでいること自体を気づかない。それに気づけるのは,その自分を別の視点から,見ることができたときだ。

岡潔は,

タテヨコナナメ十文字,考えて考えて,それでもだめなら寝てしまえ,

といったようなことを言っていた。

それは,どつぼにはまっている状態も同じことだ。寝ることで,一旦,その事態および,その事態にはまっている自分から距離を置くことができる(もっとも寝るには,情報の整理期間を置くという脳の効果もあるのだろうが…)。

探し物をしているときは,それに似ている。同じ場所を何度もひっくり返す。しかし,その状態でいくら探し続けても,発見はない。その事態自体から,自分を引きはがすしかない。それには,

距離を取ること,

に尽きる。距離には,

時間的,

空間的,

とがある。一旦,部屋を出てしまうことだ。あるいは,時間を置いて再度探すことだ。

こうした距離の取り方は,他にもある。

他人に仮託してみる,

というのもあるが,あえて,自分の視点(視野狭窄に陥っている)を捨てて,意識的に,別の視点を取れる,あるいは取る状況を作ることだ。

「見る」を見る,

のバージョンに変わりはない。

あるところで,こういう言い方をされた。

われわれは,「問題」はわかっている,しかしその問題の解き方がわからない,

のだ,と。だから発想スキルが必要なのだ,と。

しかし,だ。そこまでやって解けないなら,問題の設定の仕方そのものが間違っている,と考えた方がいいのではないか。視野狭窄,違う言い方をすると,視野が限られている。

あるいは,こう言ってもいい。

問題との距離の取り方が間違っているのではないか,

と。そう考えると,そういう距離の取り方,というか逆にいえば,視界の決め方(限り方)を整理してみると,たとえば,こういうふうに四つにわけてみることができる。それぞれは,問いの立て方を変えることで,視野をメタ化できる。

1.「問い」(問題)の設定を変える その「問い」(問題)の立て方がものを見えにくくしているのではないか

●問いの立て方を変える 問題そのものを設定し直す,別の問いはないか,問題そのものが間違っていないか,新たな疑問はないか,見逃した疑問はないか
●目的を変える 別の意味に変える,別の意義はないか,別の目的にする,意味づけを変える,意図を変える
●制約をゼロにする 時間と金を無制限にする,別の制約に変える,人の制約を無視する
●根拠を見直す その前提は正しいか,前提を見直す,前提を捨てる,こだわりを捨てる,価値を見直す,大切としてきたことを見直す

2.視点(位置)を変える-その視点(立脚点)が見え方を制約しているのではないか

●位置(立場)を変える 立場を変える,他人の視点・子供の視点・外国人の視点・過去からの視点・未来からの視点になってみる,機能を変える,一体になる・分離する,目のつけどころを変える,情報を変える等々
●見かけ(外観)を変える 形・大きさ・構造・性質を変える,状態・あり方を変える,動きを変える,順序・配置を変える,仕組みを変える,関係・リンクを変える,似たものに変える,現れ方・消え方を変える等々
●意味(価値)を変える まとめる(一般化する),具体化する,言い替える,対比する別,価値を逆転する,区切りを変える,連想する,喩える,感情を変える等々
●条件(状況)を変える 理由・目的を変える,目標・主題を変える,対象を変える,主体を変える,場所を変える,時(代)を変える,手順を変える,水準を変える,前提を変える,未来から見る,過去から見る等々

3.枠組み(窓枠)を変える-その視界が見える世界を限定していのではないか

●全体像から見直す 全体像を変える 広がりを変える,別の世界のなかに置き直す,位置づけ直す
●設計変更する 出発点を変える,ゴールを変える,要員を変える,仕様を変える,組成を変える
●準拠を変える 別の準拠枠を設定してみる,よりどころを見直す,前提を変える,制約を消す(変える)
●リセットする すべてをやり直す,リソースを見直す,ゼロにする,チャラにする,なかったことにする

4.やり方(方法)を変える-その経験とノウハウ(経験のメタ化)が方法を狭めているのではないか

●本当に可能性は残っていないか まだやれるというには何が必要か,何があれば可能になるか,どういうやり方ができれば可能になるか,何がわかれば可能になるか,
●まだやり残していることはないか 他にやっていないことはないか,まだ試していないことはないか,まだやって見たいことはないか,ばかげていると捨てたことはないか,限界を決めつけていないか,
●プロセスを変える まだたどりなおしていないことはないか,別の選択肢はないか,分岐点の見逃しはないか,捨てていいプロセスはないか,経過を無視する,逆にたどる,資源の再点検,見落としはないか
●手段を変える 試していないことはないか,異業種で使えるものはないか,捨てた手段に再チャレンジする


自分の対象との距離の取り方は,違う言い方をすると,個性と言ってもいい。

ならば,その千差万別を生かすのは,自己完結しないで,人とキャッチボールしてみるのが一番なのかもしれない。それ自体が,メタ化になっているのだから…。


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posted by Toshi at 05:42| Comment(0) | 発想 | 更新情報をチェックする
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